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更新日付:2024年2月22日 財政課

第317回定例会提出議案知事説明要旨(令和6年2月)

 提出議案の御説明を申し上げる前に、議長のお許しをいただき、本年一月一日に発生した令和六年能登半島地震により亡くなられた方の御冥福をお祈りするとともに、今なお療養されている方や避難生活を余儀なくされている皆様に対しまして衷心よりお見舞いを申し上げます。
 それでは、本日ここに、県議会第三百十七回定例会が開会され、令和六年度当初予算案をはじめ各般にわたる議案について御審議いただくに当たり、県政運営に関する基本的な方針について申し上げたいと思います。
 「青森県は変われる」
 昨年六月二十九日の知事就任以来、この強い思いを持って、七か月余りを駆け抜けてきました。
 物価高騰に対しては、就任早々対策本部を立ち上げ、直面する課題に全庁体制で取り組み、国に先駆けて対策を講じました。
 少子化対策については、合計特殊出生率二以上を目指すこども・子育て「青森モデル」の実現に向けて、青森県こども未来県民会議を立ち上げ、県民の皆様から御意見を伺ってきました。
 教育改革では、有識者会議を設置し、検討の過程においてAIの活用により、教員や保護者からの御意見を「見える化」するなど新しい試みも取り入れながら、目指す教育の実現に向けて議論を進めてきました。
 再生可能エネルギーに関しては、開発が進められる中、自然環境との共存共栄を図るための共生構想を策定し、今後のルールづくり等に向けた議論をスタートさせました。
 さらに、市町村長とのホットラインの形成や県民対話集会「#あおばな」による県民と膝を突き合わせた対話。
 「伝わる広報」を目指した新しい記者会見のスタイルやSNSを活用した情報発信。
 スピード感を持って次々と新しい政策、スタイルを打ち出したのは、青森県は変わっていけるという姿を県民の皆様にお示しするためでもあります。
 そして、私が対話を重視するのは、県民の皆様が発言し、参加していただくことで、県が行っていることを自分事として感じていただきたいからです。私は、県民の皆様の不安、現状や未来を変えたいという御提案を政策につなげていきます。同時に、県民の皆様お一人お一人にも何ができるのか考え、新しい一歩を踏み出していただきたいと思っています。
 「悔しさ」は発展の原動力です。青森県。本州最北端。人口減少率は全国の都道府県で二番目に高い水準にあり、高齢化も進んでいる。医師の絶対数も不足している。いろいろなことを諦めていないか。私はいつも自分とそして皆さんに問いかけるつもりで働いています。
 暮らしやすさでは都市部に負けていないのに、高い給与を求め、若者は進学・就職を機に本県から出ていってしまいます。魅力的な仕事があり、所得が向上すれば、若者は残ってくれます。帰ってきてくれます。
 教育や子育てに投資をすることは、青森県の未来に投資をすることです。こどもを社会全体で大切にしながら、地方にあってもしっかりとした教育を行えば、青森県の明日を築くことができます。
 青森新時代。県民の皆様に変化を実感してもらえるよう、令和六年度当初予算では、新しい施策の構築に特に知恵を絞りました。
 「青森県は変わってきている」
 県民の皆様が変わっていく青森県の未来に希望を持てるよう、青森新時代の実現に向けて誠心誠意努力していきます。
 それでは、議案第一号「令和六年度青森県一般会計予算案」について御説明申し上げます。
 令和六年度当初予算においては、青森県物価高騰緊急対策本部での検討、県民対話集会「#あおばな」で寄せられた県民の皆様の声、青森県教育改革有識者会議や青森県こども未来県民会議からの御意見・御提言なども踏まえて、青森新時代を切り拓くための施策を本格的に展開することとしました。
 「青森県基本計画『青森新時代』への架け橋」に掲げる七つの政策テーマに基づく各種施策を推進するとともに、最重要課題であるこども・子育て「青森モデル」の実現に向けた支援策の充実、本県の将来を見据えた教育改革の推進や各分野におけるDXの加速、直面する物流の二○二四年問題や物価高騰への対応等に重点的に取り組んでいきます。
 この結果、年間総合予算として編成した令和六年度一般会計当初予算の規模は、七千二十二億円、令和五年度当初予算対比三百六十二億円、四・九パーセントの減となりましたが、新型コロナウイルス感染症対策関連経費の減を除けば、実質的なプラス予算となりました。
