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知事就任後初の当初予算案編成等に当たっての県政運営に関する所信表明(平成16年2月24日)

 提出議案の御説明を申し上げる前に、議長のお許しを得て、この度の元青森県知事北村正ヤ氏の御逝去に対し、県民を代表し、謹んで哀悼の意を表します。※北村正ヤ氏のヤは「哉」の「ノ」なし
 北村元知事は、昭和三十年から県議会議員として御活躍なされた後、昭和四十二年から副知事として、また、昭和五十四年から平成七年までは知事として、優れた行政手腕を発揮され、県勢の伸展に御尽力されました。その御功績は誠に大きなものがあり、また、重厚にして実直なお人柄により、県民の皆様から厚い信望を得ながら長きにわたり県政を担われたのであります。
 経験豊富なよき大先輩として、これからも県政の推進に様々な御助言をいただきたいと思っていた矢先の出来事であり、誠に残念でなりません。心から御冥福をお祈りいたします。

 それでは、本日ここに、県議会第二百三十七回定例会が開会され、平成十六年度当初予算案をはじめ各般にわたる議案について御審議を願うに当たり、県政の運営に関する所信を明らかにし、提出議案の概要について御説明申し上げ、議員各位並びに県民の皆様の深い御理解と御協力をお願い申し上げます。
 私が知事として御信任をいただいてから、間もなく八か月が経過しようとしております。この間、「ふるさと青森県の再生・新生」に向けて、微力ながら、一歩一歩着実に前進できましたことは、議員各位をはじめ、広く県民の皆様方の御支援、御協力の賜であり、心から感謝申し上げます。

 さて、我が国の急速な近代化と戦後復興、高度経済成長を支えてきたシステムが様々な面で行き詰まりを見せており、景気低迷による雇用情勢の厳しさ、長引くデフレ、巨額の財政赤字など国民の不安が高まっている中で、政府は、「改革なくして成長なし」、「民間にできることは民間に」、「地方にできることは地方に」との方針のもと、規制、金融、税制及び歳出の構造改革を積極的に推進しております。
 一方、国外に目を転ずれば、世界各地で頻発する痛ましいテロ事件、地球温暖化をはじめとする環境問題など、多くの困難な課題を抱えていると同時に、自衛隊によるイラク復興支援に象徴されるように、日本が国際社会で果たしていくべき役割について、様々な議論がなされております。

 このように、現在は、時代の大きな転換期にあり、将来の日本のあり方が模索されている重要な時期であります。
 本県においても、長引く経済・雇用情勢の低迷など、多くの困難な課題を抱えており、二十一世紀の明るい将来像を描くことが難しい状況にあります。
 こうした状況から早期に脱却し、真に県民の幸せと県勢の発展につながる未来を切り開き、次代を担う子どもたちへかけがえのない「ふるさと青森」を責任を持って引き継いでいくためには、自主自立の青森県づくりを着実に進めていく必要があります。

 私は、「参加」、「共生」、「創造」そして「公平」の四つの基本理念のもと、「青森から日本を変える」との気概を持って、この自主自立の青森県づくりを目指し、「ふるさと再生・新生」を実現すべく全力を傾注する覚悟であります。
 そのためには、まずもって、私が就任当初から申し上げておりました財政改革と雇用・経済対策に、早急に取り組む必要があります。

 はじめに、財政改革について申し上げます。
 本県財政は、自主財源に乏しく、地方交付税等の確保など国の予算や地方財政計画の影響を強く受ける脆弱な財政構造であることに加え、バブル崩壊後の景気低迷による県税収入、国税を原資とする地方交付税の伸び悩みや景気浮揚のための国の経済対策に呼応して実施してきた公共投資の追加に伴う県債残高の累増とその償還のための公債費の増加などにより、収支のギャップである財源不足額が年々拡大する傾向にあります。
 この財源不足額を補うために基金の取崩しが続いており、思い切った改革を行わなければいわゆる財政再建団体への転落も考えられるような極めて厳しい状況に直面しております。

