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更新日付:2013年3月4日 県民活躍推進課

青森県女性ロールモデル 佐藤惠子さん

自分の正直な気持ちをみつめ、勇気を持って一歩踏み出す。そうすれば必ず道が開けてくる。

佐藤惠子さん
青森県立保健大学社会福祉学科 教授
佐藤 惠子さん(弘前市)

【プロフィール】 
 大学院修士課程修了後、出身地である名古屋市で就職。結婚を機に仕事を辞め、夫の仕事の都合で弘前市へ移り住み、専業主婦となる。1990年~弘前学院大学非常勤講師、1992年~弘前学院短期大学教員を経て、1994年~青森県立保健大学教員となり現在に至る。

  • 専門分野 女性学、女性問題、女性福祉
  • その他 青森県男女共同参画審議会前会長(2000年4月~2012年2月)、特定非営利活動法人ウィメンズネット青森副理事長、特定非営利活動法人青森県男女共同参画研究所監事 ほか

佐藤惠子さんの主な分野 「就業・キャリアアップ」「NPO・ボランティア」「専門職・研究職」

チャレンジのきっかけは?

専業主婦から自立の道へ

 学生時代、大学院の修士課程から博士課程に進学するかどうか悩んだ時に、当時は女性の研究者も少なく、また強力な男性ライバルもいたことから、受験を断念し就職しました。その後、大学院の先輩であった夫と結婚し、仕事を辞めて夫の赴任地である弘前市に移り、全く知らない土地で専業主婦として生活を始めました。

 1年後に長女を出産しましたが、難産だった上に身近に頼れる人もなく、子どもは一日中泣いてばかりで睡眠不足が続き、私は精神的に不安定になりいわゆる育児ノイローゼになってしまいました。子育てをつらいと感じる自分が情けなく、何とか良い母親になろうと頑張ってもうまくいかず益々追い詰められるという日々が続きました。夫に苦しい気持ちを訴えても、母親であれば子育てするのが当たり前と思い込んでいてなかなか理解してくれず、夫への不満も大きくなっていきました。今振り返ってみると、あの当時の私は、とにかく「どうしてこんなに辛いのか、このままではとても生きられない、何とかこの状態から抜け出したい」という思いで一杯だったように思います。

 そうした状況に、風穴をあけるような二つの出来事がありました。

 一つは、県の家庭教育相談委員にならないかというもので、3歳の第1子をもつお母さんに子育てアドバイスをするものでした。当時私は1歳児の母親で、先輩ママにアドバイスなどできる状況ではなかったのですが、大学院の恩師からの紹介だったこともあり、状況を変えるために何かやりたかった私は、思い切って受けることにしました。
 
 もう一つは、同じ病院で出産した方が近くへ転居してきて、8カ月ぶりに再会して交流するようになったことです。
 
 また、その時に一冊の本との出会いもありました。当時の男性教育者(専門家)による育児書は、とにかく母親が頑張らなければいけない、こうしなければいけないなどと母親を追いつめるようなものばかりでしたが、その本は、女性の心理学者によるもので、子どもは母親の力だけで育つわけではない、子ども自身の生きる力を信じて多くの人が見守ることが大切など、母親たちの不安をやわらげ、気持ちを軽くする言葉にあふれていました。なかでも、子どもの自立と母親の自立は同時進行で、本当の意味で子どもを自立させるためには、母親自身が自立に向けて努力しなくてはいけないというメッセージは私に強いインパクトを与えました。

これまでのみちのり

人との出会い、そして女性学への道

 子育て相談事業に関わって、自分自身も悩みながら、一方でアドバイスする立場として自分の考えを客観視できる訓練、機会を与えてもらったと思います。当事者の立場から共感しながら励ますという経験を通して、自分の状況を客観的に見つめることができたと同時に、どれほど励まされたか知れません。

 また、この時期、たくさんの方たちとの出会いがあり、その中に私の恩人とも言うべき方がいました。その方は、当時社会教育主事として、子育て相談と同時に婦人教育の方も担当されていました。私が子育て相談の場で、盛んに母親の自立を訴えていたので、私の考え方が婦人問題解決の取組にマッチしていると思ってくださったのか、国立教育女性会館(ヌエック)での研修や、婦人教育研修の講師などに誘っていただきました。例えば性別役割分担の問題点など、話には聞いていたけれどよく分かっていなかったので、成人女性を対象にいざ話すとなった時に猛勉強したのが、女性学との出会いです。直接、その方が女性学そのものを紹介してくださったわけではありませんが、一歩踏み出したところで、出会いがあって、次のステップへと道が開かれ、そこで女性学と出会って“これだ!”いう感じです。

 その後、ヌエックの女性学講座に自分から出かけるようになり、ほとんど独学のような状況でしたが、当時、県内で女性学に関わっている人がいなかったこともあり、講師などのたくさんのチャンスをいただきました。その都度、自信がなく不安はありましたが、とにかくやってみようとチャレンジしてきました。それは、夫の後押しがあったこともありますが、もう一つには、大学院時代にチャレンジせずにあきらめたことが心に引っかかっていて、自信はないけど、やってみてダメだったと思う方が、やらずにいるよりはずっといいと思ったこともあります。そうしてやってみたら次の道がひらけてくる、その繰り返しですね。
 