 また、各種財源を積極的に確保・活用することなどにより、当初予算において財政調整用基金の取崩額をゼロとする収支均衡を継続するとともに、県債残高についても着実に縮減することとしました。
 昨年十二月に策定した「青森県基本計画『青森新時代』への架け橋」において、二〇四〇年における本県の「めざす姿」を「若者が、未来を自由に描き、実現できる社会」とし、「しごと」、「健康」、「こども」、「環境」、「交流」、「地域社会」、「社会資本」の七つの政策テーマを設定したところです。
 令和六年度当初予算はこの七つの政策テーマに沿って戦略的に施策を展開していきます。
 一つ目の政策テーマは「しごと」です。
 地域経済の持続的な発展と若者の県内定着に向けて最も大切なのは県民の所得向上です。多様な仕事と安定した収入があれば、若い世代が夢や希望を持って進むべき道を選ぶことができます。
 農林水産業においては、後継者や労働力不足が深刻化する中にあっても、利益の最大化を図るため、販売力の強化と生産性の向上を同時に成し遂げていかなければなりません。
 このため、販売力の強化に向けては、県産品情報サイトを刷新するほか、あおもり米やジュノハート等の特産果実、県産冷凍食品などについて各種メディア、SNS等を利用して全国に販売促進活動を展開していきます。
 生産面においては、農業DXの技術実証に取り組むとともに、りんごの高密植わい化栽培などの先端技術の導入を促進していきます。また、超プレミアム米や超低コスト米の生産といった新たな取組にも挑戦します。
 農業の担い手確保・育成については、企業の農業参入・定着を支援するとともに、農業者の副業を通じた経営安定と地域課題解決に向けたモデル的取組を支援します。
 また、産業技術センターりんご研究所は、まだ仮称ではありますが「りんごイノベーションセンター」として生まれ変わります。りんごに関する高度な研究開発を行うだけではなく、人材育成、情報発信機能の強化を図ります。令和七年のりんご植栽百五十周年記念に向けて、全国、世界に誇れる青森りんごを発信していきます。
 畜産業においては、酪農、肉用牛の生産力強化に取り組みます。酪農については、飼料価格の高騰に対応し、経営改善と高能力な乳用牛の生産を支援していきます。肉用牛については、令和九年に開催される全国和牛能力共進会北海道大会の上位入賞を目指し、脂肪の品質向上に向けた分析とプログラム開発に取り組んでいきます。
 水産業においては、サーモンが今後の成長市場と見込まれています。青森県のサーモン海面養殖の一大産地化に向けて、高密度な飼育による養殖手法等の実証に取り組むほか、新たな生産者の組織づくりや県産魚粉を活用した飼料の開発に取り組みます。
 そして、陸奥湾ホタテガイ養殖業は、昨年夏の高水温により大きな被害を受け、関係市町村から四十億円を超える損失が報告されています。
 これに対し、十一月補正予算において親貝確保のための緊急対策等を講じたところですが、新たに立ち上げた陸奥湾ホタテガイ総合戦略チームにおいて、新しい養殖手法や効率的な作業機械・資材の開発のほか、販売・輸出等について総合的な戦略を策定します。そして、採苗不振対策と成貝育成に取り組み、陸奥湾ホタテガイ産業の復活を目指していきます。
 また、ホタテガイ、スルメイカ、マグロに次ぐ漁獲高を誇るナマコについては近年漁獲量が減少していることから、資源増大に向けて地域の特性を生かした生産体制づくりと増殖技術の向上に取り組みます。
 本県の経済と雇用を支える中小企業につきましては、県内企業の稼ぐ力を向上させるため、革新的な技術やアイディアで急成長を目指すスタートアップの創出に向けたネットワークを拡充します。また、県内にある革新的技術の発掘や磨き上げ、県内外の企業との結び付けにより新たな事業化を支援していきます。
 若者が県内で活躍するためには魅力的な仕事づくりが重要です。そのため、誘致企業の補助要件を緩和し、戦略的な企業誘致を促進するほか、これまで東京二十三区等からの移住者に限っていたUIJターンによる創業等の支援対象を全国からの移住者に拡大します。
 さらに、産学官の連携による若者の県内定着に向けた新たな協議会を設立し、緊密な連携のもとで、若者の県内志向の醸成や学生と県内企業の相互交流機会の創出にも取り組んでいきます。
 物価高騰及び物流の二〇二四年問題への対応は、今回の当初予算における大きなテーマでした。
 喫緊の物価高騰に対しては、九月補正予算において、影響を大きく受ける子育て世帯への支援のほか、市町村への支援など国に先駆けて緊急対策を講じたところです。
