知事記者会見
知事記者会見(定例)/令和7年7月31日/災害対策本部会議および庁議報告ほか
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知事記者会見録
会見日時:令和7年7月31日木曜日 11時00分~12時25分
会見場所:県庁西棟889会議室
会見者:宮下知事
〇幹事社
ただ今から、定例記者会見を始めます。
まず、知事から報告をお願いします。
【第3回青森県災害対策本部会議について】
〇知事
第3回青森県災害対策本部会議について、今般の津波に関するご報告を申し上げます。
まず、地震の概要を振り返ります。昨日午前8時25分、カムチャツカ半島付近でマグニチュード8.7の非常に大きな地震が発生し、8時37分に津波注意報が発表されました。
当初は注意報でしたので、私自身は次の公務に向かっていましたが、約1時間後に津波警報へと切り替わったタイミングで本庁に戻り、今まで対応を継続しております。
その後、午後8時45分に津波警報が解除され、津波注意報へと切り替わりました。そして本日午前10時45分、陸奥湾および日本海沿岸の津波注意報は解除されましたが、太平洋側については津波注意報が継続しています。
観測された津波の最大値は、むつ市関根浜で40センチ、六ケ所のむつ小川原港で40センチ、八戸港で80センチとなっています。こちらは気象庁や国土交通省港湾局の観測地点での記録です。
八戸市の波の状況を見ますと、オレンジの線が通常の潮位で、青の線が実際の潮位です。これを見ていただくと、第一波と言われるあたりよりも、回を重ねるごとに少しずつ大きくなっているのが分かります。また満潮時には、赤い線の高潮警報基準を超える瞬間もありました。
このことから、津波のメカニズムについて、改めて学ぶところがあったと考えております。
今回の津波は40~80センチの範囲であり、現時点で人的被害や住家被害、重要施設の被害は報告されておりません。
現在、10市町村で避難指示等を発令しております。こちらの資料は午前6時時点ですが、先ほど確認したところ変わりはないとのことです。
本日午前10時過ぎ、市町村長には災害対策本部の状況をお伝えしました。注意報に切り替わり、終息に向かっている状況にあることから、沿岸部へは近づかないということを前提に、沿岸部以外の地域については、通常どおりの経済活動について判断して良いタイミングにあるのではないかとお伝えしました。
避難所については、現在6市町村で49か所が開設されており、23名の方が避難しています。昨日から今日にかけて、最大2,637名の方々が避難されました。
交通機関の状況ですが、JR、青い森鉄道、津軽鉄道、弘南鉄道はいずれもほぼ平常どおりの運転に戻っています。航路については、津軽海峡フェリーは運航を再開していますが、青森-室蘭線は運航調査中となっています。青函フェリーも運航再開していますが、ダイヤに乱れがある状況です。川崎近海汽船の八戸-苫小牧線については、苫小牧を午前9時30分に出航する便までは欠航し、それ以降は運航調査中となっています。バスについても、各社平常運行に戻りつつあります。
この資料は、動画の概要欄にURLを掲載しますので、ご視聴の皆さまにもご確認できるようにいたします。
また、沖合で操業していた漁船等についても被害は確認されておらず、一部通行止めとなっていた八戸沿岸の県道についても、先ほど午前11時に解除しております。
被害状況および現況については以上です。
〇幹事社
ただ今の報告について、質問のある方いらっしゃいますでしょうか。
〇記者
終息に向かっている状況かと思いますが、現在、県が設置している対策本部の廃止の基準などを教えてください。
〇知事
注意報が解除され、所期の目的が達成されたと判断すれば対策本部も廃止となります。
〇記者
沿岸部を避けた地域では、経済活動は正常どおり行うよう市町村に伝達されたとのことですが、沿岸部では引き続き注意が必要な状況かと思います。この点について改めてお考えをお聞かせください。
〇知事
津波対策と経済活動のバランスが非常に重要だと考えています。津波の対策はもちろん必要ですが、同時に社会経済をいかに動かしていくかも大切です。
そのため、各市町村には、地域の実情に応じて、このエリアは危険、このエリアは避難すべき、といった判断をしていただいて、それ以外の地域については、基本的に通常どおりの社会経済活動を営んでいただきたいと考えています。
〇記者
まだ注意報が解除されていない段階でお聞きするのは時期尚早かもしれませんが、今回の津波対応を踏まえ、今後検証が必要と考えている点があればお聞かせください。
〇知事
今回の地震は、マグニチュード8.8という非常に大きなもので、超巨大地震と言える規模でした。3メートル以下の津波が来るという予測もありましたので、対応としては大きく構える必要がありました。実際、第一波と思われる津波の後、数時間後に最大の津波が到達したということを考えると、油断できない状況であったと考えています。
一方で、実際に観測された津波は40~80センチであったことを考えると、津波の予測精度をさらに高めてもらいたいと考えています。
今回、多くの県民の皆さまに避難していただきました。その一方で、社会経済活動が一時的に大きく縮小し、停止せざるを得なかったということもありました。このバランスをどのように考えていくのか、どのようにバランスのとれた対策や対応を行っていくのかということは、今後の課題として残ったと考えています。
〇記者
今回、対策本部会議を3回開催されていますが、いずれも非公開での開催となりました。改めて、非公開とされた理由をお伺いします。
〇知事
非公開とした理由は、会議の中で個人情報などが出る可能性があることに加えて、県民の皆さまにお知らせすべきなのはプロセスではなく結果だと考えているからです。
プロセスが切り抜かれて伝わるリスクもありますし、報道機関の皆さんとの関係で言えば、会議を公開したとしても最終的に「会議でどんなことがありましたか」という初歩的な質問が出ることもあります。そうしたことを踏まえると、結果についてしっかりとお伝えできれば、会議自体は公表しなくても良いと考えています。
〇記者
今後また別の災害が発生し、対策本部会議が開かれる際も、同じ対応になるのでしょうか。
〇知事
基本的には、今回と同様の方針で運用していきたいと考えています。
〇記者
今回、離れた地域で発生した地震による津波ということで、県内では揺れを感じなかったため、県民の皆さまにとって最初は実感しづらかった部分もあったかと思います。
避難指示が出された対象人数に対して、実際に避難された方の人数について、知事としてはどのように受け止めていらっしゃいますか。多くの方が避難したとお考えでしょうか。それとも、割合としては低かったとお考えでしょうか。
〇知事
率直な感想を申し上げると、多くの方に避難していただけたと感じています。地震の規模や津波の情報、また世の中の動きなど、今はそれぞれが多様な情報を自分で取得できる時代になっています。その点は、10年前、20年前とは大きく違っています。
そうした中で約2,600名もの方が避難されたというのは、多くの皆さまが危機感を持って行動してくれた結果だと考えています。
〇記者
県内ではありませんでしたが、全国的には避難所周辺で渋滞が発生するなど、避難に関する課題もあったかと思います。そういった点について、何か情報が上がってきていたり、今後さらに対策が必要だと感じていることはありますか。
〇知事
まだ市町村との詳しいやり取りはできていませんが、私が今回特に心配していたのは、青森県においても熱中症ということがあり得るのではないかということです。
昨日の夜の県内の気温を見ると、20度から25度くらいでしたので、西の方に比べるとそこまで熱帯夜感はなかったものの、日中も含めた避難所の熱中症対策というのは、夏の避難において青森県でも今後課題になってくると改めて感じました。
〇記者
それに関する対応は何か考えていらっしゃいますか。
〇知事
これから市町村とよく連携して考えていきます。
〇記者
繰り返しになりますが、今回の会議は非公開で行われました。公開で実施していただければ、細かな数字などを改めて説明する必要がなくなると思いますが、その点についてはいかがでしょうか。
〇知事
皆さんからそのような要望があれば、公開することも含めて検討していきたいと考えています。私自身、会議は原則として公開で行うべきだと考えていますが、状況によってはそれが難しい場合もあります。
今回はそうした場面はありませんでしたが、大規模災害時には、例えば「どこで誰が生き埋めになっている」、「どこで誰が流された」、「今、何人亡くなっていて、そのリストはこれだ」といった個人情報が飛び交うこともあります。
また、救助・救援の優先順位や、物資を届ける先の優先順位など、さまざまな判断が行われています。
報道機関の皆さんが善意で協力してくださって、ここの部分はオフにしてください、といったお願いをきちんと受け止めていただけるのであれば、公開も可能だとは思います。ここにいる皆さんは善意の記者かもしれませんが、県外などから多くの記者が来て、普段コミュニケーションを取っていない人たちも含めて殺到する中では、そうもいかない場合もあります。
そうした中で、会議の様子が公開され、発言の一部だけが切り取られて判断ミスではないかということが報道されると、私たちが本来やるべき対応がメディア対応によってできなくなるというリスクもあります。そうしたことを踏まえて、会議の結果をしっかりお伝えできれば特に問題ないと考えています。
昨日の本部会議を公表することは差し支えありませんが、場面によっては公表できないこともあり得るかもしれません。そのあたりは、皆さんとよくコミュニケーションを取って、改善すべきということであれば改善していきたいと考えています。
〇記者
漁船の沖出しに関連して伺います。八戸市など太平洋側では、東日本大震災の教訓を踏まえ、津波警報後に多くの漁業者が漁船の沖出しを行いました。当初は3メートル程度の津波の到達予測がありましたが、実際にはそこまでの規模にはならず、夕方には船を戻す漁業者も多く見られました。沖出しの関係で、課題に感じていることはございますでしょうか。
〇知事
現状、どのように沖出しをし、どのように帰ってきたかという事実関係について、私自身はまだ把握できておりません。そのため、そういった課題があるかどうかを申し上げられるだけの知見は、今のところ持ち合わせておりません。
〇記者
現在も太平洋側では津波注意報が継続しています。漁業者の皆さんに向けて、呼び掛けたいことはございますか。
〇知事
気象庁が伝えているとおり、やはり海岸や沿岸での作業は、まだ危険が伴う状況です。津波は、皆さまもご承知のとおり、普通の波とは違いますので、そこだけは気を付けていただきたいと考えています。
〇記者
話題は戻りまして、会議が非公開で行われたことに関係してお尋ねします。今回、災害対策本部会議室が新しくなって初めての災害対策本部の立ち上げとなりました。この本部会議室のスペースが狭くなったことによって、報道機関の入るスペースが少なくなったというところが影響しているのでしょうか。
〇知事
それも形式的な一つの理由ではありますが、それが実質的な理由ではありません。
〇記者
関連して、事務方の作業スペースと本部会議室は、現在別々に分かれていると思いますが、本部会議室をさらに広くするお考えはございますか。
〇知事
今回、より広いスペースを確保するために、今の場所に移しました。ただ、それでも報道機関のスペースを十分に確保できないという現状です。何度か訓練して、このような結論になりましたので、今後は報道機関の皆さんも訓練にご協力ください。
〇記者
知事は先ほど、避難者数が2千人台だったことについて、大変多くの方に避難していただいたと評価されていました。
釈迦に説法かもしれませんが、災害の警報を発する時に理想的なのは、「警報に従って多くの県民、市民が避難した。結果的に何も起こらなかったけど、それはそれで良かった」という理解が定着することです。