 そうしている中で、PTA活動で知り合った弘前学院大学の先生が、これからは自立した女性の生き方を学ぶための『女性論』という科目が必要だということで、担当できる教員を探していて、私に声をかけてくださいました。それが最初の教員としての仕事です。その当時は、全く新しい科目なので講義ノートもなく、明日の講義の分を今日つくるという感じで、それまで近代女性史や生活論、家族論、女性差別論など様々な本を読んでいたのが全部役に立ちました。ここでもやはり、一つの出会いがきっかけになっています。

自分の役割

 大学教員の職を得られたことは、自立をめざす私にとって幸運なことでした。でも当時から私は、研究だけに専念するような研究者になりたいとは考えませんでした。私が専業主婦になって直面した困難は、この社会の仕組みが原因で生じている女性問題であり、その女性問題を解決する取り組みに参加することが同時に私自身の自立した生き方につながるのだと考えていました。そして、後に続く若い女性たちにも、自立した生き方をめざしてほしいし、そのために社会の中での女性の現状や人生の選択において考えるべきことなどを、私自身の経験に基づく生きた知識として伝えたいという思いもありました。大学の教員としての立場は、その点で非常に有意義だったと思います。

 大学教員になって20年になりますが、私がこれまでやってきて、これからもやりたいと考えているのは、女性問題(男性問題)の解決をめざして、女性学や社会福祉などの専門分野の枠を超えて、女性と男性が平等・対等で共に個人として自立して生きることができる社会の実現に向けて実践と結びついた研究や教育に力を注ぐことです。

学生と話す佐藤惠子さん

自立と家族

 結婚して家族を持っている女性が、自分でやりたいことをして自分らしく生きたいと思った時、離婚を考えることもあると思います。でも私は、それは、本当に望ましい選択とは言えないし、現状の女性を取り巻く問題の解決にはならないと思います。自分の今いるところを少しでも変えていくということをしなければ、本当の解決につながらないし、自分の自立にもつながらないと思います。

 私は、自分の思っている悩みや不満をまずは夫にぶつけました。最初は夫も面倒くさがったり怒ったりして、お互いぶつかり合って言いたいことを言うのですが、あとで冷静になるとあっちの言うことも一理あるなとお互いが思うわけです。そうやって、ぶつかり合うことによって少しずつ気持ちが通じ合い、お互いを理解し尊重することができるようになり、やがてお互いがかけがえのないパートナーになっていくのだと思います。今では、夫は、私にとってかけがえのないパートナーです。傷つけ合うことを恐れて、普段からぶつかり合うことを避けていると、何かあった時に爆発してしまい修復できないような状態になってしまうのではないでしょうか。

 自立というのは孤立ではないので、一人だけで幸せな生活、満足する生活はできないと思います。自分がそういう生き方をしたいと思ったら、自分のまわりの大切な人たち(夫や子ども)に自分の思いを伝えて支えてもらうとともに、自分もその人たちが自立できるように支えるというように、お互いが支え合う関係、自立を尊重し合う関係をつくるということが一番のポイントではないでしょうか。

現在の活動状況や今後の目標について

今後の活動について

 今、携わっている2つのNPO活動を、両方とも継続していきたいと思っています。特に、DV被害者支援では、実際にサポートを必要としている女性の方たちに必要な支援を届ける活動を、継続的にできるようにしたいと思っています。地道な活動ですが、なくしてはいけないし、続けていかなくてはいけない活動だと思うので、それをやっていきたいです。

 また、子育て支援では、これまでのような、子育てそのものや母親の孤立解消に向けた支援だけではなく、男女共同参画の視点を入れて、母親の自立を支えるような支援が必要だと思います。妻や母親になったからといって、自分らしく生きることを後回しにしたり、犠牲にしなければいけないこと自体がおかしいですし、母親になっても自分は自分なので、むしろ自分の人生の中に出産とか子育てを位置付けるべきで、そのための支援という視点ですね。母親であっても自分らしく生きることができるような、そういう子育て支援のあり方をもっと広めたいというか、問題提起したいと思っています。

これからチャレンジする女性へのメッセージ

これからチャレンジする人へ

 一人一人の女性が自分と向き合って、自分の人生の主人公は自分だということを自覚しながら生きていってほしいと思います。そういう女性が増え、それが当たり前になることで社会が変わるし、当然、パートナーも変わると思いますね。女性だけが幸せということではなく、男性も幸せ、みんなが幸せでないと。そして、先輩の女性は後に続く女性を励まし、甘やかすのではなく支えたいですね。

 あまり頑張ってとは言いたくないですが、無理をしないように、迷ったら前へいくという感じでチャレンジしてほしいですね。どうしようかと迷ったとき、まわりの条件があまり良くないからやめておこうかではなく、待っていても条件はよくならないので、まず自分の気持ちにしっかり向き合い、やってみたいと思ったら、成功するかどうかわからないけどやってみる、やってみるとまた次の道が開けると思います。

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県民活躍推進課 男女共同参画グループ
電話:017-734-9228  FAX:017-734-8050

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