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更新日付:2023年9月29日 広報広聴課

知事記者会見(臨時)/令和5年9月12日/自然環境と再生可能エネルギーとの共生構想

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知事記者会見録

会見日時:令和5年9月12日火曜日 16時45分~17時30分
会見場所:県庁西棟8階中会議室
会見者:宮下知事

○司会者
 ただいまから自然環境と再生可能エネルギーとの共生構想に係る知事記者会見を始めます。
 それでは、まず知事から説明させていただきます。

○知事
 皆さんお集まりいただきましてありがとうございます。
 本県にとって極めて重要な構想について、まず私から簡単にご説明申し上げます。メディアの皆さまには、事前に詳細な資料を差し上げておりますので、ご覧になっていただいていると思いますが、今日はパワーポイントでご説明します。
 まず、この「自然環境と再生可能エネルギーとの共生構想」ですが、その趣旨といたしまして、電力の構造転換が図られている中、再生可能エネルギーの普及拡大が国全体として必要不可欠な状況になっています。一方で、未来世代へと引き継がれるべき自然環境を守らなければならない新たな局面になっていると認識しています。
 持続可能な形で、これらが共存共栄をしていく姿を描いていくことは、極めて重要であり、目指す姿とその前提、ルールづくりについて一定の方向性を示し、そのスケジュールを示すものです。これは関係者だけはなく、県内の市町村をはじめ広く県民の皆さまに提示することで、理解と協力を深めていきたいと考えています。
 まず、目指す姿とその前提ですが、自然環境との共生を前提に、県内の電力需要相当量の全てを再生可能エネルギーによる発電で賄うことが可能な規模の導入を目指していきます。簡潔に申し上げれば、「再生可能エネルギーでのエネルギー完全地産地消」を本県の中で目指していくということです。ただし、自然環境との共生、各自治体関係者、地域関係者との合意、それから地域経済等への貢献を前提といたします。本県は、原子力核燃料サイクル事業も担っておりますので、これらを加えますと圧倒的な電源立地地域、そして電力の供給地域となることが将来目指されることになろうかと思います。
 現状、風力発電(陸上風力)については79万4,146kWの設備容量(いわゆる最大出力)であり全国第1位です。太陽光やバイオマス、水力については、全国の順位は相対的には低いですが、一定程度県内での立地があり、合計で179万5,199kWの設備容量となっています。設備容量ではなくて、実際どれぐらい発電しているかということを見ますと、314万496MWh(メガワットアワー)となっています。県内の電力需要865万3,835MWhに対して、現状は36.3パーセントの発電実績割合ということになっています。
 これに、今後導入が見込まれる「洋上風力発電(日本海南側)確保済み系統容量」と、「固定価格買取制度(FIT)認定済のうち未稼働分」を合わせると約91.1パーセントになるため、この県内での完全地産地消という水準が絵空事ではなく、現実味があるということをご理解いただけると思います。ただ、なお一層進めるということに変わりはありません。いつまでにというのが必ず質問で聞かれると思うのですが、現状いつまでにということは定めておりません。これから基本計画等を定めていきますので、そういう過程の中で議論を進めていきたいと考えています。
 続きまして3つ目、自然環境との共生に向けたルールづくりということで、まず洋上風力や太陽光などについては、自然環境との中で問題が顕在化している部分があると思います。これらは法律上の要件が整っていれば、地域の十分な理解が得られていない状態であっても、事業者は事業に着手することが可能である、というところに問題があると考えており、このための仕組み作りの検討を開始します。