最悪なのは、警報が何回も出て、「ああ、やっぱり今回も何も出なかったな。じゃあもう避難しなくてもいいや」と慣れてしまい、その結果、重大な事態が起こってたくさんの人が犠牲になってしまうというケースです。
今回のケースに限って言えば、2千人という数字は、私はそこまで多くないと思います。今後、この2千人という数字についても検証がなされると思いますが、知事としてはどのようにお考えでしょうか。
〇知事
人数が多いか少ないかと聞かれたので、私は2,600人に避難していただいたことは多かったとお答えしました。これは過去との比較で多かったという話です。
大事なのは住民の方々とのリスクコミュニケーションだと考えています。先ほども申し上げましたが、まず必要なのは予測の精度を高めることです。3メートル以下の津波が来ると言って、実際には数十センチだったのはどうしてかということについて、気象庁には検証していただく必要があります。
それからもう一つは、市町村による避難指示の範囲です。3メートル以下の津波が来るという予測が出た段階で、大きく構えることはもちろん大切ですが、その後に3メートルではないことが分かった時点や、警報から注意報に切り替わった時点で、どのように避難指示の範囲を縮小していくのかも重要です。
そのような適切な予測、的確な避難指示であることが前提で物事が動いていきます。
今は個人で情報を取得し、判断することができる時代ですので、予測の精度を高め、適切なリスクコミュニケーションができるようになれば、避難指示に基づく適切な避難が可能になると私は考えています。
〇幹事社
それでは、その他の案件について知事から報告をお願いします。
〇知事
【「青森県子どもの生活実態調査」の分析について】
令和5年度に実施した「青森県子どもの生活実態調査」の分析結果をお知らせします。
まず、子どもの放課後の居場所に関してです。このグラフは、小学校5年生を濃い青、中学校2年生を薄い青で示しています。「自分の家」が一番多いですが、それ以外では小学生は「塾や習い事」、中学生はおそらく部活動の関係で「学校」の割合が高くなっています。
放課後一緒に過ごすことが一番多い人としては、「家族」が一番多いですが、それ以外では小学生では「一人でいる」、中学生では「友だち」が多くなっています。
次に、子どもの体験や子どもと保護者の関わり方についてです。「遊園地やテーマパークに行く」、「キャンプやバーベキューに行く」、「博物館・科学館・美術館などに行く」、「海水浴に行く」、「スポーツ観戦や観劇に行く」などの体験について、「ある」と答えた割合が高い順に上から並んでいます。遊園地・テーマパークについては、「経済的な理由でない」という回答が多く、海水浴やスポーツ観戦については、「時間の制約でない」という回答が多くありました。
子どもと保護者の関わり方について、「毎日朝食を食べさせている」が92.3%であり、7.7%の子どもたちは毎日朝ご飯を食べていない状況にあります。「授業参観や運動会などの学校行事への参加」をよくすると回答した保護者は81.2%でした。「学校生活の話をする」では「あまりしない」と「全くしない」があわせて5%でした。「小さい頃、絵本の読み聞かせをした」や「PTA活動や保護者会などの参加」をすると回答した割合も少なく、さらに「将来について一緒に考えたり話をする」は13.7%がしないという回答でした。
「勉強をみる」については3割以上、「本や新聞を読むようにすすめている」については半数近くがしないと回答しています。「政治経済などのニュースの話をする」と回答した人は7割ほど、「からだを動かして遊ぶ」と回答した人は半数ほどでした。
次に、保護者の支援制度の利用等の有無について、「学習支援」を利用したいと回答した人が58.9%、「居場所づくり」は43.3%、「食料支援」は38%、「子ども食堂」は36.5%であり、いずれの支援もニーズがあるということが分かりました。
子どもが使ってみたい居場所について、「勉強、家族のことなど、なんでも相談できる場所」や「大学生のボランティアが勉強を無料でみてくれる場所」、「家で勉強できない時、静かに勉強ができる場所」、「夕ごはんをみんなで食べることができる場所」、「休日にいることができる場所」、「平日の放課後に夜までいることができる場所」を使ってみたい・興味があるとの回答が4~6割で、子どもが居場所を求めていることが分かりました。
まとめとしては、子どもが放課後を過ごす居場所等には、社会経済的背景が影響していること、両親の学歴が家庭内での学びへの投資や家庭外での活動への支援を通じて、子どもの進学意欲や勉強意欲に影響していることがわかりました。
分析を踏まえた考察としては、子どもが、社会経済的背景に左右されずに居場所や成長の機会を得ることができる仕組みづくり、保護者が子どもと関わる時間や機会を増やせる取組、子どもが将来の幅広い選択肢を持つための県民所得向上を目指した取組が必要と考えられます。今回の分析結果を踏まえて、来年度の事業の構築を行うほか、市町村とも共有して、市町村の施策にも生かしていただきたいと考えています。
【青の煌めきあおもり国スポ・障スポの開催に向けて】
青の煌めきあおもり国スポ・障スポの開催に向けたお知らせ、お願いです。
国スポ・障スポ開催1年前イベントとして、子どもたちを対象としたトップアスリートによるスポーツ教室が開催されます。
日時は9月21日の11時から15時、場所は青森市のカクヒログループスーパーアリーナです。主催は日本スポーツ協会とミズノスポーツ振興財団です。
総合司会は競泳メダリストの大橋悠依さんと寺川綾さんが務めるほか、本県にもゆかりのある卓球の福原愛さんや、バレーボールの迫田さおりさん、体操、空手、陸上の選手にもお越しいただいて、子どもたちに競技の楽しさや技術を伝えていただきます。
イベントの詳細は明日8月1日からホームページに掲載され、8月5日から17日の期間で応募を受け付けます。会見をご覧の皆さまの中で、お子さんやお孫さんがいる方はぜひご参加ください。この後、LINE等でもご案内させていただきます。
次に、情報支援ボランティアの募集についてです。手話ボランティアと筆談ボランティアを募集していますが、特に筆談ボランティアが不足しています。応募要件は、12歳以上で国スポ・障スポの活動日に参加可能な方で、手話や筆談に関心のある方です。ホームページの応募フォームから応募できますので、ぜひご応募ください。いずれも研修会を開催し、どなたでもボランティア活動ができるようにしていきますので、よろしくお願いいたします。
最後に、今月の競技別リハーサル大会は、ハンドボール、相撲、オープンウォータースイミングの3競技が開催されます。青森市と十和田市で開催いたしますので、お時間のある方はぜひ会場に足をお運びください。
【カスタマーハラスメント対応マニュアルの策定について】
カスタマーハラスメント対応マニュアルを策定いたしました。県民の皆さまにもご理解とご協力をいただきたく、マニュアルの一部を紹介いたします。
カスタマーハラスメント対策は、働き方改革の一環として、働きやすい環境づくり、職員のやりがい・働きがいの向上のためスタートいたしました。職員アンケートの結果、カスタマーハラスメントを受けたことがあると回答した職員が回答者数の46.8%と、ほぼ半数でした。その実例としては、「今すぐ包丁を持って来ておまえを殺してやる」と言われた、来庁者から、自分の言い分が通らないことに腹を立てて「日本語分かるか?」等の暴言があり、机を叩きながら約1時間同じ内容を詰問されたというようなことがありました。
こうしたことに対して組織として毅然と対応していくため、カスタマーハラスメント対応マニュアルを策定したところです。
まず1つ目として、マニュアルでは、職員が県民や事業者の方に対応する際の基本的な心構えを定めています。職員は県民目線で、県民の方からの要求や苦情を県政の改善や課題解決につながるものという意識を持つことが重要です。そのため、県民の皆さま一人ひとりに誠意をもって、丁寧かつ親切に対応することを、対策の第1項目として職員には徹底してもらうようにしました。
カスタマーハラスメントの定義や判断基準ですが、「社会通念に照らし、要求や苦情の内容が妥当でないもの」または「その要求や苦情を実現する手段・態様が不相当なもの」としています。「殺してやる」などの脅迫や、「県庁が古いからどこかに建て替えろ」など実現が困難なことを強引に要求するものなどについては、カスタマーハラスメントとして対応します。
カスタマーハラスメントへの対応ですが、まず現在、電話の通話録音の準備をしており、今年度中をめどに開始する予定です。また、毅然とした対応をとっていくこととし、対応時間の目安を電話は30分、面会は60分とします。なお、この時間にならなくても、暴行や脅迫を伴うなど、カスタマーハラスメントの定義に該当する場合には、対応を打ち切ることもあります。
また、組織として対応していきます。相手と面談する場合は、1人で対応せず、複数で対応していきます。そして、悪質な場合は警察や弁護士への相談を行います。
カスタマーハラスメントの対策を行う上で、県民の皆さまに誠実で、丁寧かつ親切な対応ができていることが大前提となります。今後も、職員の接遇の品質向上に努めてまいりますので、県民の皆さまのご理解とご協力をお願い申し上げます。
【質疑応答(報告案件について)】
〇幹事社
それでは、ただ今の報告に対する各社からの質問を受けたいと思います。質問のある方は挙手をお願いします。
〇記者
子どもの実態調査についてお尋ねします。こちらは人口減少対策推進本部会議の中で取り上げられた案件だと理解していますが、人口減少対策との関わりをどのように考えていらっしゃるのか、所感をお伺いします。
〇知事
子どもの居場所があり、子どもが伸び伸びと生活できる環境が整っているということは、青森県が子育てのしやすい環境、子どもを産み育てやすい環境であるということであり、若い人たちがここで子どもを育てたいという気持ちになり、その結果子どもが増える、というつながりがあると考えています。
〇記者
主な結果の部分、子どもの体験や子どもと保護者の関わり方についてご説明いただきました。結果について、知事の率直なご所感をお伺いします。
〇知事
やはり居場所を求めているというのが、私の率直な感想です。そして、多様な居場所が必要だということもよく分かりました。子どもの数が少なくなっていて、子どもたちは社会全体のマイノリティになってしまっています。
私たちが子どもの頃には、いろいろなところに居場所がありましたが、今の子どもたちは居場所が少なく、社会的に提供する場面に来ていると考えています。
〇記者
この調査結果は、新年度予算に向けたさまざまな検討材料になるかと思います。ターゲットとなる県民の属性としては子どもと保護者になると思いますが、現状でどのような方向性の取組をお考えでしょうか。
〇知事
やはり居場所や成長の機会を得ることができる仕組みづくりや、保護者が子どもと関わる時間や機会を増やせる取組が必要です。
これは子ども政策だけではなく、労働政策や働き方全般にも求められていることだと思いますので、そのあたりが政策のターゲットになってくると考えています。
〇記者
今、知事も言及されたように、社会全体でそういう気運を作っていくのもそうですが、保護者の努力だけではどうしても足りない部分を県が埋めていくという視点も重要になってくると思います。そのあたり、県としてどのような形で取り組んでいきたいとお考えでしょうか。
〇知事
基本的なコンセプトとしては、青森県で生まれた子どもたちが、家庭環境などに左右されることなく、等しく成長の機会や居場所を持つことが重要だと考えています。
そのうえで、子どもたちには夢を大きく持ってもらい、世界へ羽ばたいてほしい。そして、羽ばたいた先に青森がある、という環境を作ることが大切だと考えています。
〇記者
両親の学歴が関係するという点について、もう少し詳しく教えてください。
〇知事
担当部局からお答えします。
〇総合政策部
