青森県手話言語条例  (前文) 手話は、手指や体の動き、表情等により表現される、音声言語とは異なる独自の体系を有する言語であり、ろう者が生活を営むため大切に育み、受け継いできた文化的所産である。  しかし、明治十三年にミラノで開催された国際会議において、ろう教育では読唇及び発声の訓練を中心とした口話法で教えることが決議され、その後、我が国でもろう学校で口話法が用いられることになり、手話の使用が制約されるなど、長年にわたり手話が言語として認められていなかった過去がある。  このような中、障害者の権利に関する条約及び障害者基本法において手話が言語であることが明確にされたところであり、本県においても、ろう者が手話を使用して日常生活や社会生活を安心して営むことができるようにするため、ろう者が手話を使用しやすい環境の整備に、県、市町村、県民等が一丸となって取り組んでいかなければならない。 このような認識に立ち、私たちは、手話についての理解及びその習得の促進を図り、誰もが安心して暮らすことができる共生社会を実現するため、この条例を制定する。 (目的) 第一条 この条例は、手話についての理解及びその習得の促進について、基本理念を定め、並びに県、県民及び事業者の責務を明らかにするとともに、手話についての理解及びその習得の促進に関する施策の基本となる事項を定めることにより、手話についての理解及びその習得の促進に関する施策を総合的かつ計画的に推進し、もってろう者とろう者以外の者が相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の形成に寄与することを目的とする。 (定義) 第二条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。 一 手話 ろう者が日常生活又は社会生活において手指の動き、表情等により思想、感情等を表現するために使用している言語をいう。 二 ろう者 聴覚障害者のうち、手話を使用して日常生活又は社会生活を営む者をいう。 (基本理念) 第三条 手話についての理解及びその習得の促進は、ろう者とろう者以外の者が相互に人格と個性を尊重し合いながら共生することが重要であるとの認識の下に、次に掲げる事項を旨として行われなければならない。 一 手話についての理解を深めるための機会及び手話を習得する機会の確保が図られること。 二 県、市町村、関係機関及び関係団体が相互に連携し、及び協力すること。 (県の責務) 第四条 県は、前条に定める手話についての理解及びその習得の促進についての基本理念(以下「基本理念」という。)にのっとり、手話についての理解及びその習得の促進に関する基本的かつ総合的な施策を策定し、並びにこれを実施するものとする。 (県民の責務) 第五条 県民は、基本理念にのっとり、手話及びその習得の必要性についての理解を深めるよう努めるとともに、県が実施する手話についての理解及びその習得の促進に関する施策に協力するよう努めなければならない。 (事業者の責務) 第六条 事業者は、基本理念にのっとり、手話及びその習得の必要性についての理解を深めるよう努めるとともに、その事業活動に関し、県が実施する手話についての理解及びその習得の促進に関する施策に協力するよう努めなければならない。 (学校等の設置者の取組) 第七条 ろう者である児童、生徒及び幼児等(以下「児童等」という。)が在籍する学校、保育所等の設置者は、当該児童等が手話で学ぶことができるようにするため、当該児童等の教育に携わる教職員に手話に関する知識及び技能の向上のための研修を受けさせるよう努めるものとする。 (習得の機会の提供) 第八条 県は、手話の習得を必要とする聴覚障害者及びその家族等並びにろう者の家族等が手話を習得することができるようにするため、その機会の提供等必要な措置を講ずるものとする。  (県民等の理解の増進) 第九条 県は、手話についての県民及び事業者の理解を深めるため、学習の機会の提供、広報活動の充実等必要な措置を講ずるものとする。 (支援) 第十条 県は、手話についての理解及びその習得の促進に関する活動を行う県民及び事業者に対し、必要な助言及び協力その他の支援措置を講ずるものとする。 2 県は、市町村が手話についての理解及びその習得の促進に関する施策を実施する場合には、必要な助言及び協力その他の支援措置を講ずるものとする。 (財政上の措置) 第十一条 県は、手話についての理解及びその習得の促進に関する施策を推進するために必要な財政上の措置を講ずるよう努めるものとする。 附 則 この条例は、公布の日から施行する。