 具体的には、陸上風力、太陽光については、再生可能エネルギーと地域・自然との共生に係る条例等を制定しようと考えています。その中で、再生可能エネルギー施設の立地を禁止するエリアをゾーニングして決めていきたいと考えています。また、この条例の中で、地域との合意形成を円滑にするためのプロセスを制度化していきたいと考えています。
 一方で、禁止するエリアばかり決めても促進はされませんし、先ほどの目標は達成されませんので、市町村による促進区域設定を支援したいと思います。これは温対法(地球温暖化対策推進法)による促進区域のことだと理解してください。
 それから、脱炭素社会に向けた取組も進捗させていくため、エネルギーの地産地消を進め、自家消費型の再生可能エネルギー設備等の導入を促進します。これらは、来年度の本格的な予算の中で事業化を図っていきたいと考えています。
 条例については、令和6年度中の制度構築を目指し、現行の環境影響評価制度と併せて、地域・自然との共生を実現していきたいと考えています。
 続きまして、洋上風力については、ルールづくりとして、まずはいずれの海域でも、地元と漁業者など関係者の理解と適正な手続きを踏まえることが前提になると考えています。こうした考え方から一般海域については、既に再エネ海域利用法に基づく指定や、公募手続きを経た上で実施されるということがルール化されています。
 また、港湾区域についても港湾法に基づく占用公募制度の手続きがありますので、これを経れば公平公正な形で事業が実施される環境が整っています。
 ただ一方で、漁港区域については、大型の洋上風力という部分での占用制度ということが準備されていない、あるいは占用に当たっての基本的なルールがないという状況でありますので、新たな占用許可基準を制定し、一般海域との、あるいはその港湾区域との並びが取れるような形でのルールづくりをこれから進めていきたいと考えています。
 続きまして、洋上風力について、青森港の基地拠点港としての整備は青森市と強力に連携をして、国による早期の指定と整備を目指していきたいと考えています。
 また、津軽港についても、オペレーション&メンテナンス港としての積極的な利用を推進していきたいと考えておりますし、関係自治体のサポートをしっかりとしていきたいと考えています。
 それからルールづくりの3つ目ですが、再生可能エネルギーに係る新税、法定外税の創設の検討を開始します。再生可能エネルギーの推進と立地地域となる本県の共存・共栄を図ることが重要であると申し上げてまいりました。当事者である事業者の理解と協力の下、事業者とともに本県の豊かな地域資源を作り上げていく新たな枠組みの一つとして、再生可能エネルギー全般について、新税の創設の検討をしていきたいと思います。全般と言っても、まずは陸上風力発電を対象に、法定外普通税とすることを視野に年度内に検討していきます。また、その他再生可能エネルギーについても、陸上風力発電についての検討を踏まえつつ、年度内に検討を進めていきます。
 スケジュールについては、今申し上げていた部分もあり重複しますが、陸上風力あるいは太陽光などについては、地域・自然との共生条例の検討を直ちに開始し、令和6年度中に制度が完成できるように取り組んでいきます。洋上風力については、漁港区域内の占用許可基準について検討し、今年度中に制定をしていきたいと思います。新税についてはその可否も含めて今年度中に検討をして結論を出していきます。
 最後にまとめでありますが、青森県の持つ雄大で深甚な自然環境は縄文時代にまでさかのぼり、私たちの生活を大いに支えてきました。農林水産県であることの基盤になっているのもまさにこの自然であります。次世代へこの美しい青森の自然を残すということも私たちにとって非常に重要な使命でありますし、そうした自然環境と共生するためのルール作りの下、現在生きる我々のための電力、そして将来にわたって必要な電力としての再生可能エネルギーの立地を促進することも必要なことだと思っています。これだけ暑い夏が続きましたから、やはり電源というものも、再生可能エネルギーにして、地球環境に貢献するということも青森県として必要なことであると考えています。これらをしっかりと両立していくことにこれから取り組んでいきたいと思いますので、県民の皆さまにおかれましては、ご理解とご協力をよろしくお願いいたします。