両親の学歴との関係ですが、例えば両親が大学卒である家庭の方が、塾や習い事に通わせたり、家庭で子どもの教材を購入したりするなどの割合が高い傾向にあります。そういったことが、子どもの進学意欲に影響を与えていることが見られました。
〇記者
先ほど、子どもたちが居場所を求めているという受け止めをおっしゃっていました。具体的には、放課後の居場所として学校や塾が多く、一緒に過ごすのは友だちや一人という回答が多かった点から、そのように思われたのでしょうか。
〇知事
「子どもが使ってみたい居場所」のところで、半数近くの子どもたちが、なんでも相談できる場所や勉強できる場所を求めていました。また、平日の放課後に夜までいられる場所という回答も多く、家ではない場所にいたい子どもがこんなにいるのだということが分かりました。
これは政策を考える上で参考になりますし、特に市町村において活用できると考えています。
〇記者
分析を踏まえた考察のところで、「保護者が子どもと関わる時間や機会を増やせる取組が必要」とあります。知事も従来からおっしゃっているように、県庁という組織は県内でも非常に大きな事業体であり、行政が範を示す立場にあるかと思います。「隗より始めよ」という観点から、県庁職員が保護者として子どもと関わる時間を増やすための取組、例えば制度を変えるといったことは検討されているのでしょうか。
〇知事
今のところ検討していることはありませんが、庁議などにおいて、夏季休暇をしっかり取得することや男性職員の育休取得を100%にしようという話はしています。
また、教育委員会で職員の子どもたちを職場に連れてくるという取組がありますので、詳細は教育委員会からご説明します。
〇教育委員会
8月5日に、保護者参観日として、教育委員会の職員のお子さんたちを県庁に招いて、親の働いている姿を見てもらうことを予定しています。当日は、知事室にも立ち寄ることにしており、お子さんと保護者合わせて50名くらいの規模で開催します。
〇知事
そのような取組がスタートしています。
〇記者
カスタマーハラスメントの件で、2点お伺いします。
まず、カスタマーハラスメントの定義や判断基準が示されましたが、実際にカスタマーハラスメントであると判断するのは誰なのでしょうか。もしくは部署ごとに判断するのでしょうか。
〇知事
それぞれ対応している職員が判断することになりますので、「今こういう状況なのですが、カスタマーハラスメントかどうか判断してもらえますか」と誰かに確認するというものではありません。
〇記者
相談に来られた県民の方と職員の間で意識の齟齬が生じ、県民からしたらカスタマーハラスメントではないのに、その声を潰されてしまうのではないかという懸念もありますが、この点についてはいかがでしょうか。
〇知事
そのため、まず前提として、県民の皆さまからの苦情や要求には真摯に耳を傾ける必要があります。過度な要求というのは明らかに分かります。「これをやらないのであればお前は死ね」などの発言や、机を叩く、資料を投げるなどはどう考えてもカスタマーハラスメントです。
これまではこのような基準がなかったため、職員が耐え忍ぶしかないという状況でした。よく話題になっているのが、県外から「クマを殺すな」という電話が何時間もかかってくるというケースですが、そのようなものは5分で切って良いと考えています。
しかし、県民の皆さまからの「こういうことをしてほしい」、「こういうお願いがある」という一般的なものはハラスメントには該当しませんので、県民の皆さまのご意見をしっかり聞くことを徹底していきますので、その点はご理解ください。
〇記者
対応時間の目安を、電話30分、面会60分とするとのことですが、いつぐらいから実施する予定でしょうか。
〇知事
すでに実施しています。
〇記者
電話をかけてくる人は30分と知らずにかけてくると思いますが、電話は30分、面会は60分という周知はどのように行っていくのでしょうか。
〇知事
今日のこの会見も、周知の一環になると考えています。また、そもそもカスタマーハラスメントに該当する場合に対応を打ち切るというものであり、カスタマーハラスメントでない場合にはしっかりと話を聞くことで長時間になることはあります。
ただ、ビジネスの経験上、電話であれば30分、面会であれば60分あれば、大体の用件は終わると考えています。カスタマーハラスメントに当たらないものについては、この目安にかかわらずしっかり対応していきます。
【質疑応答】
〇幹事社
報告以外の案件に対する質問に移ります。まず幹事社から質問いたします。
先週、本県で初となる全国知事会議が開催されました。会議では人口減少をはじめとしたさまざまな課題について意見が交わされ、その成果が「青森宣言」として取りまとめられました。全国知事会を終えての知事の所感を改めて伺います。
〇知事
まず初めに、全国知事会議の開催にご協力いただいたすべての皆さまに感謝申し上げます。また、報道機関の皆さまにも、たくさん取り上げていただいたことに感謝申し上げます。
今回は、参議院選挙の直後というタイミングで、国政の流動化、あるいは不安定化が予測される状況での開催となりました。
現場の最前線で県民の皆さまの暮らしに向き合う全国の知事が一堂に会し、少子化や人口減少、物価高騰対策といった喫緊の課題に限らず、今後の我が国や地域の未来について真剣に議論が行われました。
47都道府県の知事が、共通認識や共通課題をしっかりと共有できたことは、大きな意味があったと考えています。
また、3日間の成果として、「青森宣言」が取りまとめられ、青森の歴史や文化、産業について盛り込めたことは、非常に意義があったと考えています。
私自身も、こども・子育て、診療報酬制度、国土強靱化、年金制度、最終処分地の選定、さらには大分県知事から提案のあった整備新幹線についての反論など、積極的に提言や発言をさせていただきました。自分にとっても非常にいい機会であったと考えています。
今回の知事会議では、国政選挙では見落としがちだった地方の重要論点にも光を当て、国をも先導していく道しるべとなる宣言ができたと考えています。
おもてなしも含めて青森らしさも発揮でき、自分としても記憶にも記録にも残る、そうした知事会議になったと振り返っています。
〇記者
先日行われた参院選について伺います。まず投票率についてですが、県内の投票率は54%ほどで、全国平均の58%と比べて依然として低い状況にあります。それについての受け止めと、これまで県として投票率向上に向けた取組を行ってきたものの、結果として結びついていないことについて、何か検証などを行う予定はありますか。
〇知事
絶対値としては上がっていますが、相対的には全国より低かったということで、その部分については非常に残念に思います。
これまでの取組が結びついていないかどうかについては、検証が必要だと考えています。今回は全国的に若い人たちが積極的に参加した選挙でしたが、青森県はその流れに追いつけなかったという部分は反省すべき点だと考えています。
〇記者
参院選の結果について、自公の与党が参議院でも過半数割れとなりました。こうした結果についてどう受け止めていらっしゃるのかということ、知事が先ほどおっしゃったように国政が不安定化している中で、今後、県政発展のためにどのように国や各政党と向き合っていくお考えでしょうか。
〇知事
「与うるの取るたるを知るは政の宝なり」という言葉のとおり、まずは結果をしっかり受け止めることが重要です。その上で、今後どう向き合うかといえば、やはり政権とどう関係を築くかに尽きると考えています。石破政権が続くのかどうか、新たな与党の連立が生まれるのか、あるいは野党の連立でいくのかなど、非常に流動的な要素があるので、誰も予測できないでしょう。いずれにしても、政権とどのように連携していくかが大事だと考えています。
〇記者
参院選に関連して、青森選挙区では、立憲民主党の新人・福士さんが当選し、自民党現職の滝沢さんが再選を逃すという結果になりました。青森選挙区の結果に対する知事のご所感を伺います。
〇知事
特にありません。県民の皆さまが選んだ結果として受け止めています。
〇記者
福士さんに期待することや、これから知事としてどのように向き合っていくかについてお伺いします。
〇知事
一議員に対しての思いは特にありません。向き合い方については、先ほど申し上げたとおり、私は政府、政権とどう向き合っていくかということを考えていくべきだと思います。
〇記者
政権についてお伺いします。石破総理の進退に関して、与野党含めて盛んに議論されています。この総理の進退に対して、知事のお考えをお聞かせください。
〇知事
総理の進退に対して、私自身がどう考えるかということは特にありません。政治家の出処進退は自らが決めるべきものです。自ら立候補して衆議院議員になり、自ら立候補して総裁になり、自ら立候補して総理になっていますので、その出処進退は本人がしっかり考えるべきことです。これから日本をどのように導いていくのかということを前提に本人が考えるべきことであり、知事として何か口を挟む余地はないと考えています。
〇記者
参院選関連でお伺いします。先ほど、今後の対応としては政権とまず向き合っていくことだというお話もありましたが、改めて、自公が過半数割れした原因について、有権者のどういった思いが背景にあったとお考えでしょうか。
〇知事
先ほども申し上げたとおり、「与うるの取るたるを知るは政の宝なり」です。
〇記者
その意味が、そのまま知事の受け止めということですか。
〇知事
そのとおりです。民意がどこにあるのかを政策で表現することが大事であり、それがなかなか難しかったのではないかと考えています。
〇記者
政策に関連してお伺いします。年内にもガソリン減税が実施される見通しとなっています。また、まだ決まってはいませんが、参院選では消費税減税の議論もありました。
改めて、ガソリン減税についての知事の受け止めと、消費税減税の是非についてお伺いします。
〇知事
まずガソリン税の減税については、既に合意され、11月以降に実施することが決まったと理解しています。もう決まったことですので、私自身が何か申し上げる立場にはありませんが、そのこと自体は評価できると考えています。
青森県内では車で生活している方が多く、ガソリン税が25円程度減ることは、物価高騰対策として一定の効果があると考えています。現在は補助金で10円程度減っていますが、補助金を廃止して暫定税率を引き下げれば、今より15円程度ガソリンの値段が下がる見込みです。
ただ、中東情勢によってはガソリンの値段がまた上がる可能性があり、その効果が吸収されてしまう可能性もあります。また、減収分をどのように穴埋めしていくか、しっかりとした見通しが立たなければ、マーケットの信頼が得られなくなります。例えば国債を発行する場合は、国債の金利が上がったり、あるいは円安に振れたりすると、さらなるインフレや円安を招くことになり、経済的にマイナスになる可能性があります。この点には注意が必要です。
もう一つ、地方税が減収する分をどう考えるかということについて、無理やり地方も減らせと言われれば、これはもうやるしかないという部分はあります。ただ、地方税収を減らすということは、結果的に地方の支出を減らさざるを得ないということであり、総需要が減って経済にとってはマイナスになるということがあり得るので、地方税収の減については国は何らかの措置をしなければならないと考えています。
次に消費税について、基本的に私は引き下げに賛成の立場です。ただ、何のためにやるかという目的が非常に大事だと考えています。物価高騰対策だとした場合、青森市内の消費者物価は2020年比で12%上がっていますので、仮に10%減らしたとしても5年でその分は吸収されてしまう可能性があります。そのため、物価高騰対策という部分では少し限界があると考えています。
それでは、なぜ賛成するかというと、日本経済は打つ手を失っているので、そうした中で景気経済を刺激する一つの策として減税はあり得ると考えています。そのため、食品だけゼロにするのではなく、一律で下げることが求められると考えています。
これもガソリン税と同様です。仮に消費税を引き下げ、その財源を国債だけに頼るようになると、マーケットの信頼を失い、国債発行によって金利が上昇し、円安が進行する可能性があります。その結果、経済が縮小するおそれがあります。そのため、プロセスや方法を明確にしながら進めていく必要があると考えています。