 また、物価高騰に持続的に対応していくためには一時的な支援ではなく、事業者の事業構造の転換を図っていく必要があります。
 このため、生産性向上に向けたスマート農業機械導入への支援や飼料価格高騰に対応した酪農経営モデルの作成、中小企業の脱炭素化設備の導入など、社会経済情勢の変化に対応して事業構造の転換を図る事業者の皆様を後押しすることとしています。
 物流の二○二四年問題については、国に対して実情に応じた制度の運用などについて要望を行ったところですが、県としても賃金引上げや物流の二○二四年問題の解決に向けて特別保証融資制度による金融面での支援を行うほか、効率的な農林水産物の物流体制の構築にも着手することとしています。
 二つ目の政策テーマは「健康」です。
 本県の平均寿命は着実に延伸しているものの、全国と比較すると依然差があり、健康寿命の改善は道半ばだと言えます。
 私が特に重視したいと考えているのは、県民の誰もがどこにいても同じ水準の医療を受けられる環境づくりであり、そうした医療を支えるために最も重要なのが医療人材の確保です。
 このため、医師修学資金について、弘前大学の地域枠入学者全員が利用できるよう現在三十四人となっている貸与枠を六十二人に、県外大学においては、県外出身者も対象に加え、貸与枠を三人から十六人に、それぞれ大幅に拡充します。
 また、県内の看護師等養成所の卒業者の県内就業率が全国に比べて低く、県内定着が図られていない現状を踏まえ、看護師等修学資金についても、大学や高校専攻科を対象に加え、貸与枠を二十五人から百四十六人に大幅に拡充します。また、二百床以上の病院等においても看護師が不足している現状を踏まえ、従事した場合の返還免除要件について県内全ての病院・診療所と介護関係施設等を対象にすることとしました。
 本県の平均寿命延伸に向けては、全国最下位となっているがん死亡率を改善する必要があり、がん対策については、特に検診を重視します。
 がん検診については、二つのボトルネックがあり、まずは個人ががん検診を受けやすい環境整備を進める必要があります。そして、がん検診で要精密検査とされた方を百パーセント精密検査につなげていかなければなりません。
 がん検診の受診率向上のため、職域におけるがん検診を行っていない事業所に対し、説明会の実施や相談員の派遣による導入支援を行うとともに、市町村におけるがん検診については、託児スペース設置への支援など検診を受けやすい環境整備に取り組みます。
 また、精密検査の受診率向上のため、市町村と連携して、初回精密検査費用の助成を新たに実施します。
 県民の健康面の課題解決のために、県民お一人お一人が自らの生活習慣と向き合い、自発的な改善につなげることも重要です。
 ヘルスリテラシーの向上による生活習慣の改善のため、県民のライフステージに応じた食育活動の展開や指導者の育成を行うとともに、共食の場の課題解決や未利用農産物とのマッチングを図るためのネットワークづくり、「ふるさと産品給食の日」に合わせた食材のPR・啓発等により、食と健康への関心の喚起に取り組んでいきます。
 高齢者が生きがいを持ち、安心して暮らせる環境づくりに向けては、介護の現場において人材の確保が喫緊の課題とされる中、介護ロボットやICT等のテクノロジーを活用し、事業所における業務の効率化、負担軽減を支援していきます。
 また、高齢者のフレイルを予防し、生きがいを持って生活していくためのつどいの場について、アクセスなどの課題に対応した老人クラブ等の送迎モデルの創出やシニアeスポーツ大会の開催、保健師など専門職の活用促進に取り組んでいきます。
 認知症対策については、認知症高齢者等が安全で安心して暮らせる社会の構築に向け、高齢者行方不明事案に関する実態調査による課題の洗い出しと見守り体制の構築を図るとともに、デジタルツールによる情報発信などを実施します。
 障がい者や妊産婦等が安心して暮らせる環境づくりに向けては、希望される方に対し、駐車スペースのための利用証を交付するパーキング・パーミット制度を開始するとともに、障がい者への差別解消や合理的配慮に関する普及啓発も強化していきます。
 心を支え、命を守る社会づくりに向けては、自殺防止に向けた各年代への広報・啓発を行うとともに、これまで特定の期間に行っていたSNSによる相談対応について、受付時間を延長したうえで、年間を通じて実施することとしています。
 このほか、新たに、救急車を呼ぶべきかどうか判断に迷ったときなどの電話相談窓口となる「♯7119」を開始することとしています。
 三つ目の政策テーマは「こども」です。
