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更新日付:2008年7月1日 地域生活文化課

青森県民俗の風呂敷01「津軽地方の虫送り」

青森県の民俗について写真とともにご紹介するコーナーです。   民俗部会担当 清野耕司

虫送り
津軽地方では、田植えが終わるとサナブリと呼ばれる農休みに虫送りが行われる。田畑を持つ集落では、豊作を願う重要な農耕儀礼として、また、1年中で最もにぎやかで楽しみの多い行事として、かつては盛んに行われていた。
 戦後の急激な地域社会の変化に伴い消滅した例も多いが、人々の熱意で昔ながらに存続している地区、一旦は中断を余儀なくされたものの子どもたちのために復活させた地区などで、現在でも5月下旬から6月上旬にかけて行われている。
 五所川原市、つがる市、鶴田町、板柳町などの津軽平野を通る際は、村はずれの路傍に目を向けていただきたい。藁製のムシが目につくはずである。また、初夏には運が良ければ、虫送りの行列に出くわすことがあるかも知れない。
虫送りは、農作物に付く害虫駆除を主な目的として、集落にとっての災厄を送り出し、豊作と村内安全を願う行事である。
 ムシと呼ばれる藁の蛇体(龍体)人形を害虫の身代わりとして、にぎやかに囃したてて送り出す。人が扮したアラマ(荒馬)が田や畑で暴れ回り害虫を追い出し、それを「太刀振り」踊りが切り払う。
 アラマには無礼講が許され、人の屋敷でも田畑でも暴れ回り、各戸で振る舞われるお神酒がそれに拍車をかける。アラマが暴れるほど害虫は退散するという。
写真は、五所川原市相内の虫送りで、撮影は平成18年(2006)年6月10日。

虫送り
 虫送りの本質には、農民の生活に致命的なダメージをもたらす害虫や災いは、この世に恨みを残して亡くなった死者の霊すなわち御霊(ごりょう)の祟りであり、それを鎮め祭ることで、その霊威にあやかるとする御霊信仰が間接的に関わっているようである。
 津軽地方のムシは害虫や災いのシンボルとも考えられるし、祟りをもたらす怨霊に対抗し、怨霊を制御できる力を持つ神の姿でもあろうか。その形態は水神としての龍や蛇に関連するという説もある。集落を練り歩いた後に、村はずれで睨みを効かしたり、田の水口で大切な水を守るムシも津軽地方には多い。 
本来、人々の切実な願いを反映していた集落の共同祈願が、サナブリ行事として楽しみの多いものに変容し、娯楽的な要素を増していったことも津軽地方の虫送りの特徴といえよう。歴史上、何度となく悲惨な飢饉に見舞われてきた人々の祈りは共通であった。この行事を毎年繰り返し営むことが、日々のくらしを保証してきたのであり、人々の心の支えでもあったのである。
 ところが今では、地域社会のあり方も変わり、人々の願いも多様化した中、虫送りにも新たな意味が見いだされようとしているのかも知れない。
写真は、五所川原市藻川の虫送りで、撮影は平成17年(2005)6月5日。

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