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更新日付:2014年9月1日 県民活躍推進課

青森県女性ロールモデル 冨山月子さん

女性であること、それ自体がチャンスです。
既存の考え方や従来の慣習にとらわれず、独自の発想でチャンスをつかんでください。

冨山月子さん
青森県医師会 常任理事
内科おひさまクリニック 院長
冨山 月子さん(青森市)

【プロフィール】
 大学卒業後、県内の公立病院の内科医として勤務する。24時間対応の働き方をしていたが、子育てと介護が重なったことをきっかけに、自分で時間を調節して働ける開業医の道を選択する。
 また、平成22年より青森県医師会常任理事として、女性医師の支援にも力を入れている。

冨山月子さんの主な分野 「起業」「NPO・ボランティア」「専門職・研究職」

チャレンジのきっかけは?

「24時間呼び出し体制」から「自分で時間を調節できる働き方」へ

 平成17年の冬に開業するまで、私は公立病院の内科医として24時間いつでも呼び出し体制で働いていました。夫は単身赴任で働いていたので、子どもたちの面倒はほとんど私の両親や夫の両親に見てもらっていました。子どもが小学生のときに、実母が病気になってしまったので、「今まで子どもの面倒を見てもらったのだから、これからは私が親の面倒を見よう」と思ったのです。

 医師をしていて一番大変なのは、時間の区切りがないということです。それまでは、ずっと病院にいなければいけない、24時間いつでも病院の呼び出しに対応できるのが当たり前という考えでいましたが、子育てと介護をしなければいけなくなったため、医師を続けながら、全く別なやり方はないかと考えた結果、自分で時間を調節しながら働ける開業医を選択しました。

これまでのみちのり

スペインでの主婦生活

 長女が2歳、長男が0歳のときに、子育てのために医師を辞めて夫の赴任についていき、スペインで3年間主婦をしていた時期がありました。

 日本では、親が働いていてもいなくても、子どもを他人に預けるのは可哀想だと言われますが、スペインでは違います。逆に、幼稚園に預けていた子どもをお昼に迎えに行くと、「連れて帰るのは可哀想よ。子どもは子どもで社会性を身につけてみんなで遊ぶ時期なのだから、夕方まで置いていったらどうですか」と言われます。母親がずっとそばにいて子どもの世話をしなければいけないという考え方がないのです。

 また、スペインでは、夫婦の単位で子どもを育てるのではなく、地域社会(幼稚園、ベビーシッターも含めて)や祖父母、兄弟、親戚など大家族で子どもを育てるという雰囲気があります。日本も昔は大家族でした。大家族の中で小さい子どもの面倒を見てきたことがある人ならば、子育てもなんとなく分かるかもしれませんが、現在は、子どもに接したこともないのに、いきなり父親・母親になって「さぁ頑張りなさい」と言われても、経験がない仕事を、自己責任で全うしなさいと言われるようなものです。親だけが子育てをしなければならないと考えるのではなく、日本でも祖父母、親戚、他人や行政の力を借りながら社会全体が子育てに関わっていけたら、親も余裕を持って仕事と子育てができるのではないかと思います。

主婦生活を終えて

 全く仕事をしていない状態というのは、私には辛いものでした。夫は同級生で、職場の同僚でもありましたので、スタートラインが一緒だったはずの同僚がどんどん先に進んでいるような気がして、「どうしてこんなにキャリアがずれていってしまったんだろう」と強く感じてしまいました。また、自分の収入がないと、自分のやりたいこともできませんし、言いたいことも言いづらくなってしまいます。流産や、切迫早産の経験があったので、自分の留学は断って、子どもが3歳くらいまでは子どもの為に時間を使おうと主婦を自分で選択したのですが、主婦が100%幸せかと言ったら、必ずしもそうではないのだと実感しました。

 3年間の主婦生活の後、日本に戻った1週間後には救急外来を担当しました。確かに、3年間というブランクを抱えて仕事をするのは大変ではありましたが、両親と義父母が子どもの世話をしてくれたおかげで復帰することができました。

 それから8年間公立病院で働いていましたが、実母の病気をきっかけに自分の働き方を見直し、時間調節が比較的柔軟な開業医としての道を選択することにしたのです。

子育てをしながら働き続けられる職場とは

 一番仕事ができる看護師たちはだいたい、30代から40代の人たちです。体力的にも余裕があり、経験も豊富なのですが、そのほとんどがちょうど子育て期間と一致して、仕事と育児の両立ができず、中には仕事を辞める人もいます。一方で、40代後半から50代になり、子どもに手がかからなくなったのでパートとしてもう一度働きたいという看護師もいます。20年間のブランクがあると仕事を覚えるのも難しく、常勤としての仕事も少なく、その20年間とそれから先も、本当にもったいないことです。

 子育て期間の看護師たちが、仕事をやめることなく常勤で働いていける職場とは一体どんなものだろう、と考えたときに、子育てと介護をする私にも通じる解決策が思い浮かびました。つまり、「常勤で、就業時間が短いこと、早く終わって帰ればいい」ということです。

診療にあたる冨山月子さん

診療は午後の3時まで

普通の診療所は、昼休みを2~3時間取って、仕事帰りの患者さんの為に夕方遅くまで診療していますが、会社員の中には昼休みに受診したい人もいるはずです。そこで、私の診療所では、昼休みなしで9時から3時まで診療し、4時には帰宅できるような体制を取ることにしました。もちろん職員には交代でお昼休憩を取ってもらっています。1日6.5時間労働で常勤なら、子育て中の職員も余裕をもって働けますし、一旦、帰宅して家事を終えた後なら夜の勉強会にも参加しやすくなるのではないと考えたのです。