 本県の合計特殊出生率二以上を目指すこども・子育て「青森モデル」の実現に向けて、女性や子育て世代等との対話を通じて政策を企画していくことが重要と考え、昨年八月に青森県こども未来県民会議を立ち上げ、これまで二回の会議とワークショップを開催し、様々な環境、年齢層の方から御意見を頂きました。その中で、少子化の要因として、結婚・出産に踏み切るための若者の所得向上や子育て費用の負担軽減の必要性について御提案いただきました。若者の所得向上については、基本計画における「しごと」の政策テーマにおいて様々な施策に取り組むこととしており、子育て費用の負担軽減については、市町村と連携して新たな支援を行うこととしました。
 子育て世代が幅広く恩恵を受けられるよう、小学校一年生から中学校三年生までの給食費の無償化を最優先として子育て費用を無償化するための市町村交付金制度を創設します。都道府県単位での全小中学校の給食費無償化は全国初の取組であり、青森県は子育て世代を全県を挙げて応援するという力強いメッセージでもあります。さらに、食育の観点から、給食に使われる本県産の農林水産物への関心を高め、こどもたちの健全な食生活にもつなげていきたいと考えています。
 また、県民会議においては、不妊治療に係る経済的負担軽減についての御意見も頂きました。不妊治療については令和四年度から公的医療保険の対象となったものの、原則三割となっている自己負担が若年世代にとって治療に踏み切れない要因の一つとなっていると考えられます。このことから、合計特殊出生率の向上に向けて、生殖補助医療の自己負担を全額支援する新たな支援制度を創設することとしました。
 さらに、育児を社会全体で支える仕組みや休暇等が取りやすい職場環境づくりなどの気運醸成の必要性についても御提案いただきました。こどもや保護者の方等との意見交換の機会を設け、それを活用した施策展開を図るとともに、子連れ優先レーンの導入促進や育児休暇取得に関する職場や社会の理解促進など、こどもまんなか社会の実現に取り組んでいきます。
 このほか、国の「こども未来戦略」で掲げた「加速化プラン」に対応し、市町村と連携して妊娠期から出産・子育てまで一貫して相談に応じ様々なニーズに対応する伴走型相談支援と出産育児関連用具の購入費助成などの経済的支援に取り組みます。
 また、専門的かつ総合的な相談支援を行うこども家庭センターについて全市町村への設置を促進していきます。
 次に、あおもりの未来をつくるこどもたちのための学校教育改革については、昨年七月に青森県教育改革有識者会議を設置し、十数回にわたり活発な御議論を行っていただきました。
 先月頂いた提言におきまして、「学校の働き方改革、教職員のウェルビーイング向上」、「教育DX、学びの環境アップデート」、「学校の経営力強化」の三つを柱とした今後の教育改革の方向性をお示しいただいたところです。
 この提言を踏まえ、教育委員会において可能な施策からスピード感を持って着手していくこととしています。
 まず、教員が児童生徒への指導等に集中できるよう教員の事務補助を行うスクールサポートスタッフについて、大幅に配置の拡充を図り、全ての公立小中学校に配置することとしました。
 さらに、こどもたちへのきめ細かな指導等を目的に、一学級を三十三人以下とする少人数学級編制を推進してきており、令和六年度において小中学校全学年で少人数学級等が完成することとなります。
 また、公立学校における働き方改革を推進するため、市町村に対し、学校・保護者への連絡手段のデジタル化や自動採点システムの導入など必要な環境整備に要する経費について支援するほか、学校経営力の強化に向けた外部コンサルタントによる個別の学校に対する伴走型支援を行います。さらに、県立学校における教育の質の向上と校務の効率化を一体的に推進するためのデジタル教材の活用やICT教育サポーターの配置等も行うこととしています。
 本県の未来を担う高校生等をグローバルな人材として育成するため、高校生が自ら企画した海外体験を支援するという新たな取組も実施します。
 様々な環境におけるこどもや家庭への支援として、医療的ケア児が増加している状況を踏まえ、在宅での支援体制の整備に向けて対応可能な事業所等の増加に向けた個別支援や看護師の技術習得支援等を行うとともに、安心して授業が受けられるよう特別支援学校における医療的看護職員の配置を拡充します。
 このほか、こども食堂などの居場所づくりを推進するため、関係者の連携強化等に取り組むほか、食材提供を行う農産物生産者等の掘り起こしを行います。
 四つ目の政策テーマは「環境」です。