地方税収分を減らせと言うのであれば、それは行革を進めて減らすしかありませんが、それをやってしまうと総需要が減ることになり、経済にとってはマイナスになるので、やはり地方財政分というのは何らかの措置が必要だと考えています。そうしたシナリオをしっかり描き切れれば、これはいい経済政策になる可能性があると考えています。
イギリスでリズ・トラスが減税政策を行った際、マーケットの信頼を得られずに大失敗に終わりました。同様のことが日本で起こるのではないかという議論もありますが、日本の場合は、国債は日銀が買い取る仕組みになっており、イギリスとは状況が違うので、トラスショックのようなことは直ちには起こりません。ただ、やはりマーケットの信頼を得ながら進めること、金利の動向を見ながら進めること、為替の動向を見ながら進めることが大事だと考えています。
また、減税の前には買い控えや駆け込み需要が生じるため、その調整も必要です。
なかなか大変だと思いますが、国民のために与野党はしっかり合意形成してほしいと考えています。
〇記者
ガソリン税の減収について、政府の試算では青森県分で73億円という数字もございます。消費税も減税となれば、地方への分も減ることになりますが、知事は先ほど行革をするしかないとおっしゃいました。政府からの補塡がなくても、行革等でやりくりできる範囲内ということでしょうか。
〇知事
「行革でやる」と言ったわけではなく、やれと言われればやらざるを得ない部分はありますが、大事なポイントは総需要です。例えば70億円減収になるということは、その分私たちが支出をしないことになります。そうすると青森県内で70億分、経済活動が縮小することになります。消費税の減税は経済活動が活性化につながると言われますが、国全体で何兆円、何十兆円もの減収となれば、その分経済が縮小してしまいます。そうなると、消費税を減らして物価高騰対策や経済対策を行っても、結局は効果がなくなってしまいます。
そのため、消費税の減税によって経済成長を図るのであれば、地方の収入を減らすべきではないということです。
〇記者
地方への手当なしには、消費税減税は反対であるということでしょうか。
〇知事
そのような二項対立の話ではなく、私たちもある程度の行革をやった上で、一部負担してほしいということであればそれは許容できますが、許容できる範囲は、現時点では議論できません。
きちんと地方の収入が確保された形でなければ、政府支出が減って総需要が減るため、経済対策にはならないという話をしています。地方の収入を確保した上で、経済政策や景気浮揚政策として消費税を減税することについては、反対する理由はありませんし、むしろ他にやれるべき大規模な経済政策が無いならやってみるのは大事だと考えています。その時に、マーケットの動向をきちんと監視しながらやらないと、国民経済が不幸になるよという注意喚起をしています。
〇記者
消費税減税の手法について、知事は一律に行うことが求められるとおっしゃいました。もう一つの論点として、時限措置か恒久的措置かという点がありますが、これについてはどうお考えですか。
〇知事
それは今後の議論をしっかり見ていきたいと考えています。私のイメージは恒久ではありません。恒久であれば、それは経済対策ではなくなります。経済対策でやるとすれば、期間がどれぐらいかというのは別としても、期間は設定されるべきだと考えています。
〇記者
青森宣言に盛り込んだ「財源なき減税はつけを回すような政策」という文言は、知事の考えに相反するものではないのでしょうか。
〇知事
もちろん相反しません。国債発行は無限にできる、税は財源ではない、というMMT(現代貨幣理論)の考え方もありますが、それだけに頼ってマーケットの信頼が得られるかどうかは、世界で誰も試したことがない経済政策です。
そこまで極端でなくても、ある程度の国債発行を前提に消費税減税を行った場合でも、確実にマーケットの信認を得られなければ、結局は国民経済が不幸になるという話をしています。
青森宣言では「将来につけを回す」ことになると言っており、財源として国債発行が無制限に行われないことは大事なことだと受け止めています。
〇記者
「与うるの取るたるを知るは政の宝」とは、減税を国民に与えて議席を取ったという解釈なのでしょうか。
〇知事
そういうことではなく、むしろ国民が望んでいる政策や先々の見通し、将来像を提示することが政治の本来の役割だと考えています。
それができたかできなかったかで結果が分かれたのではないかということを、管仲の言葉で表現しているとご理解ください。
〇記者
先ほど総理の出処進退は政治家個人で決めることだとおっしゃいました。もう少し俯瞰してみると、自民党の中で続投したい総理、そして総理に退陣を求めたい動き、自民党の中で目まぐるしく動きがあります。それを知事としてどのようにご覧になっているか、お伺いします。
〇知事
自民党内の動きについては、国民からの理解は得られないと考えています。さまざまな動きはありますが、やはり総理が決めるということが大事だと考えています。
やりたいからやるということではなく、こういう日本にしたい、今回これを実現する、ということが必要であり、徹頭徹尾、総理の意思が大事だと考えています。
〇記者
話題変わりまして、アメリカ、トランプ大統領の関税政策についてお伺いします。
相互関税15%で合意し、発動がおそらく8月1日であろうという見込みですが、こちらの合意について知事の所感をお伺いします。
〇知事
もともと無理な話をしていたので、交渉は大変だったと思います。
いきなり関税を上げることに根拠はなく、WTO(世界貿易機関)やFTA(自由貿易協定)など、これまでいかに関税をゼロにし、国際的に水平分業して経済公平を高めていくかということが、ミルトン・フリードマン以降の基本的な経済原則でしたが、それを完全に無視しています。
ただ、アメリカらしいとも言えます。もともとアメリカはモンロー主義の国で、第一次世界大戦にも関与しないという時期がありましたから、そのような初期のやり方が復活したようだと私は受け止めています。
大事なことは、県内企業にどのような影響があるかということです。アメリカへの輸出額は本県の輸出額全体の5%であり、それほど高くはありません。農林水産品や製造業品も高付加価値のものが多いため、大きな影響はないと見ていますが、事業者の皆さまにとっては一定の影響があると思いますので、そうしたところをしっかりフォローしながら必要な措置を講じるかどうか、これからよく検討して見極めていきたいと考えています。
〇記者
青森県では、新たな輸出先としてアメリカにも力を入れ、駐在員を置くなどの対策もしているかと思います。アメリカを新たな販路開拓として捉えるにあたって、今回の関税はどういう影響があると思いますか。
〇知事
現時点で、新たな販路開拓の中心となるのが農林水産品や加工品です。関税がオンされた形で販売し、テストマーケティングを行うことになります。条件が変わったと理解し、それでも販売できる商品をこれから選抜していく形になると考えています。
〇記者
先ほど知事からも、中小企業の輸出に関わる事業所をフォローしたいというお話がありましたが、今後具体的にどういった対策や取組を検討されていますか。
〇知事
まず、既に製造業の事業者は具体的に輸出を行っている部分がありますので、その影響について改めてヒアリングを実施する必要があると考えています。
これが県として対応すべきものなのか、国が対応すべきものなのか、あるいは国の交付金等を活用して県が対応すべきものなのか、または財政支援なしに何かできることがあるのかは、今後の検討課題です。
相互関税は明日からスタートということですから、その辺は様子を見ながら対応したいと考えています。
〇記者
参院選の話に戻ります。一昨日、福士議員と面会なさったと思いますが、どのようなお話をされたのでしょうか。
〇知事
当選のお祝いを申し上げました。また、その場には立憲民主党の議員の皆さまもいらっしゃいましたので、今後どのように活動していくかについてご説明いただきました。
〇記者
中にいらっしゃった方から、知事が期待感を示されたというお話がありましたが、具体的にどのような期待感をお持ちなのでしょうか。
〇知事
期待感というよりは、いろいろなお話をさせていただき、新人の議員ですから「頑張ってください」という激励を申し上げました。受け止め方は皆さんそれぞれ違うと思います。
〇記者
話題が変わって、最低賃金についてお伺いします。政府が6月にまとめた骨太の方針では、最低賃金について着実に引き上げ、2020年代に全国平均1,500円という高い目標に向かってたゆまぬ努力を続けるとされています。
この政府方針に対する知事の受け止めをお願いします。
〇知事
最低賃金は上がった方が良いと考えています。
〇記者
2020年代に最低賃金を全国平均で1,500円にするには、毎年度約7%の改定が必要となる計算です。
労働局の資料によると、2015年度から2024年度の間で一番低い年は2020年度の0.4%、一番高い年は2024年度の6.1%ということで、7%には程遠い状況です。
こういった状況の中で、政府方針の実現の見通しと、最低賃金1,500円の課題についてお伺いします。
〇知事
見通しについては、やると言っているのだからやるのでしょう。
課題については、やはり経営者側の判断や限界値もあると思いますので、そのあたりを審議会の方でしっかり議論していただくということだと考えています。
〇記者
関連して、今年の骨太の方針では、各都道府県の地方最低賃金審議会が中央最低賃金審議会の目安を超える最低賃金に引き上げを行った場合、交付金などを活用して都道府県のさまざまな取組を十分に後押しするということも盛り込まれています。
このことについての評価と受け止めがあればお願いします。
〇知事
そもそも地方の審議会に対して私には何ら権限がありませんので、そのことについて私から申し上げることはできません。最低賃金の決め方について、担当からお伝えします。
〇こども家庭部
基本的には、地方の最低賃金審議会で各代表が審議して、最終的には労働局長が決めるということになっています。他県では意見を出した県もありますが、労働局長が決めています。
〇知事
最低賃金は知事が決めるものではなく、労働局長が決めるものなので、そこに私が申し上げることはありません。
〇記者
先ほど知事からも企業経営者側のさまざまな見解があるとお話がありましたが、最低賃金を上げることは企業経営を圧迫することもなると思います。特に青森県では中小企業が99%以上を占めている中で、最低賃金の引き上げが県内の中小企業の経営体力を大幅に削ぐ可能性もあります。
最低賃金の引き上げに関して、県として中小企業に対する財政的支援の必要性をどのように考えているか、見解をお聞かせください。
〇知事
そういった支援を始めるとキリがないと思います。
外部の環境が変わった時に、それが企業を苦しめる状況になるのか、イノベーションや変革のきっかけになるのか、受け止め方はどちらかだと思います。生き残るためには、それぞれ考えるべきことだと思いますし、いろいろな考え方があると思います。
〇記者
昨日の地震と津波の件に戻ってしまいますが、災害救助法の申請を迅速に行った理由について、改めて教えてください。
〇知事
内閣府から「青森県はどうしますか」と声を掛けられた際、その時点で避難所が90箇所ほど設置されていました。そのため、適用を躊躇する理由はないと判断し、適用いたしました。
〇幹事社
最後に知事からお願いいたします。
〇知事
まだ注意報が発令中ですので、発令されている地域の沿岸の方や海岸で作業をされる方は、十分に注意してください。
注意報は出ていますが、いよいよ夏祭りのシーズンとなりました。私自身も明日から、三社大祭、それから弘前ねぷた祭りをはじめに、平川、大湊、五所川原、青森、黒石へと伺います。また、鰺ヶ沢で4年に一度開催される白八幡宮大祭にも行きますし、おしまこ流し踊りも参加予定です。各地でお祭りに参加させていただき、発信しながら盛り上げていきたいと思いますので、ぜひ皆さまもいい夏をお過ごしください。