○司会者
 それでは質疑を行いますので、質問のある方は挙手をお願いします。

○記者
 新税についてお伺いします。再エネの新税という意味では、宮城県で制定された条例がございまして、それは森林開発を抑制する意味合いを持つと聞いております。今回、知事がお考えの新税というのは何らかの抑制や規制の意味合いを持つものなのでしょうか。

○知事
 規制の意味合いを持たせるかどうかということについても、これから検討していくということでご理解ください。宮城県を参考にするかどうかも含めて検討していきたいと思います。

○記者
 関連して、法定外普通税ということですが、この新税の使途を知事はどうお考えなのでしょうか。

○知事
 環境保全、それから再エネの推進ということに使っていくということはもちろんですが、次世代を担う子どもたち、子育て支援、それから教育にも使っていくということになろうかと思います。また、高齢者の居場所作りとか、高齢者対策にも使える財源になってくれるのではないかと考えています。
 ただ、その規模等については、検討の中で明らかになっていくものですので、なかなか今の時点でこういうのに使いますということは言えませんが、普通税として使うなら、例えばそういうことがあるということで例示をさせていただきました。

○記者
 関連して、再エネの条例を巡っては、他県では事業者が猛反発している事例もございます。今回も税を課すということで、事業者の反発をはじめ、再エネ促進の足かせになるような懸念というのはないのでしょうか。

○知事
 まず、再エネ促進の足かせになるということは想定していません。なぜならば、冒頭申し上げたとおり、私たちはこれから再エネを促進し、本県の中において、完全地産地消を目指すという大きな方針があるからです。
 もう一つ、事業者の反発というところについて、私は、現状、都会の電力のために青森県の自然が搾取されていると受け止めています。青森県の自然を利用して利益を得ている会社があり、その構造とか構図とか、どれぐらい儲かっているかということを今この場で言える人は多分いないと思います。報道機関の皆さんや我々も含めて、県民の誰もわからないという状況です。
 一方で、そういったところは基本的に本社のある地域で税金を納めているという構図になっているはずです。これらをトータルで考えるとやはり青森県の自然が都会の電力のために搾取されている構造があり、一方で税という部分では少し専門的になるのですが、水平的財政調整がこの電源ではまだ図られてないはずであり、それにチャレンジをするということです。
 もう一つ今の質問に答えると、大事なポイントとして、税を成立させるためには法定外税にはきちんと要件があって、一つには特定納税義務者の過大な負担にならないこと、それから物流に重大な障害を与えないこと、それから国の経済政策に照らして適当なこと、という要件があります。これに当てはまっていれば税として徴収できるわけですから、しっかりそういった法的なことを満たすような税制にすれば、特に事業者との関係でもあるいは再エネ促進との関係でも問題はないと理解しています。

○記者
 恐縮ですがもう一点お願いします。陸上風力発電をまず想定しているということですが、既存の設備にも課税する可能性を考えていますか。

○知事
 それも可能性としてあると理解してください。

○記者
 洋上風力の関係ですが、実際に現在、漁港区域での風力の立地計画というのが中泊町の小泊で進んでいまして、当然この新しい占用許可基準の設定はそのあたりを意識したものになって作っていくと認識しているのですが、それでよろしいでしょうか。

○知事
 はい、そのとおりです。

○記者
 実際にこの占用許可基準を制定した後で、自動的に小泊の事業が規制されるようなことは可能性としてあるのでしょうか。

○知事
 そもそも占用許可の申請がない状況ですので、その仮定の話というのは現時点ではできかねます。

○記者
 わかりました。それと漁港区域においては再エネ海域利用法に基づく計画など他の公共性の高い事業のための占用等計画に支障を生じるというふうなことがないようという表記がありますけれども、具体的に港湾区域とか一般海域とか隣接するところでやっているその計画に対する影響と認識しているのですが、実際に支障が生じる事態というのはどのようなことを想定しているのでしょうか。

○知事
 適切な競争環境にならなくなる可能性があるということではないかと思っています。先行して、例えば1地域に洋上風力が立地していて、その後近くの海域で再エネ海域利用法に基づく促進エリアが決められた時に、先行して入っているところが、再エネ海域利用法の方でも有利な状況になってしまうのではないかということです。そうすると極めて公正性に欠く事業の推進になってしまうのではないかという懸念があります。

○記者
 わかりました。以上のことを踏まえて、実際に日本風力開発という小泊地区で町と一緒に事業を行おうとしている会社が東京地検の捜査を受けている段階で、事業そのものがどうなるのか現時点ではわかりませんけれども、県としての小泊にも今進んでいる事業に対してのスタンスを、一言聞かせていただければと思います。

○知事
 今回の措置は個別の会社をターゲットにした措置ではありません。県全体の方針をあらゆる角度から検証し、今後進むべき一定のルールを定めるというものですので、特定の会社の現状や今後については、この場で語るべきことではないと考えています。