 このため、このような状況を克服し、将来にわたって様々な環境変化に機動的・弾力的に対応できる効率的かつ持続可能な財政構造を再構築するため、昨年十一月、県議会をはじめ、広く県民の皆様の御理解と御協力をいただきながら、財政健全化のための道筋を示す財政改革プランを策定したところであります。
 財政改革プランのスタートとなる平成十六年度当初予算においては、三百十七億円と見込まれた財源不足額を、様々な財政健全化努力で百四億円に圧縮することを目指して、予算編成作業を進めたところでありますが、その過程で明らかとなった、平成十六年度の地方財政対策に伴う臨時財政対策債を含む地方交付税総額の、急激かつ大幅な削減の影響により、圧縮後の財源不足額が再び三百三十億円へと拡大する見通しとなったところであります。

 このような事態の中で、財政改革プランの策定過程において、様々な情報共有活動を通じ、県民の皆様の御理解を得ながら進めてきたという、ここに至るまでの手順を大切にしてきた経緯を踏まえ、予算編成作業では、プランに掲げた取組みを確実に実施するとともに、更なる歳出の見直しを行うものの、平成十五年度の収支状況による捻出財源の活用や新たな地方債である地域再生事業債の発行など、臨時的対応を含めた財源対策を講じ、施策の重点化に向けた「ふるさと再生・新生重点枠経費」や「生活創造公共事業重点枠経費」については、所要額を確保するなど最大限の配慮をしたところであります。

 その結果、国の地方財政対策により生じた財源不足額が我々の予測を超えるものであったこともあり、収支不足を補てんするための基金の取崩しは、財政改革プランで見込んでいた額を超えて対応しなければならなかったものでありますが、その額をできる限り最小限にとどめるための対応策や、プランに沿った歳出削減・歳入確保等の取組みを着実に進めたことなどもあって、基金取崩額は、前年度の当初予算以下に抑えることができました。
 このようなことから、平成十六年度当初予算は、雇用・地域経済へ最大限に配慮しながら、財政改革プランで見込んだ歳出削減・歳入確保の具体的な取組みを織り込んで、財政改革の方向性を、予算の形で県民の皆様にお示ししたものであり、改革実行の第一歩を踏み出した予算であると考えております。

 今後、国の三位一体の改革の進展により、一層厳しい内容の地方財政対策が考えられることから、財政改革プランで掲げた歳出削減・歳入確保の取組みを更に徹底・加速していく必要がありますが、これに加えて新たな視点からの更なる取組みも必要であると考えております。
 このため、来年度においては、新たに発足する特別対策局に「行政経営推進室」を設置し、人事・財政当局とも密接に連携させながら、県民に真に必要なサービスを継続して提供できる安定した県行財政運営体制を再構築する新たな改革に取り組んでまいりたいと考えております。

 さらに、今回の三位一体の改革の一環として行われた地方交付税総額の急激かつ大幅な削減については、全国の多くの地方公共団体から「予算が組めない」との声が上がるほどの厳しい内容であり、このような事態を踏まえ、本県としても、今後の三位一体の改革が真の地方分権の確立及び地方財政の自立につながるよう、「三位一体の改革を進めるに当たっては、中期的な改革の見通しを予め明らかにするとともに、各年度の改革に伴う地方財政に与える影響をできる限り早い段階で明らかにし、地方の声を十分反映すること」、「地方交付税制度の見直しに当たっては、まずもって、法令による事務事業の義務づけの見直しや地方が担うべきサービス水準の検証を行い、地方財政計画の策定を通じて必要な総額を確保するなど、適切な財源保障を行うとともに、地方の行政任務に見合う財源保障と、税源偏在による財政力格差を是正する財源調整を一体的に行う地方交付税制度を堅持すること」、「平成十六年度の財政運営に支障が生じないよう適切な措置を講ずること」などを訴えていかなければならないと考えております。