ただ今から、定例記者会見を始めます。
まず、知事から報告をお願いします。
【第3回青森県災害対策本部会議について】
〇知事
第3回青森県災害対策本部会議について、今般の津波に関するご報告を申し上げます。
まず、地震の概要を振り返ります。昨日午前8時25分、カムチャツカ半島付近でマグニチュード8.7の非常に大きな地震が発生し、8時37分に津波注意報が発表されました。
当初は注意報でしたので、私自身は次の公務に向かっていましたが、約1時間後に津波警報へと切り替わったタイミングで本庁に戻り、今まで対応を継続しております。
その後、午後8時45分に津波警報が解除され、津波注意報へと切り替わりました。そして本日午前10時45分、陸奥湾および日本海沿岸の津波注意報は解除されましたが、太平洋側については津波注意報が継続しています。
観測された津波の最大値は、むつ市関根浜で40センチ、六ケ所のむつ小川原港で40センチ、八戸港で80センチとなっています。こちらは気象庁や国土交通省港湾局の観測地点での記録です。
八戸市の波の状況を見ますと、オレンジの線が通常の潮位で、青の線が実際の潮位です。これを見ていただくと、第一波と言われるあたりよりも、回を重ねるごとに少しずつ大きくなっているのが分かります。また満潮時には、赤い線の高潮警報基準を超える瞬間もありました。
このことから、津波のメカニズムについて、改めて学ぶところがあったと考えております。
今回の津波は40~80センチの範囲であり、現時点で人的被害や住家被害、重要施設の被害は報告されておりません。
現在、10市町村で避難指示等を発令しております。こちらの資料は午前6時時点ですが、先ほど確認したところ変わりはないとのことです。
本日午前10時過ぎ、市町村長には災害対策本部の状況をお伝えしました。注意報に切り替わり、終息に向かっている状況にあることから、沿岸部へは近づかないということを前提に、沿岸部以外の地域については、通常どおりの経済活動について判断して良いタイミングにあるのではないかとお伝えしました。
避難所については、現在6市町村で49か所が開設されており、23名の方が避難しています。昨日から今日にかけて、最大2,637名の方々が避難されました。
交通機関の状況ですが、JR、青い森鉄道、津軽鉄道、弘南鉄道はいずれもほぼ平常どおりの運転に戻っています。航路については、津軽海峡フェリーは運航を再開していますが、青森-室蘭線は運航調査中となっています。青函フェリーも運航再開していますが、ダイヤに乱れがある状況です。川崎近海汽船の八戸-苫小牧線については、苫小牧を午前9時30分に出航する便までは欠航し、それ以降は運航調査中となっています。バスについても、各社平常運行に戻りつつあります。
この資料は、動画の概要欄にURLを掲載しますので、ご視聴の皆さまにもご確認できるようにいたします。
また、沖合で操業していた漁船等についても被害は確認されておらず、一部通行止めとなっていた八戸沿岸の県道についても、先ほど午前11時に解除しております。
被害状況および現況については以上です。
〇幹事社
ただ今の報告について、質問のある方いらっしゃいますでしょうか。
〇記者
終息に向かっている状況かと思いますが、現在、県が設置している対策本部の廃止の基準などを教えてください。
〇知事
注意報が解除され、所期の目的が達成されたと判断すれば対策本部も廃止となります。
〇記者
沿岸部を避けた地域では、経済活動は正常どおり行うよう市町村に伝達されたとのことですが、沿岸部では引き続き注意が必要な状況かと思います。この点について改めてお考えをお聞かせください。
〇知事
津波対策と経済活動のバランスが非常に重要だと考えています。津波の対策はもちろん必要ですが、同時に社会経済をいかに動かしていくかも大切です。
そのため、各市町村には、地域の実情に応じて、このエリアは危険、このエリアは避難すべき、といった判断をしていただいて、それ以外の地域については、基本的に通常どおりの社会経済活動を営んでいただきたいと考えています。
〇記者
まだ注意報が解除されていない段階でお聞きするのは時期尚早かもしれませんが、今回の津波対応を踏まえ、今後検証が必要と考えている点があればお聞かせください。
〇知事
今回の地震は、マグニチュード8.8という非常に大きなもので、超巨大地震と言える規模でした。3メートル以下の津波が来るという予測もありましたので、対応としては大きく構える必要がありました。実際、第一波と思われる津波の後、数時間後に最大の津波が到達したということを考えると、油断できない状況であったと考えています。
一方で、実際に観測された津波は40~80センチであったことを考えると、津波の予測精度をさらに高めてもらいたいと考えています。
今回、多くの県民の皆さまに避難していただきました。その一方で、社会経済活動が一時的に大きく縮小し、停止せざるを得なかったということもありました。このバランスをどのように考えていくのか、どのようにバランスのとれた対策や対応を行っていくのかということは、今後の課題として残ったと考えています。
〇記者
今回、対策本部会議を3回開催されていますが、いずれも非公開での開催となりました。改めて、非公開とされた理由をお伺いします。
〇知事
非公開とした理由は、会議の中で個人情報などが出る可能性があることに加えて、県民の皆さまにお知らせすべきなのはプロセスではなく結果だと考えているからです。
プロセスが切り抜かれて伝わるリスクもありますし、報道機関の皆さんとの関係で言えば、会議を公開したとしても最終的に「会議でどんなことがありましたか」という初歩的な質問が出ることもあります。そうしたことを踏まえると、結果についてしっかりとお伝えできれば、会議自体は公表しなくても良いと考えています。
〇記者
今後また別の災害が発生し、対策本部会議が開かれる際も、同じ対応になるのでしょうか。
〇知事
基本的には、今回と同様の方針で運用していきたいと考えています。
〇記者
今回、離れた地域で発生した地震による津波ということで、県内では揺れを感じなかったため、県民の皆さまにとって最初は実感しづらかった部分もあったかと思います。
避難指示が出された対象人数に対して、実際に避難された方の人数について、知事としてはどのように受け止めていらっしゃいますか。多くの方が避難したとお考えでしょうか。それとも、割合としては低かったとお考えでしょうか。
〇知事
率直な感想を申し上げると、多くの方に避難していただけたと感じています。地震の規模や津波の情報、また世の中の動きなど、今はそれぞれが多様な情報を自分で取得できる時代になっています。その点は、10年前、20年前とは大きく違っています。
そうした中で約2,600名もの方が避難されたというのは、多くの皆さまが危機感を持って行動してくれた結果だと考えています。
〇記者
県内ではありませんでしたが、全国的には避難所周辺で渋滞が発生するなど、避難に関する課題もあったかと思います。そういった点について、何か情報が上がってきていたり、今後さらに対策が必要だと感じていることはありますか。
〇知事
まだ市町村との詳しいやり取りはできていませんが、私が今回特に心配していたのは、青森県においても熱中症ということがあり得るのではないかということです。
昨日の夜の県内の気温を見ると、20度から25度くらいでしたので、西の方に比べるとそこまで熱帯夜感はなかったものの、日中も含めた避難所の熱中症対策というのは、夏の避難において青森県でも今後課題になってくると改めて感じました。
〇記者
それに関する対応は何か考えていらっしゃいますか。
〇知事
これから市町村とよく連携して考えていきます。
〇記者
繰り返しになりますが、今回の会議は非公開で行われました。公開で実施していただければ、細かな数字などを改めて説明する必要がなくなると思いますが、その点についてはいかがでしょうか。
〇知事
皆さんからそのような要望があれば、公開することも含めて検討していきたいと考えています。私自身、会議は原則として公開で行うべきだと考えていますが、状況によってはそれが難しい場合もあります。
今回はそうした場面はありませんでしたが、大規模災害時には、例えば「どこで誰が生き埋めになっている」、「どこで誰が流された」、「今、何人亡くなっていて、そのリストはこれだ」といった個人情報が飛び交うこともあります。
また、救助・救援の優先順位や、物資を届ける先の優先順位など、さまざまな判断が行われています。
報道機関の皆さんが善意で協力してくださって、ここの部分はオフにしてください、といったお願いをきちんと受け止めていただけるのであれば、公開も可能だとは思います。ここにいる皆さんは善意の記者かもしれませんが、県外などから多くの記者が来て、普段コミュニケーションを取っていない人たちも含めて殺到する中では、そうもいかない場合もあります。
そうした中で、会議の様子が公開され、発言の一部だけが切り取られて判断ミスではないかということが報道されると、私たちが本来やるべき対応がメディア対応によってできなくなるというリスクもあります。そうしたことを踏まえて、会議の結果をしっかりお伝えできれば特に問題ないと考えています。
昨日の本部会議を公表することは差し支えありませんが、場面によっては公表できないこともあり得るかもしれません。そのあたりは、皆さんとよくコミュニケーションを取って、改善すべきということであれば改善していきたいと考えています。
〇記者
漁船の沖出しに関連して伺います。八戸市など太平洋側では、東日本大震災の教訓を踏まえ、津波警報後に多くの漁業者が漁船の沖出しを行いました。当初は3メートル程度の津波の到達予測がありましたが、実際にはそこまでの規模にはならず、夕方には船を戻す漁業者も多く見られました。沖出しの関係で、課題に感じていることはございますでしょうか。
〇知事
現状、どのように沖出しをし、どのように帰ってきたかという事実関係について、私自身はまだ把握できておりません。そのため、そういった課題があるかどうかを申し上げられるだけの知見は、今のところ持ち合わせておりません。
〇記者
現在も太平洋側では津波注意報が継続しています。漁業者の皆さんに向けて、呼び掛けたいことはございますか。
〇知事
気象庁が伝えているとおり、やはり海岸や沿岸での作業は、まだ危険が伴う状況です。津波は、皆さまもご承知のとおり、普通の波とは違いますので、そこだけは気を付けていただきたいと考えています。
〇記者
話題は戻りまして、会議が非公開で行われたことに関係してお尋ねします。今回、災害対策本部会議室が新しくなって初めての災害対策本部の立ち上げとなりました。この本部会議室のスペースが狭くなったことによって、報道機関の入るスペースが少なくなったというところが影響しているのでしょうか。
〇知事
それも形式的な一つの理由ではありますが、それが実質的な理由ではありません。
〇記者
関連して、事務方の作業スペースと本部会議室は、現在別々に分かれていると思いますが、本部会議室をさらに広くするお考えはございますか。
〇知事
今回、より広いスペースを確保するために、今の場所に移しました。ただ、それでも報道機関のスペースを十分に確保できないという現状です。何度か訓練して、このような結論になりましたので、今後は報道機関の皆さんも訓練にご協力ください。
〇記者
知事は先ほど、避難者数が2千人台だったことについて、大変多くの方に避難していただいたと評価されていました。
釈迦に説法かもしれませんが、災害の警報を発する時に理想的なのは、「警報に従って多くの県民、市民が避難した。結果的に何も起こらなかったけど、それはそれで良かった」という理解が定着することです。
最悪なのは、警報が何回も出て、「ああ、やっぱり今回も何も出なかったな。じゃあもう避難しなくてもいいや」と慣れてしまい、その結果、重大な事態が起こってたくさんの人が犠牲になってしまうというケースです。
