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更新日付:2025年11月27日 DX推進課

DXが拓く、下北の周産期医療。距離の「壁」を越える挑戦

むつ総合病院
▶コラム「ハロー!あおもりDX」です。

▶今回のテーマは「DXが拓く、下北の周産期医療。距離の「壁」を越える挑戦」。
専門医の不足、そして妊婦さんの長距離通院という負担。 これは、妊娠から出産、産後の一定期間まで母子の命と健康を守る専門医療である「周産期医療」において、下北地域が抱える大きな課題です。
この「壁」に最先端のDXで挑むのが、むつ総合病院です。
距離の離れた弘前大学医学部附属病院の周産期専門医と、リアルタイムで妊婦さんのエコー(超音波)画像などを共有する「遠隔妊産婦管理システム」が令和7年3月 にスタートしました。

産婦人科の最前線でシステムを「使う」立場の医師と、病院の運営側として「導入」を推進した担当者、双方の視点からDXによる地域課題の解決を紐解きます。
遠隔妊産婦管理

インタビュイー紹介

  • 武田 愛紗 部長
    むつ総合病院 産婦人科
    武田 愛紗 部長

    休日の楽しみは3人の子供
    たちと遊ぶこと。
  • 古舘 貴 主査
    むつ総合病院 管財・施設経営課
    用度調達室 古舘 貴 主査

    病院の事務を担当。
    休日は家族サービスで大忙し!

現場の医師と、運営の担当者。子を持つそれぞれの視点

――まず、武田部長が産婦人科医の道を選ばれた理由からお伺いします。

(武田部長) はい。もともと子どもが好きで、赤ちゃんに関わる分野に興味がありました。医学部に入った時から産婦人科を志していました。
古舘主査
――「子どもが好き」というのが、医師としての原点なのですね。
お二人とも、現在は子育て真っ最中だと伺いました。古舘主査は、病院の「運営担当」として、また「親」としての立場からも、下北地域の周産期医療の課題をどう感じていらっしゃいましたか?

(古舘主査) 最大の課題は「距離」でした。当院から青森市までは車で約2時間、冬道ならさらにかかります。弘前大学医学部附属病院となると、それ以上です。
当院だけでは対応が難しい専門的な治療が必要な場合、患者さんには紹介先に行ってもらうしかありませんでした。 「朝一番の受付」に間に合わせるには、一体何時にむつ市の家から出なければいけないのか…。
これは本当に大きな地域の課題でした。

武田部長
――医師の立場として、妊婦さんにとってその「距離」はどれほどの負担だったと感じていらっしゃいましたか?

(武田部長)一番心苦しかったのは、診断がはっきりしない「グレーゾーン」の時です。
何か違和感はあるけれど、異常とまでは診断できない。「でも、万が一、何かあったら困る」。その一心で、これまでは「専門の先生に診てもらってきてください」とお願いするしかありませんでした。
大きなお腹を抱えて、ご家族に車を出してもらって往復する。その負担は本当に大きかったと思います。

現場の「意見」がDXを進化させた

エコー写真
――遠隔医療を活用したDXの取組は、どのように始まったのですか?

(古舘主査)発端は弘前大学医学部附属病院から「一緒に遠隔診療支援をやろう」と声をかけていただいたことです。
「弘前大学医学部附属病院から一番遠い、むつ総合病院と最初にやることに意味がある」とも言われ、そこから約1年という短い期間で準備を進めました。

(武田部長)最初の案では共有する情報が「胎児心拍モニタリング」だけでした。陣痛の波と赤ちゃんの心拍を見る機械なのですが、「赤ちゃんが苦しそう」ということはわかっても、「なぜ」苦しいのか、「形の異常」があるかまでは、エコーを使わないと分かりません。
「どうせやるなら、患者さんにも私たちにもメリットが大きい遠隔エコーにしてほしい」と、私からお願いし、弘前大学の先生方もすぐに納得してくださいました

軽減した負担、変化した医療の質とスピード

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――実際にシステムを導入してみて、どのような変化がありましたか?

(武田部長)これまでは、疑わしい症状があれば専門医を「紹介」するしかありませんでしたが、今は、その場で専門医に「相談」できるため選択肢が増えました。患者さんにとっては、わざわざ遠くまで行かずに済むケースが増え、長距離移動や金銭面の負担軽減につながっています。
一日に診療できる人数が劇的に増えたわけではありませんが、医師としても「ここで診られる」という判断の幅が広がったことは、非常にありがたい変化です。

――導入前と比べて、便利になった点はありますか?

(武田部長)以前は、胎盤の異常などを確認してもらう際、画像データをCD-ROMで郵送していました。それでは結果が出るまでに数日かかってしまいます。
今はエコーなどの画像を送信すれば、リアルタイムでアドバイスをもらえるようになりました。専門医の目がその場で入ることで診療のクオリティが上がりましたし、何より弘前大学医学部附属病院との「相談の距離」がぐっと縮まったと感じています。

DXがもたらした「安心」を、さらに広げる

遠隔妊産婦管理システム
――この取組を、今後どのように発展させていきたいですか?

(武田部長)今後は「婦人科」の患者さんにも広げたいです。婦人科系の疾患で、むつ市にいながら大学病院のセカンドオピニオンを聞けるようになれば、さらに多くの患者さんの助けになると思っています。

古舘主査
(古舘主査)例えば、「検査結果を聞くためだけ」に、また2時間かけて来てもらう、というのを無くしたいですね。
他の診療科でも、大学病院などと繋いでどんな支援ができるか検討しているところです。最終的に、患者さんにメリットがある形をどんどん作っていきたいと思っています。
「距離」という大きな壁が立ちはだかっていた下北の「周産期医療」。 むつ総合病院の挑戦は、遠隔医療という「DX」の力でその壁を乗り越え、地域の妊婦さんと医療従事者、双方の「安心」を支える確かな土壌となっています。

【むつ総合病院が取り組むオンライン診療・遠隔診療支援に関する詳細情報】はこちら

編集後記

ほたて
今回の取材のためにむつ総合病院へお伺いした日、注意報が出るほどの大荒れの天気でした。
青森市からむつ市へ向かう約2時間の間、車の外は恐ろしいほどの大雨と強風!海沿いの道路を通った際は、波が道路にまで押し寄せ、車にバシャバシャと音を立ててぶつかっていました。
12月になれば青森県は雪が降って、酷い時は吹雪で視界がホワイトアウトします。
そんな過酷な状態でも、妊婦さんが専門医に診てもらう為、遠い病院へ通わなければならないと思うと……すごく危険です。
青森県民だからこそ、むつ総合病院で行っている遠隔医療がいかに素晴らしい取組であるか、実感できます。
むつ市民だけではなく、専門医のいない地域で安心して子供を産みたい方は沢山いると思います。この取組が青森県全体に広まって、「地元で産む」ことに安心できる未来になれば良いなと思います。(植山)

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DX推進課 暮らし・行政DXグループ
電話:017-734-9163  FAX:

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