 一方で、他の診療所では7~8時間で行う仕事を6.5時間で行うことと、職員の昼休み中は人手が足りなくなるので、どうしたら時間内に効率よく働けるかということを、今でも職員皆で話し合っています。

現在の活動状況や今後の目標など

生活に則した診療

 公立病院を辞めて開業したことにより働き方が変わりましたが、私が専門としている糖尿病に関しては、外来の医療レベルは大きい病院と大差ありません。むしろ、診療所は小回りが利くので、患者さんに寄り添った治療や指導が可能です。

 例えば、栄養指導はどこの病院にもありますが、たいていは患者さんから数日間の食事内容を聞いて、そこからどういう成分が何グラム、何カロリー足りないのかを指導していきます。けれども、患者さんは、数字で示されても実感が湧きませんよね。

 ここでは実際に調理実習を行い、患者さんと一緒に食材の重さを量り、調理をして食べるということをしています。また、栄養士とともに外食に出かけ、「今日のメニューは何カロリーくらいで、何が多くて、何が足りない」「昼は野菜が少なかったので、夕食は野菜をこれくらい摂るようにしてくださいね」などと指導します。「何を何グラム摂ってください」という数字で示すのではなく、一緒に食べて、今日の夜はどうしてというように、できるだけ生活に則した栄養指導を心がけています。

 そういった生活指導が可能なのも、私たちが女性だからではないでしょうか。男性と比べて、女性は生活者である部分が大きいので、糖尿病の療養指導は患者さんの生活に置き換えた具体案が出やすいのだと思います。

職員の子どもを巻き込んだ患者さんとの交流

 職員は十数人と少なく、とても家庭的な雰囲気です。定期的に患者さんとの交流会を開いているのですが、職員の子どもたちに協力してもらい、ゲームやイベントなどを考えて参加してもらっています。子どもたちにとっては、親が働いている姿や、親がどのように人と接しているかを見ることができるので、親の仕事を理解することができます。

 また、職員の子どもが病気になったときは、職場に連れて来て治療し、そのまま様子を見て、仕事が終わったら一緒に帰ることもできます。仕事をしながら自分の子どもの様子も見ることができるので、欠勤にならない、欠勤が少ないと他の職員も余裕を持って働くことができます。職場と家庭を完全に分離しなくても仕事ができることは、女性の視点から生まれるものだと思います。

 働きやすい職場、そして、働き甲斐のある職場だと職員が思えるように、今後も仕事のあり方や患者さんとの交流について、より良い方法を皆で一緒になって考えていきたいと思っています。

医師会という場から

 長女の大学進学後少し時間の余裕ができたときに、「女性医師の支援をしてみないか」と、青森県医師会から声がかかりました。娘が医学部在学中で、将来直接娘の子育ての手伝いはできないけれども、後輩医師たちや、娘と同世代の女性のお手伝いができればと思い、医師会の常任理事を引き受けることにしました。

 今は20代の医学部生の半分近くが女性で、20代医師の3割は女性ですが、30代になるとその就業率が下がっています。女性専門職の就業率も、いわゆるM字カーブを描いており、24時間対応できるようにしなければいけない勤務体制と家庭の両立がうまくいかず、女性医師たちが仕事を辞めてしまう背景があります。

 こういった状況を改善するため、医師会では相談事業、託児室設置、病院管理者への講習会などを行っています。例えば、医師たちの勉強会のほとんどが、日中の診察終了後、午後7時頃から行われますが、その時間帯になると子どもを預かってくれるところはなかなか見つかりません。そうした際に、医師会で勉強会の会場に託児室を設置して、女性医師が勉強会に集中できる環境を提供しています。

 また、女性医師だけではなくて、男性医師も働きやすい、働き甲斐があると感じられるような環境を、医師会という場から今後も積極的に発信していきたいと思っています。

診療にあたる冨山月子さん

これからチャレンジする女性へのメッセージ

女性であること、それ自体がチャンスです

 女性であること、今はそれ自体がチャンスである時代です。「女性は家庭で男性は社会で」という時代が長かったために、職場や社会のシステムは男性の視点から作られています。男性中心の視点で作られてきた社会の中で、新しい発想や多様性を呼び込むためには、「女性である」ということが大きなチャンスになります。「女性だから大変で辛い」と感じてしまうのは、男性と同じ発想で考えてしまっているからではないでしょうか。女性だから男性には思いつかないことのあるはずです。女性は、現在の男性中心社会とは違う視点で物事を見ることができるのです。仕事においても子育てにおいても、既存の考え方や従来の習慣にとらわれず、「何故?」「本当に必要?」「他の方法は?」「もっとできることはないか?」など柔軟に考えてみましょう。新しい発想をもって、時代や周囲の状況を自分なりに判断して試行錯誤していけばいいのではないかなと思います。

仕事の経験は子育てに、子育ての経験は仕事に活かせる

 人生の中で、子育ては本当に一時です。その一時のために、仕事を辞めたり、キャリアを中断したりするのはものすごくもったいないことです。仕事で頑張っていることは子育てにも絶対役に立ちますし、子育ての経験も仕事に活かすことができます。

 だからといって、男性や子供のいない人と同じように働くとか、歯を食いしばって仕事と育児の両方を頑張らなければいけないということではなく、その時々の状況で「今何をどうするのがベストなのか」と 自分で考えて選択してみてください。自分の意志で選択したことは、例え、その選択が少し失敗してしまったとしても、その失敗を次に活かせるはずです。次のステップやゴールはみんな違っていても良いと思うと気楽になれます。現代の多様性を求められる時代には、他人と違う経験や選択こそが役に立つと思います。

女性であること自体がチャンスだと語る冨山月子さん

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