今回のケースに限って言えば、2千人という数字は、私はそこまで多くないと思います。今後、この2千人という数字についても検証がなされると思いますが、知事としてはどのようにお考えでしょうか。
〇知事
人数が多いか少ないかと聞かれたので、私は2,600人に避難していただいたことは多かったとお答えしました。これは過去との比較で多かったという話です。
大事なのは住民の方々とのリスクコミュニケーションだと考えています。先ほども申し上げましたが、まず必要なのは予測の精度を高めることです。3メートル以下の津波が来ると言って、実際には数十センチだったのはどうしてかということについて、気象庁には検証していただく必要があります。
それからもう一つは、市町村による避難指示の範囲です。3メートル以下の津波が来るという予測が出た段階で、大きく構えることはもちろん大切ですが、その後に3メートルではないことが分かった時点や、警報から注意報に切り替わった時点で、どのように避難指示の範囲を縮小していくのかも重要です。
そのような適切な予測、的確な避難指示であることが前提で物事が動いていきます。
今は個人で情報を取得し、判断することができる時代ですので、予測の精度を高め、適切なリスクコミュニケーションができるようになれば、避難指示に基づく適切な避難が可能になると私は考えています。
〇幹事社
それでは、その他の案件について知事から報告をお願いします。
〇知事
【「青森県子どもの生活実態調査」の分析について】
令和5年度に実施した「青森県子どもの生活実態調査」の分析結果をお知らせします。
まず、子どもの放課後の居場所に関してです。このグラフは、小学校5年生を濃い青、中学校2年生を薄い青で示しています。「自分の家」が一番多いですが、それ以外では小学生は「塾や習い事」、中学生はおそらく部活動の関係で「学校」の割合が高くなっています。
放課後一緒に過ごすことが一番多い人としては、「家族」が一番多いですが、それ以外では小学生では「一人でいる」、中学生では「友だち」が多くなっています。
次に、子どもの体験や子どもと保護者の関わり方についてです。「遊園地やテーマパークに行く」、「キャンプやバーベキューに行く」、「博物館・科学館・美術館などに行く」、「海水浴に行く」、「スポーツ観戦や観劇に行く」などの体験について、「ある」と答えた割合が高い順に上から並んでいます。遊園地・テーマパークについては、「経済的な理由でない」という回答が多く、海水浴やスポーツ観戦については、「時間の制約でない」という回答が多くありました。
子どもと保護者の関わり方について、「毎日朝食を食べさせている」が92.3%であり、7.7%の子どもたちは毎日朝ご飯を食べていない状況にあります。「授業参観や運動会などの学校行事への参加」をよくすると回答した保護者は81.2%でした。「学校生活の話をする」では「あまりしない」と「全くしない」があわせて5%でした。「小さい頃、絵本の読み聞かせをした」や「PTA活動や保護者会などの参加」をすると回答した割合も少なく、さらに「将来について一緒に考えたり話をする」は13.7%がしないという回答でした。
「勉強をみる」については3割以上、「本や新聞を読むようにすすめている」については半数近くがしないと回答しています。「政治経済などのニュースの話をする」と回答した人は7割ほど、「からだを動かして遊ぶ」と回答した人は半数ほどでした。
次に、保護者の支援制度の利用等の有無について、「学習支援」を利用したいと回答した人が58.9%、「居場所づくり」は43.3%、「食料支援」は38%、「子ども食堂」は36.5%であり、いずれの支援もニーズがあるということが分かりました。
子どもが使ってみたい居場所について、「勉強、家族のことなど、なんでも相談できる場所」や「大学生のボランティアが勉強を無料でみてくれる場所」、「家で勉強できない時、静かに勉強ができる場所」、「夕ごはんをみんなで食べることができる場所」、「休日にいることができる場所」、「平日の放課後に夜までいることができる場所」を使ってみたい・興味があるとの回答が4~6割で、子どもが居場所を求めていることが分かりました。
まとめとしては、子どもが放課後を過ごす居場所等には、社会経済的背景が影響していること、両親の学歴が家庭内での学びへの投資や家庭外での活動への支援を通じて、子どもの進学意欲や勉強意欲に影響していることがわかりました。
分析を踏まえた考察としては、子どもが、社会経済的背景に左右されずに居場所や成長の機会を得ることができる仕組みづくり、保護者が子どもと関わる時間や機会を増やせる取組、子どもが将来の幅広い選択肢を持つための県民所得向上を目指した取組が必要と考えられます。今回の分析結果を踏まえて、来年度の事業の構築を行うほか、市町村とも共有して、市町村の施策にも生かしていただきたいと考えています。
【青の煌めきあおもり国スポ・障スポの開催に向けて】
青の煌めきあおもり国スポ・障スポの開催に向けたお知らせ、お願いです。
国スポ・障スポ開催1年前イベントとして、子どもたちを対象としたトップアスリートによるスポーツ教室が開催されます。
日時は9月21日の11時から15時、場所は青森市のカクヒログループスーパーアリーナです。主催は日本スポーツ協会とミズノスポーツ振興財団です。
総合司会は競泳メダリストの大橋悠依さんと寺川綾さんが務めるほか、本県にもゆかりのある卓球の福原愛さんや、バレーボールの迫田さおりさん、体操、空手、陸上の選手にもお越しいただいて、子どもたちに競技の楽しさや技術を伝えていただきます。
イベントの詳細は明日8月1日からホームページに掲載され、8月5日から17日の期間で応募を受け付けます。会見をご覧の皆さまの中で、お子さんやお孫さんがいる方はぜひご参加ください。この後、LINE等でもご案内させていただきます。
次に、情報支援ボランティアの募集についてです。手話ボランティアと筆談ボランティアを募集していますが、特に筆談ボランティアが不足しています。応募要件は、12歳以上で国スポ・障スポの活動日に参加可能な方で、手話や筆談に関心のある方です。ホームページの応募フォームから応募できますので、ぜひご応募ください。いずれも研修会を開催し、どなたでもボランティア活動ができるようにしていきますので、よろしくお願いいたします。
最後に、今月の競技別リハーサル大会は、ハンドボール、相撲、オープンウォータースイミングの3競技が開催されます。青森市と十和田市で開催いたしますので、お時間のある方はぜひ会場に足をお運びください。
【カスタマーハラスメント対応マニュアルの策定について】
カスタマーハラスメント対応マニュアルを策定いたしました。県民の皆さまにもご理解とご協力をいただきたく、マニュアルの一部を紹介いたします。
カスタマーハラスメント対策は、働き方改革の一環として、働きやすい環境づくり、職員のやりがい・働きがいの向上のためスタートいたしました。職員アンケートの結果、カスタマーハラスメントを受けたことがあると回答した職員が回答者数の46.8%と、ほぼ半数でした。その実例としては、「今すぐ包丁を持って来ておまえを殺してやる」と言われた、来庁者から、自分の言い分が通らないことに腹を立てて「日本語分かるか?」等の暴言があり、机を叩きながら約1時間同じ内容を詰問されたというようなことがありました。
こうしたことに対して組織として毅然と対応していくため、カスタマーハラスメント対応マニュアルを策定したところです。
まず1つ目として、マニュアルでは、職員が県民や事業者の方に対応する際の基本的な心構えを定めています。職員は県民目線で、県民の方からの要求や苦情を県政の改善や課題解決につながるものという意識を持つことが重要です。そのため、県民の皆さま一人ひとりに誠意をもって、丁寧かつ親切に対応することを、対策の第1項目として職員には徹底してもらうようにしました。
カスタマーハラスメントの定義や判断基準ですが、「社会通念に照らし、要求や苦情の内容が妥当でないもの」または「その要求や苦情を実現する手段・態様が不相当なもの」としています。「殺してやる」などの脅迫や、「県庁が古いからどこかに建て替えろ」など実現が困難なことを強引に要求するものなどについては、カスタマーハラスメントとして対応します。
カスタマーハラスメントへの対応ですが、まず現在、電話の通話録音の準備をしており、今年度中をめどに開始する予定です。また、毅然とした対応をとっていくこととし、対応時間の目安を電話は30分、面会は60分とします。なお、この時間にならなくても、暴行や脅迫を伴うなど、カスタマーハラスメントの定義に該当する場合には、対応を打ち切ることもあります。
また、組織として対応していきます。相手と面談する場合は、1人で対応せず、複数で対応していきます。そして、悪質な場合は警察や弁護士への相談を行います。
カスタマーハラスメントの対策を行う上で、県民の皆さまに誠実で、丁寧かつ親切な対応ができていることが大前提となります。今後も、職員の接遇の品質向上に努めてまいりますので、県民の皆さまのご理解とご協力をお願い申し上げます。
【質疑応答(報告案件について)】
〇幹事社
それでは、ただ今の報告に対する各社からの質問を受けたいと思います。質問のある方は挙手をお願いします。
〇記者
子どもの実態調査についてお尋ねします。こちらは人口減少対策推進本部会議の中で取り上げられた案件だと理解していますが、人口減少対策との関わりをどのように考えていらっしゃるのか、所感をお伺いします。
〇知事
子どもの居場所があり、子どもが伸び伸びと生活できる環境が整っているということは、青森県が子育てのしやすい環境、子どもを産み育てやすい環境であるということであり、若い人たちがここで子どもを育てたいという気持ちになり、その結果子どもが増える、というつながりがあると考えています。
〇記者
主な結果の部分、子どもの体験や子どもと保護者の関わり方についてご説明いただきました。結果について、知事の率直なご所感をお伺いします。
〇知事
やはり居場所を求めているというのが、私の率直な感想です。そして、多様な居場所が必要だということもよく分かりました。子どもの数が少なくなっていて、子どもたちは社会全体のマイノリティになってしまっています。
私たちが子どもの頃には、いろいろなところに居場所がありましたが、今の子どもたちは居場所が少なく、社会的に提供する場面に来ていると考えています。
〇記者
この調査結果は、新年度予算に向けたさまざまな検討材料になるかと思います。ターゲットとなる県民の属性としては子どもと保護者になると思いますが、現状でどのような方向性の取組をお考えでしょうか。
〇知事
やはり居場所や成長の機会を得ることができる仕組みづくりや、保護者が子どもと関わる時間や機会を増やせる取組が必要です。
これは子ども政策だけではなく、労働政策や働き方全般にも求められていることだと思いますので、そのあたりが政策のターゲットになってくると考えています。
〇記者
今、知事も言及されたように、社会全体でそういう気運を作っていくのもそうですが、保護者の努力だけではどうしても足りない部分を県が埋めていくという視点も重要になってくると思います。そのあたり、県としてどのような形で取り組んでいきたいとお考えでしょうか。
〇知事
基本的なコンセプトとしては、青森県で生まれた子どもたちが、家庭環境などに左右されることなく、等しく成長の機会や居場所を持つことが重要だと考えています。
そのうえで、子どもたちには夢を大きく持ってもらい、世界へ羽ばたいてほしい。そして、羽ばたいた先に青森がある、という環境を作ることが大切だと考えています。
〇記者
両親の学歴が関係するという点について、もう少し詳しく教えてください。
〇知事
担当部局からお答えします。
〇総合政策部
両親の学歴との関係ですが、例えば両親が大学卒である家庭の方が、塾や習い事に通わせたり、家庭で子どもの教材を購入したりするなどの割合が高い傾向にあります。そういったことが、子どもの進学意欲に影響を与えていることが見られました。
〇記者