○記者
 新税についてお伺いします。この対象となりうる再生可能エネルギーなのですけども、基本的には、洋上を除く陸上風力と太陽光というふうに理解してもよろしいですか。

○知事
 太陽光そのものがどれだけ今環境に負荷をかけているか、これから負荷をかけていくかということについては、計画をこれからよく考えていかなければいけないので、まずは陸上風力から検討するということで理解してほしいと思います。

○記者
 洋上風力も対象になる可能性はあるのでしょうか。

○知事
 これは現時点ではないというふうに理解してください。

○記者
 あと一応確認なのですが、家庭用の太陽光とかは対象にならないのでしょうか。

○知事
 もちろんなりません。

○記者
 はい、あと小規模なバイオマスですとかそういったものはならないのでしょうか。

○知事
 なりません。大規模な開発を伴うものだけと理解して下さい。

○記者
 わかりました。ありがとうございます。
 あと、今回こういった新税を検討される背景をお伺いしたいのですが、例えば洋上とかですと、国で定めたルールの中で基金の額が決まることもありますが、陸上においては、その地域にどれぐらい還元されるかというのは事業者次第のところがあったかと思うのですが、そういったことも新税を検討される理由の一つとしてあったのかということをお伺いします。

○知事
 そのとおりです。
 結局、再生可能エネルギーというのは、見かけ、あるいはその呼び方、イメージ、それから今までのさまざまな対応というものは、何の疑問もなく良いものだとして私たちは進めてきたのだと思います。これだけ暑くなっていて電気を使用するようになっていることから、化石燃料に頼らない発電は良いものだと思ってきました。ところが一方で青森県の現状を見れば、自然環境の破壊ということが、すごく目につくようになってきた発電になっているということだと思います。私たちが失われたものと、これから取り返していかなければならないものとのバランスを考えた時に、これは税という手法が今検討すべきものなのだろうと考えましたので、今回検討を開始するということでお話をさせていただきます。

○記者
 一点、ゾーニングの方でお伺いしたいのですけども、今回まず禁止すべき区域を県の方で検討するということですけれども、具体的には禁止すべきエリアの判断基準と景観、自然、環境そういったところがまず中心になるという理解でよろしいでしょうか。あるいは市街地に近いとかそういった住環境的な部分も出てくるのでしょうか。

○知事
 これはまず風力と太陽光はおそらく違うと思います。少なくとも風力については、例えばですが、自然環境の中でも根幹に当たる水循環だとか、あるいはその生態系への影響があるエリア、これを特定しなければいけない。それからもう一つはやはり景観というエリア、これも考えなければいけない。さらには信仰とか、地域が大切にしてきたもの、みたいな話ももしかしたらあるかもしれない。ですからそういう範囲を私たちも禁止するエリアの保護法益と言うのですけれども、守らなければいけない価値というか、そういうものをこれからしっかりと考えてエリアを特定していくということになるのだと思います。風力については、住宅街に建つということはそもそも想定してないので、それはいいのですけど、例えば太陽光だとすると、それに加えて、居住地との隣接性とか、そういったものももしかしたら禁止エリアの一つの基準になっていくのかなと考えています。ただその辺は専門家の皆さんともよく議論しながら考えていくべきことだと思います。

○記者
 関連してもう一点、ポジティブな方というか、促進したい区域というのはあくまで県というよりは、市町村が決めていくということでしょうか。

○知事
 温対法という法律があって、その促進エリアを決めるのが市町村だという整理がなされていますので、まずその市町村が決めるエリアについて、さまざまなお手伝いをしていくという扱いになろうかと思います。

○記者
 私も税金、再エネ税のところでまず伺います。先ほど課税対象については大規模な開発を伴うものにするとおっしゃいました。では具体的に大規模な開発を伴うものがどういうものなのかというところになってくると思うのですが、別途進められる例えばゾーニングだとか促進地域の設定と連動してくるものなのでしょうか。つまり、促進地域であれば課税しないとか、ゾーニングのある区域であれば課税しないがこちらの区域だとするとか、そういうイメージになっていくのでしょうか。