 国のエネルギー基本計画に基づき、電力の構造転換を図るため再生可能エネルギーの普及拡大が進められており、風力発電を中心に再生可能エネルギーの立地拠点となっている本県においても更なる開発が進められる中、豊かな自然環境を守り、これを次世代へ引き継いでいかなければなりません。
 こうしたことから、昨年九月、「自然環境と再生可能エネルギーとの共生構想」を策定し、自然環境と再生可能エネルギーの共生のあり方について、目指す姿とその前提を定め、ルールづくりの方向性とスケジュールを示したところです。
 今年度から、すでに議論をスタートさせているところですが、令和六年度においては、再生可能エネルギー施設の立地を禁止する区域のゾーニングや立地地域における合意形成を円滑にするプロセスを制度化するための条例の制定、新税導入の検討を行います。
 カーボンニュートラルの達成に向けて、本県では「青森県地球温暖化対策推進計画」に基づき、二〇三〇年の中間目標に掲げる温室効果ガス排出量の削減に取り組んでいるところですが、家庭や事業所における自家消費型再生可能エネルギー設備の導入については、導入時のコスト等が課題となっているところです。
 そこで、住宅や工場等に設置する自家消費型の太陽光発電設備や蓄電設備等の導入について新たに支援する仕組みを設け、五年間で集中的に普及拡大を図っていきます。また、ヒートショックの予防や温室効果ガスの排出削減に向けて、断熱・気密性能を備えた住宅の新築・リフォームに対しても新たに支援を行います。
 温室効果ガスの排出抑制と併せて吸収源対策の推進も図る必要があります。
 着実な再造林と意欲のある林業事業体による森林の集約化や低コストな再造林の推進を支援するとともに、新たに林業に取り組む事業者の育成や企業等の森林経営参入を推進します。また、アマモなどの海洋生物によって貯蔵される二酸化炭素をブルーカーボンとし、これを二酸化炭素排出量として取引するための仕組みの構築を図り、脱炭素化と海域環境の改善を同時に目指していきます。
 資源効率の高い循環型社会の実現に向けた取組も進めていきます。
 本県においてプラスチックごみや食品廃棄物の再生利用率が低い状況にあるほか、ホタテの養殖残さなどの循環資源が活用されていない現状にあります。このため、循環資源の活用促進に向けて必要な情報を集約して周知を図るほか、市町村に対するアドバイザーの派遣や実証試験などの支援を行い、循環資源の活用システムを構築していきます。
 また、災害が起きた際、災害廃棄物への迅速な対応が早期復興へつながることから、初動対応としての仮置き場の設置・運営訓練の実施や住民理解の促進、災害廃棄物の受入先のリスト化に市町村と連携して取り組みます。
 このほか、昨年、世界自然遺産登録三十周年を迎えた白神山地への関心の高まりを継続させ、来訪者数の増加につなげていくため、新たにアウトドアブランドと連携してアクティビティの充実強化を図るとともに、国内外に向けた情報発信や受入体制の充実に取り組むなど、本県の豊かな自然環境の継承と活用を推進していきます。
 五つ目の政策テーマは「交流」です。
 コロナ禍が明け、県内の延べ宿泊者数はコロナ禍前の水準近くまで回復しています。
 一方で、県内のホテル、旅館などにおいて人手不足が深刻であり、観光産業における生産性の向上は急務となっています。このため、モデル地域を設定し、宿泊と食事の分離や共同送迎、予約データの共有化など生産性向上に向けた試行的な取組を実施するとともに、アメニティコーナーの一元化、宗教などの多様性に配慮した食事への対応などの環境づくりへ支援を行います。
 また、本県観光産業において、十一月から六月までの閑散期や平日の旅行需要の底上げが課題となっています。このため、冬季などにしか見られない絶景や食の情報などを発信するとともに、平日に長期旅行がしやすいシニア層をターゲットとした連泊の旅行商品の造成・販売、オンライン旅行社と連携した個人旅行向けプロモーションを実施します。
 コロナ禍で社会環境が変化し、自然やアクティビティといった観光ニーズが増大していることを捉え、新たな観光コンテンツの開発や誘客対策にも取り組みます。
 本県は体験型観光に活用可能な豊かな自然があふれており、白神、八甲田、奥入瀬地域などにおける定番アクティビティのブラッシュアップと迫力のある映像化や、地域のDMOと連携した連泊につながる体験メニューの開発などにより滞在時間の拡大を図ります。さらに、登山、トレッキング、ラフティングなどグリーンシーズンにおける観光情報の発信と旅行商品造成を強化するとともに、冬季体験メニューの開発や冬季のアクティビティを特集したサイトを開設するなど、アウトドアスポーツを楽しめる県としてのブランド確立を目指します。
