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更新日付:2025年2月21日 青森環境管理事務所
十二湖青池はなぜ青いのか?
- 2023年4月29日11時15分の青池
はじめに
青池は、世界自然遺産白神山地の山麓にある十二湖の一つであり、湖周囲125メートルの小さな池です。十二湖の中で最も標高が高い位置にあり、他の湖の源泉となっています。青池は画像のとおり、青いことで有名です。青森県では、これまで「青池はなぜ青いのか?」という研究を行ってきましたので、皆さんの疑問にお答えします。青池が青い理由
(1) 水の性質
水は赤色光を吸収し、青色光を散乱する性質があります。言わば、水は青い液体です(水の性質について、詳しくは参考サイト「光と色の不思議と水が青いわけ」で解説しています)。十二湖青池は、本県の研究で、この水の本来の性質が際立っている湖沼であることが明らかになりました。
(2) 透明度の高さ
青池の水質は濁りが極めて薄く、青池の最大水深は約9メートルですが、その底まで見える透明度(全透といいます)があります。これは、十二湖の湖沼の中で最も標高が高い位置にあり、湖水が湧き水だからとされています。これに比べて、青池の北隣にあり、青池の湖水が伏流(地面の下を通って流れ出ること)した水が入っている「鶏頭場ノ池」(けとばのいけ)は濁りがあるとされています。
濁りがあると、すべての色が散乱するため、湖水は暗い色に見えます。逆に、濁りがないと、水本来の性質である湖水の赤色光吸収と青色光散乱の効果が際立ち、その結果、青い色に見えると考えています。
本県の研究で、青池と鶏頭場ノ池の水質を比較したところ、青池では濁りの原因となる植物プランクトンの影響がほとんどなく、鶏頭場ノ池ではその影響がみられる、という結果が得られました。このことは、青池で濁りが薄く、透明度が高いことと関係していると考えています。
(3) 水底の白さ
青池は最大水深約9メートルで、イメージとしては浅いすり鉢のような水底をしています。
青池の底まで見えるということは、底が明るい色をしているからと考えられます。実際、青池の水底は「十二湖凝灰岩」という火山灰からできた白っぽい岩石でできているとされており、この岩石は明るい色をしていることから、すべての色の光を同じ強さで反射できます。もし水底が黒色なら、すべての色の光が吸収されるため、反射される光はなく、湖面まで水底からの反射光が届かないため水底が見えません。青池は水底が明るい色のため、水底で光が強く反射されています。
(4) 水底の深さ
青池は水底が比較的深いことから、湖面から水底へ到達し反射されるので、湖面で目に見える光は、水面下で長い距離を伝わってくることになります。また、青池は濁りが薄いために、この長い伝わりの過程で光は弱くならないと考えています。
このため、青池の水面下の光は、赤色光吸収と青色光散乱の効果を強く受け、湖面で見える色は青が濃くなると考えています。
まとめ
青池が青い理由は、次のようにまとめることができます。水の性質 + 透明度の高さ + 水底の白さ + 水底の深さ
この4つの条件が同時にあるために、青池は青く見えると考えています。
鍵となる物理現象は、参考サイト「光と色の不思議と水が青いわけ」で詳しく解説していますが、水底での反射と湖内での水の青色光散乱です。そして、光がこれらの現象の前後において青池湖内を通るときに、水の性質としての赤色光吸収を受けることで青さが生じると考えています。
十二湖は江戸時代の地震でできたといわれています。青池の青さは、自然が作り出した産物であるということができます。
おわりに ~見頃の時期と時刻、気象条件~
4月下旬から5月中旬までは、青池の湖面上にまだ木の葉が少なく、青池にそそぐ太陽の光がすべて青池に入る条件になります。この時期の晴れた日射の強い日の午前中は、冒頭の画像で示したように鮮やかな青が見えます。5月下旬から6月中旬は、湖面の上に木の葉が茂り、太陽光が遮られますが、この時期の特に午後は、木の葉の隙間から射し込んだ木漏れ日が青池の湖内に入り、筋になって見えます(下図)。
時期によっては青く見えないこともあります。7月以降は湖面上の木の葉に覆われて日射が入らず、青池は暗い青色になることが多いようです。冬は青池には直射日光が射し込まず、黒色になります。
また、青池の色は、気象条件にも左右されます。南西の風が吹くとき、又は青森県太平洋側でヤマセが吹き青森県西海岸でフェーン現象が起きて気温が上がるときは、白神の山に雲がかからず、強い日射が期待できるため、鮮やかな青を見ることができます。一方、強風時の直後は、湖面に落葉が増えるため、青色はあまり期待できません。
- 2022年6月8日14時11分の青池。木漏れ日の入射が見える。
参考文献
詳しく知りたい方向けです。1) 花石竜治・工藤志保・野澤直史・佐藤裕久「十二湖青池の呈色機構に関する研究(第一報)」, 青森県環境保健センター年報, 27, 36-52(2016)

2) 花石竜治・佐藤裕久「十二湖青池の呈色機構に関する研究(第二報):自作した吸収スペクトル測定装置のハードおよびソフトウェア」, 青森県環境保健センター年報, 28, 51-55(2017)

3) 花石竜治・大坂直人・柴田めぐみ・野澤直史・佐藤裕久「十二湖青池の呈色機構に関する研究(第三報):光測定結果の解析について」, 青森県環境保健センター年報, 28, 56-62(2017)

4) 花石竜治・大坂直人・知北和久「青森県・青池の呈色に関する研究:画像解析とモデリング」, 陸水物理学会誌, 1, 3-23(2019).
5) 花石竜治・大坂直人・知北和久「青森県・青池の呈色に関する研究:モデルの精緻化」, 陸水物理学会誌, 2, 25-44(2020).
6) R. Hanaishi, K.A. Chikita: “A Study on the Blue Coloration of Ao-ike Pond, Aomori Prefecture, Japan: Formulation of a Physical Model in Terms of Radiance and Image Analyses”, Applied Sciences, 11, 9231(2021).
7) R. Hanaishi, K.A. Chikita: “A study on the coloration mechanism of Ao-ike Pond, Aomori Prefecture, Japan: refinement of the image analysis methods”, Limnology, 25, 125-142(2024).
8) 花石竜治・知北和久「RAWファイルの画像解析に基づく青森県・青池の呈色機構」, 陸水物理学会誌, 6, 3-27(2024).
9) 花石竜治・菩提寺誉子「青森県十二湖青池と隣接湖沼の水質比較」, 全国環境研会誌, 49, 216-220(2024)

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東青地域県民局環境管理部 環境調査研究課