 なお、去る一月二十三日には、私自らが、麻生総務大臣、自治財政局長をはじめ関係各位に直接お会いし、本県の実情を申し上げましたが、さらに、今月十三日の特別交付税に関する要望の際にも、重ねて本県の財政事情への御理解を求めたところであります。
 また、同日、北海道東北自治協議会、北海道東北地方知事会として、地方公共団体の財政運営に支障が生じないよう、「三位一体の改革に関する緊急提言」をとりまとめ、関係省庁へ提出したところであります。
 今後とも、全国知事会等を通じて、あるいは直接にも、機会あるごとに国に意見を申し上げていきたいと考えておりますので、議員各位の御指導、御協力方よろしくお願いいたします。

 次に、雇用・経済対策についてでありますが、これに先立ち、国及び県の経済見通し等について申し上げます。
 まず、平成十六年度の国の経済見通し等についてであります。
 政府は、平成十五年六月に、それまでの構造改革の進展を点検・評価した上で、「経済財政運営と構造改革に関する基本方針二〇〇三」を策定したところであり、この基本方針も踏まえつつ、平成十六年度には不良債権問題を終結させることを目指し、「金融再生プログラム」を着実に実施した結果、主要行の不良債権比率は低下してきているほか、構造改革特別区域法に基づく特区の認定や、「五百三十万人雇用創出プログラム」、「若者自立・挑戦プラン」及び「対日投資促進プログラム」に基づく施策を推進いたしております。

 平成十五年度の我が国経済は、年度当初に踊り場的な状況が見られた後、米国をはじめ世界経済が回復する中で、輸出や生産が再び緩やかに増加していくとともに、企業収益の改善が続き、設備投資も増加するなど、企業部門が回復していき、これにより、民需中心に緩やかに回復していくものと見込まれております。
 平成十六年度の経済見通しについては、世界経済の回復が続く中で、生産や設備投資の緩やかな増加が続き、こうした企業部門の動きにより雇用・所得環境も厳しいながらも持ち直しに向かい、家計部門にも徐々に明るさが及んでいくことが期待され、我が国経済は、引き続き民需中心の緩やかな回復過程を辿るものと見込まれております。この結果、国内総生産の成長率は名目で〇・五パーセント程度、実質で一・八パーセント程度になるものと見通されております。

 次に、本県の経済動向について申し上げます。
平成十五年度における本県経済のこれまでの動向を見ますと、個人消費や住宅建設は低調に推移し、公共投資も前年を下回っているなど需要は低調に推移しております。
 鉱工業生産につきましては、本県にとってウェイトの高い、電子機器用の部品・装置を生産する電子部品・デバイス工業において好調な生産活動が続いており、製造業の生産全体を下支えしております。

 雇用情勢につきましては、有効求人倍率はわずかに回復がみられますが、依然全国最低水準となっており、現金給与総額も減少傾向にあるほか、青森労働基準局の調べによれば、新規高卒者の県内就職内定率は、一月としては平成に入って最低となるなど厳しい状況にあります。
 また、企業倒産につきましては、件数及び負債総額では前年を下回っていますが、不況型倒産の割合が高くなっております。

 以上のように、本県経済は、生産の一部に持ち直しがみられるものの、雇用情勢は依然厳しく、需要も低調に推移するなど、厳しい状況が続いております。
 このようなことから、雇用対策については、これまでも、県自らが、ワークシェアリング事業を実施するとともに、雇用開拓ローラー作戦により、新規学卒者の採用枠拡大要請に取り組んでまいったところであります。
 今後は、求人・求職のミスマッチ解消のため、既に開発に着手している「ワークわくあおもりJobネット」システムの充実を図ることとしているほか、新たに、若年者への就業支援サービスをワンストップで提供できる体制づくりなど、雇用対策に全庁あげて取り組んでまいります。

 次に、地域経済の活性化については、引き続き、特区を活用した産業フロンティアの形成に取り組むとともに、クリスタルバレイ構想を着実に推進することとしているほか、新たにコミュニティビジネスなどに支援を行うなどの「県民仕事おこし運動」を推進することといたしました。