 このほか、ウェブ上に青森ファンの会員組織を立ち上げ、会員一人一人のニーズに基づくマーケティングを全県的に推進するための仕組みを構築するなど、DXによる情報発信体制の強化を図ります。また、八万人を超えるフォロワーを持つまるごとあおもりのSNSやインフルエンサーを活用して青森ならではの企画の発信を強化するなど、様々なメディアを戦略的に組み合わせた誘客対策も展開していきます。
 海外からの誘客対策については、外国人観光客数の回復及び増加を図るため、韓国、台湾、香港、中国のほか、オーストラリア、東南アジア及び欧米を対象地域として、本県の認知度等の状況やそれぞれの市場特性を踏まえた知名度向上対策、誘客宣伝活動、消費額向上対策等に取り組んでいきます。
 次に、輸出・海外ビジネスの拡大については、本県の農林水産品の輸出額の九割以上が台湾や香港をはじめとしたアジア地域に対するものとなっており、欧米への輸出額は一割以下と少ない状況となっています。人口減少の進展により国内市場が縮小していく中、アジア市場は今後も成長が続くと見込まれており、輸出のメインターゲットとしてきた東アジア・東南アジアの取組を強化するとともに、欧米に対する取組を推進していく必要があります。
 このため、中小企業者の販路開拓への支援として、台湾においては輸出コーディネーターの配置や食品見本市等でのプロモーションを実施するとともに、香港においては香港貿易発展局と連携したプロモーションやECサイトを活用したデジタルマーケティングなどに取り組みます。また、東南アジアでの更なる販路開拓に向けて、新たに県内企業とのマッチングを支援するコーディネーターを配置するほか、欧米における日本産食材の使用・販売状況、需要見通しやパートナーとなる現地企業の調査分析を行います。
 このほか、「エー・プレミアム」の利用促進や航空機材小型化に対応した輸送スキームを検討するとともに、将来的なトラック輸送能力不足を見据えた海運への利用転換に向けた調査に取り組みます。
 そして、暮らしと交流、経済の循環を支えるのは交通ネットワークです。
 人口減少や車社会の進展に加え、物価高騰や人手不足などの地域交通を取り巻く環境は厳しさを増していることから、デジタル技術の活用や行政と地域の連携による新しい取組を展開していく必要があります。
 このため、地域公共交通の配車アプリやバスロケーションシステム導入などへの支援を実施するほか、複数の交通サービス等をつなぐMaaSの導入促進に取り組みます。また、過疎地域や半島地域における移動手段の確保に向けて、地域と交通事業者と行政が一体となったライドシェアのモデル創出にも取り組んでいきます。
 こうした様々な交通モードの展開により人口減少や超高齢化社会にあっても誰もが安心して移動・外出できる環境の整備を目指していきます。
 また、厳しい経営環境にある民営鉄道については、弘南鉄道弘南線等の維持のため、鉄道設備等の修繕費に対して支援を行う沿線市村などに対し、引き続き支援を実施します。
 さらに、航路については、大間・函館航路は地域住民の生活航路としてだけではなく、広域観光の面や防災上の避難航路として重要な役割を担っており、関係市町村が連携して航路存続を図る取組に対し、県としても令和六年度から五年間の支援を行うこととしました。また、蟹田・脇野沢航路における新船建造に対しても支援することとしています。
 航空路線については、本年一月に青森・ソウル線の定期便が運航を再開いたしました。増加している個別旅行手配に対応したプロモーションの実施や来訪の少ないシーズンにおける商品造成を促進するとともに、路線の維持・定着に向けた県内の認知度向上や若年層を中心とした情報発信に取り組みます。
 また、定期便の再開が望まれる青森・台北線については、訪日メディアと連携したプロモーションや個人旅行対策の強化、団体・個人向けの観光コンテンツやモデルコースの発信を行います。
 六つ目の政策テーマは「地域社会」です。
 人口減少・少子高齢化が進展する中で地域社会をどのように持続させていくか。本県の大きな課題です。
 持続可能で活力ある農山漁村をつくるため、地域経営体を中心とした稼ぐ力のある「あおもり型農村RMO」の育成に取り組みます。
 また、Uターンを中心とした本県への移住促進や関係人口の拡大を図るため、二十歳から三十歳代をメインターゲットとし、青森暮らしの魅力や支援制度について情報発信などを行うこととしています。