○知事
 まず大規模の要件もこれからですし、それからゾーニング条例との関係もこれからしっかり考えていきたいと思います。

○記者
 それから同じく税の話ですが、少し質問の趣旨が変わりまして、先ほどの質問で今回の税金に規制の意味合いを込めるかどうかというところ、それも込めるかもしれないというようなご発言があったかと思うのですが、そうすると基本的にはこの税金は本県で再エネ事業をしようとしている事業者に対して県財政に対する貢献を期待するという趣旨の税金だと理解したらよろしいでしょうか。

○知事
 税金というのはそういうものです。質問の意図がよくわかりませんが、税金というのはそういうものですし、規制のためにという側面もあれば促進のためにという側面も両方あるものだと思います。

○記者
 私がこの質問をしたのは、宮城県の税金が基本的にはその税収を期待しないという、できれば税収がゼロになるようにしてほしいというような趣旨の税金だったもので、ご質問したという次第です。
 それからもう一問だけ、少し趣旨が変わって、今回のご提案いただいた各項目いずれもその前提に地域の理解を得ていくということが大前提かと思います。ただ一方で、この地域の理解があるかないのかというのを判断するのは非常に難しい問題だと思うのですが、何をもってその前提がクリアされると考えていくのでしょうか。これがお示しいただいた合意形成のプロセス制度化というところと連動していくものなのでしょうか。

○知事
 代議制民主主義ですから首長や地方議会の同意やさまざまな合意というものが前提になると思います。

○記者
 ゾーニングに関連してお伺いしたいのですけれど、知事のご説明で、陸上風力と太陽光などを対象にというお話だったかと思うのですけれども、この他の例えば地熱であったり、バイオマスであったり水力といったそういったところの再エネについてもゾーニングの検討には含まれてくるのでしょうか

○知事
 それらは県内でそんなに進んでいませんので、まずしっかり進んでいるところから検討していくということで理解してください。

○記者
 いずれは含まれていくのでしょうか。

○知事
 それも含めて今回税制を検討していく過程の中で考えていきたいと思います。

○記者
 わかりました。ありがとうございました。
 もう一点ですが、このゾーニングの条例を制定、検討していくに当たって、先ほどの知事のご説明で専門家等の意見も踏まえてというところをおっしゃっていたかと思うのですけれども、その検討する、例えば委員会なのか協議会の中に、地元の事業者や関係者がメンバーとして構成されることはあるのでしょうか。

○知事
 それはないと思います。それは純粋に法的な検討になりますので、それにふさわしい有識者が選ばれるというふうに理解をしています。

○記者
 新税のところなのですが、若干繰り返しになって恐縮なのですが、知事は先ほど今回の税のお話をされている時に、水平的財政調整のお話をされましたが、そのことからすると、今回の新税の目的として、今回、電力の需要地、つまり恩恵を受けている都市圏と青森の財政の自治体間の公平性担保というか、公平性を保つというのも目的の一つと考えていいのでしょうか。

○知事
 そのとおりです。大体私たちはそのことについてはすごく慣れているというか、なじみのある制度なのです。つまり電源立地があれば交付金みたいな世界観というのはあると思うのですが、再エネはそういうのは基本的にはないわけですよね。これだけ自然環境との関係で負荷がかかっているということなのです。それで、「Not In My Backyard」という言葉がありますが、要するに自分のお庭のところに来て嫌なものについては、交付金だとか補助金がたくさん得られると、その典型が原発だとか核燃サイクルだというふうに言われているので、そこはそういうものがある。でも今回、再生可能エネルギーをこれだけ県内で進めていくということは、ちょっとそういうことになりつつあるということなのだと思います。
 国全体の再エネの促進について足を引っ張るつもりは全くなくて、私たちが明らかにしたいのはその電力、風力発電の会社そのものの収益構造や、そのことによって、まだ地域貢献をしてもらえる可能性があるのではないかということを突き詰めて考えていきたいということなのです。その結果、税としてそれが現れてくるということなのだと感じます。

○記者
 今のお話から派生して2点聞かせてください。
 一つは、その趣旨からすると、今回県内で事業を行う再エネ事業者は陸上風力に関しては全ての事業者が対象になるという理解でよろしいでしょうか。