 さらに、農林水産業の振興については、高品質で安全・安心な本県の農林水産物や加工品等の消費拡大のため、首都圏等の大消費地の量販店、市場等を対象にトップセールスを展開するなど、生産から流通までを結びつけた収益性の高い「攻めの農林水産業」を強力に展開したいと考えております。

 なお、予算面では、政策経費の概ね十一パーセントに当たる百三十億円余を雇用刺激型予算として編成したほか、「ふるさと再生・新生重点枠経費」のうち、「産業・雇用」分野に約六割を配分するなどの予算の重点化を図ったところであります。

 次に、「ふるさと再生・新生」を実現していくための県の組織・機構改革について申し上げます。
 まず、企画立案・政策調整機能の強化についてであります。
 これまで、県の総合的な企画立案については企画振興部の企画課で、政策調整については直轄組織である政策推進室でそれぞれ行ってまいりましたが、新たな県政運営指針となる仮称「新青森県基本計画」の策定に当たり、政策の立案・調整をより一体的に推進するため、企画振興部を「企画政策部」に改め、これらの所管を一元化することといたしております。

 次に、文化・芸術振興体制の強化についてであります。
 文化・芸術振興につきましては、現在、仮称「青森県立美術館」の建設を進めるなど、これまでも鋭意取り組んできたところでありますが、県民の「心の豊かさ」を支援していく観点から、「文化振興課」を新設し、その取組みを一層充実してまいります。

 次に、「攻めの農林水産業」を実現するための組織体制の整備についてであります。
 先に申し上げましたとおり、私は、「攻めの農林水産業」に軸足を置いて、本県産業の競争力を高めていくことが重要であると考えており、その一環として農林水産物をはじめとした県産品の総合的な販売戦略を進めるため、「総合販売戦略課」を農林水産部に新設することといたしております。

 次に、「特別対策局」の新設についてであります。
 行政改革や県境再生対策、原子力関係施設の安全検証など、複数の部局に関連を有し、私や副知事が直接的に指揮を執ることがより効果的と考えられる特別の施策については、これまでそれぞれ単独の直轄組織としてきたところでありますが、その機動性を確保しつつ、積極的に県民との対話を重ねながら、効率的かつ的確に推進していく体制整備を図るため、これらの施策と広報・広聴業務を併せて所管する「特別対策局」を新設することといたしております。また、先ほども申し上げましたが、現下の厳しい行財政状況に鑑み、県行政の役割分担の抜本的な見直しの下、組織機構の見直しや定数の適正化、事務事業の更なる見直しなどに着手し、県民に真に必要なサービスを継続して提供できる安定した県行財政運営体制を再構築していくことが重要であり、このための組織整備として、行政改革・公社等改革推進チームを改組し、新たに「行政経営推進室」を設置することといたしております。

 最後に、スポーツ振興行政の教育委員会への一元化についてであります。
 スポーツ振興行政については、業務執行体制としてスポーツ振興局を設置し、知事部局と教育委員会が共同で施策推進に当たってきたところですが、それによって得られた成果を継続しつつ、より効果的に施策を実施していくため、業務の所管を教育委員会に一元化することといたしております。
 以上が、来年度の組織・機構改革の主なる内容でありますが、関係条例案として、今回、議案第二十三号「青森県部設置条例の一部を改正する条例案」を提案いたしておりますので、よろしくお願いいたします。

《提出議案の説明》

 困難な時代にあって、希望の未来に具体的な歩みを進めることが求められている今、あの大恐慌時代のアメリカ大統領フランクリン・ルーズベルトの言葉を心に刻みたいと思います。
 「我々が恐れなければならないことは、唯一つ、恐れることそのものである。」
 私も、たゆまずひるまず、改革実現に向けて、一歩一歩着実に前進していく決意でありますので、これからも議員各位の御指導、御協力をよろしくお願いいたします。
以上をもちまして、県政の運営に関する所信を申し述べるとともに、提出議案の概要について御説明申し上げたところでありますが、議事の進行に伴い、御質問に応じ、本職をはじめ関係者から詳細に御説明申し上げたいと思います。

過去の議会説明要旨

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