 さらに、核燃料物質等取扱税収の増等の環境変化を踏まえ、県内原子力施設の立地及び周辺市町村が行う防災・安全対策、地域振興等対策を支援する交付金について拡充を図ります。また、立地・周辺地域以外の市町村についても、本交付金に組み入れるとともに支援を拡充し、全県的な振興を図っていきます。
 そして、様々な場面でDXの進展が必要とされる中で、安心で快適な生活基盤づくりを進めていくために、企業・団体等の各主体をけん引するような県庁DXを強力に推進していく必要があります。
 昨年十二月に策定した青森県行財政改革大綱に基づき、県民生活の利便性向上と業務効率化を図るため、県庁内の各種業務を再構築するとともに、市町村DXの促進に向けて取り組んでいきます。また、県庁の生産性向上を図るため、ペーパーレス会議システムの導入や庁内無線LANの整備などにより、時間や場所を選ばない柔軟な働き方を推進していきます。
 次に、安全で快適な生活基盤づくりについてです。
 防犯と犯罪対策の強化として、特殊詐欺被害や性被害等の防止に向けた情報発信や住宅等防犯環境の向上を図る防犯診断の推進に取り組みます。
 食の安全に関しては、県の獣医師職員不足に対処するための修学資金貸与枠を拡充し、県獣医師職員の安定的な確保に向けて取り組んでいきます。
 このほか、高病原性鳥インフルエンザについては、昨年十一月、全国初の取組として、佐川急便株式会社との間で備蓄防疫資材の保管・管理・運搬、飲食物の手配・輸送、車両消毒などの業務の包括的なアウトソーシングに係る協定を締結したところです。令和六年度においては、さらにこれを推し進め、発生時における動員者の手配や資材等の在庫確認と発注、作業進捗の伝達などの必要な情報を一元的に管理するため、これも全国で初となる防疫対応システムを構築するとともに、事業者が適切な分割管理や衛生管理を向上させるために必要となる施設整備等についても支援を行います。
 次に、文化とスポーツの振興についてです。
 この春に青森駅の新駅ビル内に青森の縄文遺跡群の情報を一体的に発信する拠点施設がオープンします。オープンを記念したセレモニーを実施するほか、関係市町と連携したイベントを実施するなど、県内構成資産への更なる来訪・周遊の促進に取り組みます。
 また、二〇二六年に本県開催となる国民スポーツ大会及び全国障害者スポーツ大会について、広報・県民運動を展開するとともに、市町村競技施設整備等への支援を行うなど開催に向けた準備を進めるほか、競技力向上に向けた選手・団体等への支援を行います。
 このほか、老朽化している県営野球場について、移転整備に向けた検討を行うとともに、基本計画を策定していきます。
 七つ目の政策テーマは「社会資本」です。
 今回の能登半島地震におきましては、道路が寸断された周辺地域で孤立集落が相次ぎ、また、支援が届きにくい状況も見られました。
 本県においては、これまで災害時に人命を守ることを最優先に「孤立集落をつくらない」、「逃げる」という発想を重視した防災公共を推進してきたところですが、能登半島地震の状況を受け、自然災害に備えたインフラ整備の重要性と必要物資の備蓄など災害時の備えの重要性を改めて認識したところです。
 このことから、本県に最大規模の被害をもたらす可能性のある日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震を想定し、市町村と共同で津波避難訓練等を実施するとともに、国等からの支援の受入れや必要となる備蓄品の内容、数量、保管場所、配送方法等について調査・検討を行います。
 また、公共事業においては、激甚化・頻発化する風水害や地震災害等から県民の命と暮らしを守るため、危険箇所等の防災対策を進めるほか、河川整備等の流域治水に集中的に取り組みます。加えて国の公共事業の対象とならない道路、河川、港湾についても緊急的な安全対策を集中的に実施していきます。
 このほか、下北半島を横断する泊陸奥横浜停車場線の通年通行化や主要地方道今別蟹田線の小国峠区間の平坦化について、事業化に向けた取組を進めていきます。
 そして、水災害については、流域治水を自分事として実践するための県民運動を展開し、ハード・ソフト一体となった取組を進めます。
 産業と交流を支える基盤となるインフラ整備として、下北半島縦貫道路、津軽自動車道をはじめ、本県の産業・交流を支える主要幹線道路ネットワークの整備も着実に進めることとしており、来年度は第二みちのく有料道路のETC整備が完了し、利便性の向上も期待されるところです。