先ほど、子どもたちが居場所を求めているという受け止めをおっしゃっていました。具体的には、放課後の居場所として学校や塾が多く、一緒に過ごすのは友だちや一人という回答が多かった点から、そのように思われたのでしょうか。
〇知事
「子どもが使ってみたい居場所」のところで、半数近くの子どもたちが、なんでも相談できる場所や勉強できる場所を求めていました。また、平日の放課後に夜までいられる場所という回答も多く、家ではない場所にいたい子どもがこんなにいるのだということが分かりました。
これは政策を考える上で参考になりますし、特に市町村において活用できると考えています。
〇記者
分析を踏まえた考察のところで、「保護者が子どもと関わる時間や機会を増やせる取組が必要」とあります。知事も従来からおっしゃっているように、県庁という組織は県内でも非常に大きな事業体であり、行政が範を示す立場にあるかと思います。「隗より始めよ」という観点から、県庁職員が保護者として子どもと関わる時間を増やすための取組、例えば制度を変えるといったことは検討されているのでしょうか。
〇知事
今のところ検討していることはありませんが、庁議などにおいて、夏季休暇をしっかり取得することや男性職員の育休取得を100%にしようという話はしています。
また、教育委員会で職員の子どもたちを職場に連れてくるという取組がありますので、詳細は教育委員会からご説明します。
〇教育委員会
8月5日に、保護者参観日として、教育委員会の職員のお子さんたちを県庁に招いて、親の働いている姿を見てもらうことを予定しています。当日は、知事室にも立ち寄ることにしており、お子さんと保護者合わせて50名くらいの規模で開催します。
〇知事
そのような取組がスタートしています。
〇記者
カスタマーハラスメントの件で、2点お伺いします。
まず、カスタマーハラスメントの定義や判断基準が示されましたが、実際にカスタマーハラスメントであると判断するのは誰なのでしょうか。もしくは部署ごとに判断するのでしょうか。
〇知事
それぞれ対応している職員が判断することになりますので、「今こういう状況なのですが、カスタマーハラスメントかどうか判断してもらえますか」と誰かに確認するというものではありません。
〇記者
相談に来られた県民の方と職員の間で意識の齟齬が生じ、県民からしたらカスタマーハラスメントではないのに、その声を潰されてしまうのではないかという懸念もありますが、この点についてはいかがでしょうか。
〇知事
そのため、まず前提として、県民の皆さまからの苦情や要求には真摯に耳を傾ける必要があります。過度な要求というのは明らかに分かります。「これをやらないのであればお前は死ね」などの発言や、机を叩く、資料を投げるなどはどう考えてもカスタマーハラスメントです。
これまではこのような基準がなかったため、職員が耐え忍ぶしかないという状況でした。よく話題になっているのが、県外から「クマを殺すな」という電話が何時間もかかってくるというケースですが、そのようなものは5分で切って良いと考えています。
しかし、県民の皆さまからの「こういうことをしてほしい」、「こういうお願いがある」という一般的なものはハラスメントには該当しませんので、県民の皆さまのご意見をしっかり聞くことを徹底していきますので、その点はご理解ください。
〇記者
対応時間の目安を、電話30分、面会60分とするとのことですが、いつぐらいから実施する予定でしょうか。
〇知事
すでに実施しています。
〇記者
電話をかけてくる人は30分と知らずにかけてくると思いますが、電話は30分、面会は60分という周知はどのように行っていくのでしょうか。
〇知事
今日のこの会見も、周知の一環になると考えています。また、そもそもカスタマーハラスメントに該当する場合に対応を打ち切るというものであり、カスタマーハラスメントでない場合にはしっかりと話を聞くことで長時間になることはあります。
ただ、ビジネスの経験上、電話であれば30分、面会であれば60分あれば、大体の用件は終わると考えています。カスタマーハラスメントに当たらないものについては、この目安にかかわらずしっかり対応していきます。
【質疑応答】
〇幹事社
報告以外の案件に対する質問に移ります。まず幹事社から質問いたします。
先週、本県で初となる全国知事会議が開催されました。会議では人口減少をはじめとしたさまざまな課題について意見が交わされ、その成果が「青森宣言」として取りまとめられました。全国知事会を終えての知事の所感を改めて伺います。
〇知事
まず初めに、全国知事会議の開催にご協力いただいたすべての皆さまに感謝申し上げます。また、報道機関の皆さまにも、たくさん取り上げていただいたことに感謝申し上げます。
今回は、参議院選挙の直後というタイミングで、国政の流動化、あるいは不安定化が予測される状況での開催となりました。
現場の最前線で県民の皆さまの暮らしに向き合う全国の知事が一堂に会し、少子化や人口減少、物価高騰対策といった喫緊の課題に限らず、今後の我が国や地域の未来について真剣に議論が行われました。
47都道府県の知事が、共通認識や共通課題をしっかりと共有できたことは、大きな意味があったと考えています。
また、3日間の成果として、「青森宣言」が取りまとめられ、青森の歴史や文化、産業について盛り込めたことは、非常に意義があったと考えています。
私自身も、こども・子育て、診療報酬制度、国土強靱化、年金制度、最終処分地の選定、さらには大分県知事から提案のあった整備新幹線についての反論など、積極的に提言や発言をさせていただきました。自分にとっても非常にいい機会であったと考えています。
今回の知事会議では、国政選挙では見落としがちだった地方の重要論点にも光を当て、国をも先導していく道しるべとなる宣言ができたと考えています。
おもてなしも含めて青森らしさも発揮でき、自分としても記憶にも記録にも残る、そうした知事会議になったと振り返っています。
〇記者
先日行われた参院選について伺います。まず投票率についてですが、県内の投票率は54%ほどで、全国平均の58%と比べて依然として低い状況にあります。それについての受け止めと、これまで県として投票率向上に向けた取組を行ってきたものの、結果として結びついていないことについて、何か検証などを行う予定はありますか。
〇知事
絶対値としては上がっていますが、相対的には全国より低かったということで、その部分については非常に残念に思います。
これまでの取組が結びついていないかどうかについては、検証が必要だと考えています。今回は全国的に若い人たちが積極的に参加した選挙でしたが、青森県はその流れに追いつけなかったという部分は反省すべき点だと考えています。
〇記者
参院選の結果について、自公の与党が参議院でも過半数割れとなりました。こうした結果についてどう受け止めていらっしゃるのかということ、知事が先ほどおっしゃったように国政が不安定化している中で、今後、県政発展のためにどのように国や各政党と向き合っていくお考えでしょうか。
〇知事
「与うるの取るたるを知るは政の宝なり」という言葉のとおり、まずは結果をしっかり受け止めることが重要です。その上で、今後どう向き合うかといえば、やはり政権とどう関係を築くかに尽きると考えています。石破政権が続くのかどうか、新たな与党の連立が生まれるのか、あるいは野党の連立でいくのかなど、非常に流動的な要素があるので、誰も予測できないでしょう。いずれにしても、政権とどのように連携していくかが大事だと考えています。
〇記者
参院選に関連して、青森選挙区では、立憲民主党の新人・福士さんが当選し、自民党現職の滝沢さんが再選を逃すという結果になりました。青森選挙区の結果に対する知事のご所感を伺います。
〇知事
特にありません。県民の皆さまが選んだ結果として受け止めています。
〇記者
福士さんに期待することや、これから知事としてどのように向き合っていくかについてお伺いします。
〇知事
一議員に対しての思いは特にありません。向き合い方については、先ほど申し上げたとおり、私は政府、政権とどう向き合っていくかということを考えていくべきだと思います。
〇記者
政権についてお伺いします。石破総理の進退に関して、与野党含めて盛んに議論されています。この総理の進退に対して、知事のお考えをお聞かせください。
〇知事
総理の進退に対して、私自身がどう考えるかということは特にありません。政治家の出処進退は自らが決めるべきものです。自ら立候補して衆議院議員になり、自ら立候補して総裁になり、自ら立候補して総理になっていますので、その出処進退は本人がしっかり考えるべきことです。これから日本をどのように導いていくのかということを前提に本人が考えるべきことであり、知事として何か口を挟む余地はないと考えています。
〇記者
参院選関連でお伺いします。先ほど、今後の対応としては政権とまず向き合っていくことだというお話もありましたが、改めて、自公が過半数割れした原因について、有権者のどういった思いが背景にあったとお考えでしょうか。
〇知事
先ほども申し上げたとおり、「与うるの取るたるを知るは政の宝なり」です。
〇記者
その意味が、そのまま知事の受け止めということですか。
〇知事
そのとおりです。民意がどこにあるのかを政策で表現することが大事であり、それがなかなか難しかったのではないかと考えています。
〇記者
政策に関連してお伺いします。年内にもガソリン減税が実施される見通しとなっています。また、まだ決まってはいませんが、参院選では消費税減税の議論もありました。
改めて、ガソリン減税についての知事の受け止めと、消費税減税の是非についてお伺いします。
〇知事
まずガソリン税の減税については、既に合意され、11月以降に実施することが決まったと理解しています。もう決まったことですので、私自身が何か申し上げる立場にはありませんが、そのこと自体は評価できると考えています。
青森県内では車で生活している方が多く、ガソリン税が25円程度減ることは、物価高騰対策として一定の効果があると考えています。現在は補助金で10円程度減っていますが、補助金を廃止して暫定税率を引き下げれば、今より15円程度ガソリンの値段が下がる見込みです。
ただ、中東情勢によってはガソリンの値段がまた上がる可能性があり、その効果が吸収されてしまう可能性もあります。また、減収分をどのように穴埋めしていくか、しっかりとした見通しが立たなければ、マーケットの信頼が得られなくなります。例えば国債を発行する場合は、国債の金利が上がったり、あるいは円安に振れたりすると、さらなるインフレや円安を招くことになり、経済的にマイナスになる可能性があります。この点には注意が必要です。
もう一つ、地方税が減収する分をどう考えるかということについて、無理やり地方も減らせと言われれば、これはもうやるしかないという部分はあります。ただ、地方税収を減らすということは、結果的に地方の支出を減らさざるを得ないということであり、総需要が減って経済にとってはマイナスになるということがあり得るので、地方税収の減については国は何らかの措置をしなければならないと考えています。
次に消費税について、基本的に私は引き下げに賛成の立場です。ただ、何のためにやるかという目的が非常に大事だと考えています。物価高騰対策だとした場合、青森市内の消費者物価は2020年比で12%上がっていますので、仮に10%減らしたとしても5年でその分は吸収されてしまう可能性があります。そのため、物価高騰対策という部分では少し限界があると考えています。
それでは、なぜ賛成するかというと、日本経済は打つ手を失っているので、そうした中で景気経済を刺激する一つの策として減税はあり得ると考えています。そのため、食品だけゼロにするのではなく、一律で下げることが求められると考えています。
これもガソリン税と同様です。仮に消費税を引き下げ、その財源を国債だけに頼るようになると、マーケットの信頼を失い、国債発行によって金利が上昇し、円安が進行する可能性があります。その結果、経済が縮小するおそれがあります。そのため、プロセスや方法を明確にしながら進めていく必要があると考えています。