○知事
 いや、小規模で環境に負荷をかけていないようなところまでは対象にはならないのではないかと思いますが、そういうところもよく整理します。
 ですから大規模という要件とか、あるいは自然環境に負荷をかけている要件とか、いろんなことがあるのと思うので、そのあたりを整理して課税の対象となる事業者、税目、税率とか、そういったことを検討していきます。

○記者
 最後に一点、今、知事の方から「Not In My Backyard」でしたか、自分の庭に来たら嫌だというお話がありました。そのお話からすると今回の構想の話を少し超えてしまうのですけれども、今回青森で税がかかるといって他に行ってしまうという事業者が出てこないとも限らないというふうに思うのですが、知事としては全国知事会であったりとか、知事会を通しての国であったりとか、都市圏と地方の再エネ上の不公平をなくしていく、そのような働きかけをしていくというお考えはありますでしょうか。

○知事
 そこまでは今の時点ではなくて、どちらかというと、この税があったからといって事業が進まないってことはないのだと思います。それはつまり、事業をやるにあたっての適切な環境があるかどうかということで事業が進むわけですから、そしてこの税制は何も過重に、罰則のような感じで、負荷をかけるわけではないわけです。あくまでも過重な負担にならないようにとか、物流の支障にならない国の経済政策、まさにエネルギー政策も含めての経済政策の足かせにならないようにという要件をクリアした形での税制になるわけですからそういった本県で進まなくなる、あるいは全国で進まなくなるという懸念は、今の時点では考えていません。

○記者
 新税の関連でまた伺います。先ほど新税の可否について年度内に結論を出したいということでしたが、可と判断された場合のその後のスケジュール、知事としてこの新税導入の目標時期みたいなものはお持ちなのでしょうか。

○知事
 その時にしっかり考えていきたいと思います。どういうふうにやるかということが決まれば、課税の難しさだとか、どれぐらいの手続きが必要だとか、どういう検討が必要だとかが明らかになるので、年度の後半には今後のスケジュールを明らかにしていきます。

○記者
 もう一点、この新税の検討は、有識者会議等を設けて行うのでしょうか。

○知事
 まずは内部で行うということになりますが、実際導入に当たっては、有識者会議等は必要だと理解をしています。

○記者
 それは23年度内の検討の後の話ですよね。

○知事
 後の話です。

○記者
 知事の発言で、自然環境破壊で失われたものが出てきたという発言がございました。それと税収というのは宮城県のようにゼロでもいいというわけではないように感じたのですが、年間の税収の見通しの規模感を伺います。

○知事
 よく検討させてください。

○記者
 ちょっと話が変わって、県内の発電実績等が先ほど示されて、県内の1年間の需要分の規模を目指したいというお話がありましたけども、FIT認定分とかも含めると今計画があるもので既に90パーセントぐらいに達するものが予定としてはあって、そうなると何かもう大規模なものというのはあまり必要ないのではないかという気も少しするのですが、その辺についてのご認識というのはいかがでしょうか。

○知事
 FIT認定を受けているとはいえ必ずしも整備に100パーセントつながっているということではないですし、今後どういった形で、どういったところに太陽光やあるいは風力発電が立地するかということは私たちにはコントロールできないので、大規模開発が出てきた時には非常に重要な目安ですし指標だと考えています。

○記者
 全体の話になるのですが、今回このような構想を作りたいというふうに思った背景について現行制度への言及も少しありました。この現状の環境影響評価の制度について不十分だと思ってらっしゃるからこういうことになったと思うのですが、具体的にどこが欠けているというふうにお考えでしょうか。

○知事
 まず環境影響評価というところに関して言えば、環境影響評価は事業を推進するためのセルフコントロールに過ぎません。ですのでまず第一に、環境そのもののことについては評価項目の中にある部分についてはできる。ところが私たちが青森県内で青森県民が大切にしてきたのはその項目にない部分も当然あるわけです。景観ですとか信仰ですとかそういったことはあるわけで、あるいはその不安というところもあるわけです。もう一つ言うと、その評価項目を超えた部分というのはすごくあるはずだと思っています。
 それともう一つは、地元の合意形成プロセスというものが基本的にはないということだと思うのですね。事業を実施するかどうかというところの入口で、環境影響評価書の取り扱いについて意見を言うことはできたとしても、やるかやらないかについて意見を言えるという環境は自治体にも住民にもない。その辺りが今の現行制度との関係で大規模な自然開発を伴う風力発電の制度上の欠陥ではないかと私は捉えています。