 港湾においては、基地港湾としての機能を備えるため、青森港油川埠頭の整備を進めるほか、津軽港についても洋上風力発電所のオペレーション・アンド・メンテナンス港としての整備を進めることとしています。
 また、建設現場における労働力不足が顕在化していることから、ドローンの活用などICT施工の拡大による生産性の向上を図るとともに、災害現場における情報共有の効率化・迅速化に向けたインフラ分野におけるDXも推進していきます。
 以上が主要事業の内容であり、県民の皆様に対し、これらの施策がより分かりやすく伝わるような情報発信に努めるとともに、市町村をはじめ、あらゆる主体との連携・協働を強化しながら、青森新時代の実現に向けて取組を進めていきます。
 次に、歳入予算の主なるものについて御説明申し上げます。
 県税については、本県経済の動向、地方税制改正の内容等を踏まえ、千四百九十五億八十万円余を計上いたしております。
 地方消費税清算金については、地方消費税の都道府県間における清算金六百八十六億二千八百十万円余を計上いたしております。
 地方交付税については、原資総額の伸び率及び国の算定方針を基礎に、過去の交付実績等を勘案して普通交付税の交付見込額を推計したうえで、当初予算において二千九十七億六千八百万円を計上したほか、特別交付税については、三十四億円を計上いたしております。
 県債については、地方債計画、その運用方針等を勘案して積算のうえ、五百四億百万円を計上いたしております。
 このほか、国庫支出金等については、主として歳出との関連において計上いたしております。
 以上が「令和六年度青森県一般会計予算案」の概要であります。
 このほか、上程されました議案の主なるものについて御説明申し上げます。
 議案第二号から議案第十七号までは、特別会計及び企業会計に係る予算案であります。
 議案第十八号「青森県公立学校情報機器整備基金条例案」は、公立小中学校等の一人一台の情報端末等について、計画的な更新を行うのに要する経費の財源に充てるための基金を設置するものであります。
 議案第二十号「青森県部等設置条例の一部を改正する条例案」は、社会経済環境の急速な変化や複雑化・高度化する行政課題に的確に対応し、県の施策をこれまで以上に効果的・効率的に推進していくため、部及び局の事務を再編し、財務部、こども家庭部等八部を設置するものであります。
 議案第二十一号「青森県地域県民局及び行政機関設置条例の一部を改正する条例案」は、十和田食肉衛生検査所及び田舎館食肉衛生検査所を統合して青森県食肉衛生検査所を設置するとともに、青森家畜保健衛生所及びつがる家畜保健衛生所を統合してつがる広域家畜保健衛生所を設置するなどの改正を行うものであります。
 議案第三十六号「青森県都市公園条例の一部を改正する条例案」は、令和六年四月一日に供用開始となる新青森県総合運動公園の総合体育館の五十メートルプール等の使用料を定めるとともに二十五メートルプールの使用料の額を改め、青森県総合運動公園の水泳場を廃止するものであります。
 議案第五十八号「青森県教育委員会教育長の任命の件」は、青森県教育委員会教育長風張知子氏の任期が来る三月三十一日をもって満了いたしますので、後任の教育長として同氏を再任いたしたく、御同意を得るためのものであります。
 議案第五十九号「青森県教育委員会委員の任命の件」は、青森県教育委員会委員戸塚学氏から来る三月三十一日をもって辞職したい旨の申出があったことから、補欠の委員として中野博之氏を任命いたしたく、御同意を得るためのものであります。
 議案第六十号「青森県監査委員の選任の件」は、青森県監査委員川嶋由紀子氏の任期が来る三月三十一日をもって満了いたしますので、後任の委員として三浦朋子氏を選任いたしたく、御同意を得るためのものであります。
 議案第六十一号「令和五年度青森県一般会計補正予算案」は、先に成立した国の令和五年度補正予算に対応するため、所要の予算措置を講ずるものであります。
 それ以外の議案につきましては、各議案の末尾に記載されている提案理由等のとおりであります。
 以上をもちまして、県政運営に関する基本的な方針を申し述べるとともに、提出議案の概要について御説明申し上げましたが、議事の進行に伴い、御質問に応じ、本職をはじめ関係者から詳細に御説明申し上げたいと思います。
 なにとぞ、慎重御審議のうえ、原案どおり御議決、御同意並びに御承認を賜りますようお願い申し上げます。

過去の議会説明要旨

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