地方税収分を減らせと言うのであれば、それは行革を進めて減らすしかありませんが、それをやってしまうと総需要が減ることになり、経済にとってはマイナスになるので、やはり地方財政分というのは何らかの措置が必要だと考えています。そうしたシナリオをしっかり描き切れれば、これはいい経済政策になる可能性があると考えています。
イギリスでリズ・トラスが減税政策を行った際、マーケットの信頼を得られずに大失敗に終わりました。同様のことが日本で起こるのではないかという議論もありますが、日本の場合は、国債は日銀が買い取る仕組みになっており、イギリスとは状況が違うので、トラスショックのようなことは直ちには起こりません。ただ、やはりマーケットの信頼を得ながら進めること、金利の動向を見ながら進めること、為替の動向を見ながら進めることが大事だと考えています。
また、減税の前には買い控えや駆け込み需要が生じるため、その調整も必要です。
なかなか大変だと思いますが、国民のために与野党はしっかり合意形成してほしいと考えています。
〇記者
ガソリン税の減収について、政府の試算では青森県分で73億円という数字もございます。消費税も減税となれば、地方への分も減ることになりますが、知事は先ほど行革をするしかないとおっしゃいました。政府からの補塡がなくても、行革等でやりくりできる範囲内ということでしょうか。
〇知事
「行革でやる」と言ったわけではなく、やれと言われればやらざるを得ない部分はありますが、大事なポイントは総需要です。例えば70億円減収になるということは、その分私たちが支出をしないことになります。そうすると青森県内で70億分、経済活動が縮小することになります。消費税の減税は経済活動が活性化につながると言われますが、国全体で何兆円、何十兆円もの減収となれば、その分経済が縮小してしまいます。そうなると、消費税を減らして物価高騰対策や経済対策を行っても、結局は効果がなくなってしまいます。
そのため、消費税の減税によって経済成長を図るのであれば、地方の収入を減らすべきではないということです。
〇記者
地方への手当なしには、消費税減税は反対であるということでしょうか。
〇知事
そのような二項対立の話ではなく、私たちもある程度の行革をやった上で、一部負担してほしいということであればそれは許容できますが、許容できる範囲は、現時点では議論できません。
きちんと地方の収入が確保された形でなければ、政府支出が減って総需要が減るため、経済対策にはならないという話をしています。地方の収入を確保した上で、経済政策や景気浮揚政策として消費税を減税することについては、反対する理由はありませんし、むしろ他にやれるべき大規模な経済政策が無いならやってみるのは大事だと考えています。その時に、マーケットの動向をきちんと監視しながらやらないと、国民経済が不幸になるよという注意喚起をしています。
〇記者
消費税減税の手法について、知事は一律に行うことが求められるとおっしゃいました。もう一つの論点として、時限措置か恒久的措置かという点がありますが、これについてはどうお考えですか。
〇知事
それは今後の議論をしっかり見ていきたいと考えています。私のイメージは恒久ではありません。恒久であれば、それは経済対策ではなくなります。経済対策でやるとすれば、期間がどれぐらいかというのは別としても、期間は設定されるべきだと考えています。
〇記者
青森宣言に盛り込んだ「財源なき減税はつけを回すような政策」という文言は、知事の考えに相反するものではないのでしょうか。
〇知事
もちろん相反しません。国債発行は無限にできる、税は財源ではない、というMMT(現代貨幣理論)の考え方もありますが、それだけに頼ってマーケットの信頼が得られるかどうかは、世界で誰も試したことがない経済政策です。
そこまで極端でなくても、ある程度の国債発行を前提に消費税減税を行った場合でも、確実にマーケットの信認を得られなければ、結局は国民経済が不幸になるという話をしています。
青森宣言では「将来につけを回す」ことになると言っており、財源として国債発行が無制限に行われないことは大事なことだと受け止めています。
〇記者
「与うるの取るたるを知るは政の宝」とは、減税を国民に与えて議席を取ったという解釈なのでしょうか。
〇知事
そういうことではなく、むしろ国民が望んでいる政策や先々の見通し、将来像を提示することが政治の本来の役割だと考えています。
それができたかできなかったかで結果が分かれたのではないかということを、管仲の言葉で表現しているとご理解ください。
〇記者
先ほど総理の出処進退は政治家個人で決めることだとおっしゃいました。もう少し俯瞰してみると、自民党の中で続投したい総理、そして総理に退陣を求めたい動き、自民党の中で目まぐるしく動きがあります。それを知事としてどのようにご覧になっているか、お伺いします。
〇知事
自民党内の動きについては、国民からの理解は得られないと考えています。さまざまな動きはありますが、やはり総理が決めるということが大事だと考えています。
やりたいからやるということではなく、こういう日本にしたい、今回これを実現する、ということが必要であり、徹頭徹尾、総理の意思が大事だと考えています。
〇記者
話題変わりまして、アメリカ、トランプ大統領の関税政策についてお伺いします。
相互関税15%で合意し、発動がおそらく8月1日であろうという見込みですが、こちらの合意について知事の所感をお伺いします。
〇知事
もともと無理な話をしていたので、交渉は大変だったと思います。
いきなり関税を上げることに根拠はなく、WTO(世界貿易機関)やFTA(自由貿易協定)など、これまでいかに関税をゼロにし、国際的に水平分業して経済公平を高めていくかということが、ミルトン・フリードマン以降の基本的な経済原則でしたが、それを完全に無視しています。
ただ、アメリカらしいとも言えます。もともとアメリカはモンロー主義の国で、第一次世界大戦にも関与しないという時期がありましたから、そのような初期のやり方が復活したようだと私は受け止めています。
大事なことは、県内企業にどのような影響があるかということです。アメリカへの輸出額は本県の輸出額全体の5%であり、それほど高くはありません。農林水産品や製造業品も高付加価値のものが多いため、大きな影響はないと見ていますが、事業者の皆さまにとっては一定の影響があると思いますので、そうしたところをしっかりフォローしながら必要な措置を講じるかどうか、これからよく検討して見極めていきたいと考えています。
〇記者
青森県では、新たな輸出先としてアメリカにも力を入れ、駐在員を置くなどの対策もしているかと思います。アメリカを新たな販路開拓として捉えるにあたって、今回の関税はどういう影響があると思いますか。
〇知事
現時点で、新たな販路開拓の中心となるのが農林水産品や加工品です。関税がオンされた形で販売し、テストマーケティングを行うことになります。条件が変わったと理解し、それでも販売できる商品をこれから選抜していく形になると考えています。
〇記者
先ほど知事からも、中小企業の輸出に関わる事業所をフォローしたいというお話がありましたが、今後具体的にどういった対策や取組を検討されていますか。
〇知事
まず、既に製造業の事業者は具体的に輸出を行っている部分がありますので、その影響について改めてヒアリングを実施する必要があると考えています。
これが県として対応すべきものなのか、国が対応すべきものなのか、あるいは国の交付金等を活用して県が対応すべきものなのか、または財政支援なしに何かできることがあるのかは、今後の検討課題です。
相互関税は明日からスタートということですから、その辺は様子を見ながら対応したいと考えています。
〇記者
参院選の話に戻ります。一昨日、福士議員と面会なさったと思いますが、どのようなお話をされたのでしょうか。
〇知事
当選のお祝いを申し上げました。また、その場には立憲民主党の議員の皆さまもいらっしゃいましたので、今後どのように活動していくかについてご説明いただきました。
〇記者
中にいらっしゃった方から、知事が期待感を示されたというお話がありましたが、具体的にどのような期待感をお持ちなのでしょうか。
〇知事
期待感というよりは、いろいろなお話をさせていただき、新人の議員ですから「頑張ってください」という激励を申し上げました。受け止め方は皆さんそれぞれ違うと思います。
〇記者
話題が変わって、最低賃金についてお伺いします。政府が6月にまとめた骨太の方針では、最低賃金について着実に引き上げ、2020年代に全国平均1,500円という高い目標に向かってたゆまぬ努力を続けるとされています。
この政府方針に対する知事の受け止めをお願いします。
〇知事
最低賃金は上がった方が良いと考えています。
〇記者
2020年代に最低賃金を全国平均で1,500円にするには、毎年度約7%の改定が必要となる計算です。
労働局の資料によると、2015年度から2024年度の間で一番低い年は2020年度の0.4%、一番高い年は2024年度の6.1%ということで、7%には程遠い状況です。
こういった状況の中で、政府方針の実現の見通しと、最低賃金1,500円の課題についてお伺いします。
〇知事
見通しについては、やると言っているのだからやるのでしょう。
課題については、やはり経営者側の判断や限界値もあると思いますので、そのあたりを審議会の方でしっかり議論していただくということだと考えています。
〇記者
関連して、今年の骨太の方針では、各都道府県の地方最低賃金審議会が中央最低賃金審議会の目安を超える最低賃金に引き上げを行った場合、交付金などを活用して都道府県のさまざまな取組を十分に後押しするということも盛り込まれています。
このことについての評価と受け止めがあればお願いします。
〇知事
そもそも地方の審議会に対して私には何ら権限がありませんので、そのことについて私から申し上げることはできません。最低賃金の決め方について、担当からお伝えします。
〇こども家庭部
基本的には、地方の最低賃金審議会で各代表が審議して、最終的には労働局長が決めるということになっています。他県では意見を出した県もありますが、労働局長が決めています。
〇知事
最低賃金は知事が決めるものではなく、労働局長が決めるものなので、そこに私が申し上げることはありません。
〇記者
先ほど知事からも企業経営者側のさまざまな見解があるとお話がありましたが、最低賃金を上げることは企業経営を圧迫することもなると思います。特に青森県では中小企業が99%以上を占めている中で、最低賃金の引き上げが県内の中小企業の経営体力を大幅に削ぐ可能性もあります。
最低賃金の引き上げに関して、県として中小企業に対する財政的支援の必要性をどのように考えているか、見解をお聞かせください。
〇知事
そういった支援を始めるとキリがないと思います。
外部の環境が変わった時に、それが企業を苦しめる状況になるのか、イノベーションや変革のきっかけになるのか、受け止め方はどちらかだと思います。生き残るためには、それぞれ考えるべきことだと思いますし、いろいろな考え方があると思います。
〇記者
昨日の地震と津波の件に戻ってしまいますが、災害救助法の申請を迅速に行った理由について、改めて教えてください。
〇知事
内閣府から「青森県はどうしますか」と声を掛けられた際、その時点で避難所が90箇所ほど設置されていました。そのため、適用を躊躇する理由はないと判断し、適用いたしました。
〇幹事社
最後に知事からお願いいたします。
〇知事
まだ注意報が発令中ですので、発令されている地域の沿岸の方や海岸で作業をされる方は、十分に注意してください。
注意報は出ていますが、いよいよ夏祭りのシーズンとなりました。私自身も明日から、三社大祭、それから弘前ねぷた祭りをはじめに、平川、大湊、五所川原、青森、黒石へと伺います。また、鰺ヶ沢で4年に一度開催される白八幡宮大祭にも行きますし、おしまこ流し踊りも参加予定です。各地でお祭りに参加させていただき、発信しながら盛り上げていきたいと思いますので、ぜひ皆さまもいい夏をお過ごしください。
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