○記者
 今後、知事や市町村長が環境アセスの中で、例えば是非を、許認可の権限を発揮できるような制度というのを国に求めていくなどの意向はございますでしょうか。

○知事
 求めてやってくれるのだったらやりますが、求めてもやってくれないので、自分たちでルールを作ってやった方が良いと思います。今までの日本の、地方と国の政治の歴史を見ても、どっちが先かという話はいろいろとあって、例えば情報公開については、地方の条例が先行して国の制度ができたということがありました。今回も問題意識を持っているのが全国でどれぐらいあるのかというのも承知していませんが、結構聞こえてくるようになっています。宮城の蔵王で風力発電をやろうとして駄目になったところがあったり、各地でそういうことが起こり始めていますが、それを全国のウェーブにできるかどうかというところまではわかりません。だから今それを要望するよりも、むしろ自分たちでルールを作って、国に先行して再生可能エネルギーが本当に推進されて、そして自然を守られる環境を青森県で先に作ることが我が国にとって非常に重要なことだと思ったのでこの構想を発表させていただいています。

○記者
 先ほど税について有識者会議等は県で検討をした上で、その後作るかどうかも含めて検討していくというお話だったのですけれども、今回出た新税と条例と洋上のところに関しては県庁内でチームを作ってやっていくものなのか、どのように事務方で検討をしていくのかということで、今把握できるところがあれば教えていただきたい。

○知事
 内部のことに意味があるかどうかよくわからないですが、もう既にチーム的な形の中でこの構想も作っていますし、これからも進んでいくと思っています。具体的に何かチームを作るかどうかということについては特に考えていません。

○記者
 組織改革の中でというところで関わっているのかなと思ったのですが、そこは関係ないということですね。わかりました、ありがとうございます。
 あと先ほど知事のお言葉の中でも失われた自然環境というところがありましたけれども、知事が知事選の時にもおっしゃっていた、みちのく風力に対しての撤回という流れもくんだ上での今回の共生構想という理解でよろしいでしょうか。

○知事
 そのとおりです。みちのく風力については、すぐに諦めてもらいたいですね。

○記者
 宮城県の例を出して恐縮なのですが、宮城の場合は課税の対象を、課税の仕方というのが売電価格に応じた形で課税する見込みで今進めていますが、青森県の場合、売電価格だったりあるいは開拓する際の面積だったり、何かイメージされているものはあるのでしょうか。

○知事
 イメージしているものはたくさんありますけど、ここで言うといろいろと予断を持って皆さんに伝わってしまいますので、課税対象についてはよく議論を踏まえた上で、課税するかどうかも含めて、する場合にはそういったこともしっかり発表していきたいと思います。

○司会
 それでは、最後に知事の方からお願いします。

○知事
 八甲田の風力開発というものが、私たちに投げかけたことは非常に大きかったのだと思っています。今を生きる私たちにとって、あるいはこれからの次の世代にとって、電力というものが大事だということは間違いありません。これだけ暑い夏になっていますし、冬はご承知のとおり雪に囲まれてものすごく寒い青森県ですから、安くて安定した電力が大切だというのはそのとおりだと思います。
 ただ一方で、過去から守り続けて必ず次の世代につないでいかなければいけない大切な自然というのも私たち青森県にはあると思います。このバランスがすごく大事なのだと思っていて、八甲田については、さっきも言ったように白紙撤回の基本方針は変わりませんし、すぐに諦めてほしい部分はあるのですが、それでは全体はどうするのかということを、やはり今この瞬間、このタイミングで考えないといけないのだと思っています。
 ですから今回の構想を通じて、美しい雄大で深甚な青森県の自然を残して、一方で再エネも推進していけるように取り組んでいきたいと思っています。
 本当に青森県の自然が搾取されていくようなこの環境は何とかしていきたいと思っています。この一点でしっかり取り組んでいきますので、ぜひとも県民の皆さまにおかれましては、ご理解とご協力をよろしくお願いいたします。

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