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更新日付:2013年9月2日 県民活躍推進課

青森県女性ロールモデル 栗谷川柳子さん

自分の周囲にあるもの全てが一気に自分を必要としているとは限りません。
今、自分を必要としているものをどう組み合わせていくかが大切です。

栗谷川柳子さん
ノースビレッジ農園合同会社 代表
栗谷川 柳子さん(三戸町)

【プロフィール】 
 17年間の会社員生活の後、平成21年、八戸学院大学・八戸学院短期大学総合研修所主催の起業家養成講座を修了(第1期生)。
 平成22年には、ノースビレッジ農園合同会社を設立創業し、県産野菜の流通業を手がける。平成25年4月には、首都圏在住の女性に、販売を通じて青森県産野菜や果物の魅力を周りに伝えてもらう「ひだまりマルシェ」事業をスタートさせ、同年7月には十和田奥入瀬渓流のそばに県産野菜を使用したビュッフェスタイルのレストラン「農園キッチン ノースビレッジ」をオープンさせた。

栗谷川柳子さんの主な分野 「起業」「農林水産」

チャレンジのきっかけは?

もったいない野菜をなんとかしたいという想い

 大学を卒業後、17年間、農業とはあまり関係のない会社員をやってきました。その後で、地元に戻ってから勤めた会社では、野菜や農産物の加工品をネットで売るという仕事に携わる機会がありました。そのときに、様々な農家さんと出会い、農業の事情というものを知りました。形が整っていないことで市場に出ない野菜や、こだわって育てていても高く売れない野菜、美味しいのに売れない野菜、そのようなもったいない野菜がたくさんあったのです。

 勤めていた会社が民事再生になった際、私はすぐに「独立したいので辞めます」と申し出ました。残念ながら廃棄処分されている野菜を現金化できたら農家の収入も上がるのではないかと思い、そういった分野でなにかやりたいと思ったのです。

 ちょうどその頃、八戸学院大学の起業家養成講座という社会人向けの講座に参加し、起業家になるための勉強をしました。その講座では、自分のビジネスプランを作り、他の受講生とブラッシュアップしていきました。講座に参加していた頃は、会社を立ち上げることに関してまだ悩んでいる状態でした。ですが、講座の主催者である大谷真樹学長(八戸学院大学学長)がおっしゃった、「挑戦する権利と失敗する自由」という言葉に心を打たれ、自分のやりたいことを家族にきちんと説明して、理解をして賛同してもらえるなら、「やってみよう」と思うようになったのです。

これまでのみちのり

顧客ゼロからのスタート

 資金繰りに関しては、会社を作る前に、試しに自分のビジネスプランを銀行に出してみたら採択されたので、いくらかまとまった額の資金を手に入れることができました。さらに、県の低金利融資制度を銀行から紹介していただいて、そこでさらに資金を得ることができたので、ひとまず資金繰りについてはなんとかなりました。

 ですが、私の会社はのれん分けで始めたわけではないので、もちろん初めは顧客がゼロでした。知り合いもいないし、あてにできるお客さんもいない状態です。会社を作ってスタートさせたはいいけれど、経営するのだから現金収入のこともしっかりと考えなければいけません。私たちが扱う野菜はどこだったら売れるのかなって考えました。地域には産直施設があり、青果業を営む方々もいます。私たちが売りたいのは、形もサイズも揃っていないトマトやにんじんです。それに、こだわって作ったために値段がとても高くなってしまった野菜などもあります。こういう野菜はどんなに美味しくても、見た目とサイズで値段が決められてしまうマーケットでは、「ただのトマト」という値段にしかならないんです。それをどうやって高く買ってもらえるのかって考えたら、やはり東京のレストランじゃないかということになったのです。

トマトを持つ栗谷川柳子さん

トマトを背負って東京のレストランへ

 顧客探しのために、トマトを背負って新幹線に乗り、実際に「このトマトを食べてもらえませんか」と、東京のレストランを回って歩きました。最初は、レストランのシェフたちも「なんだろうこの人たちは」という反応でした。だって、いきなりトマト背負った人間が店に来たんですから、普通はそうなりますよね。やはりシェフの方とはすぐには繋いでもらえないので、まずは「このトマトをシェフの方に渡してもらえませんか」と言って名刺とトマトを置いてきました。直接シェフに会って、「このトマトはああでこうで、こうなんです」とこだわって説明しても、それは逆に邪魔な話で、先に情報だけがいっぱい頭にあると味のイメージを勝手に想像してしまって、実際食べたらそうでもないじゃんということがあります。ものが美味しければシェフは反応してくれるのではと思ったので、とにかく食べてもらおうという気持ちでトマトを置いてきました。

 そうしたら、ぽつぽつと「あのトマト、やけに美味しいね。でも高いね」というような電話が来て、そういうところから少しずつ人脈が広がっていきました。また、シェフの方々には横の繋がりがあるので、あるシェフが別のシェフに私たちのことを紹介してくださるということもありました。

農家さんとの関係づくり

 もうひとつ重要なことがあります。それは、私たちが売る野菜です。私たちの仕事は流通がメインですから、野菜の生産は全くしていません。地域の農家さんたちに協力してもらっているのですが、彼らの取引先は基本的には農協になります。農協へはかなり大きな単位で野菜を出荷するのですが、私たちは小さい会社ですし、各レストランから注文を受けて野菜をお渡しするので、農協とは野菜を取り扱う単位が全然違います。何百キログラムではなくて、何キログラムとか何個とかの単位から始まっているので、それを農家さんに注文するということは大型出荷のための一日の大きな流れの隙間に作業を入れてもらうことになり、「そんな小さな単位のためにやるのか」と農家さんには手間になるのです。

 ただ、私たちは農家さんの名前や、どのように野菜を作っているのかといった情報も流しているので、例えばレストランのシェフが「小山さん」という方のとうもろこしを気に入ったら、メニューに「小山さんの甘い甘いとうもろこしを使ったペペロンチーノ」というように名前を出してくれたとします。それを写真に撮ってもらい、「小山さん、メニューに載りましたよ」って見せると、農家さんがすごく嬉しがってくれます。そうすると、「じゃあ、今度はこういう野菜を作ってみようかな」というように、農家さんたちにそれぞれの個性が出てくるようになります。「実は珍しい変わった野菜を作りたいんだけど、作っても売るところがないから作れない」という農家さんたちの販路を開拓するため、私たちが東京のレストランに売って農家さんたちのモチベーションを上げるというのが私たちの会社の目的になります。

現在の活動状況や今後の目標など

「もったいない」をリノベーションする

 地域には、例えば、グリーンツーリズムのような様々な取組がありますが、後に繋げられていないものがあるように思います。せっかくグリーンツーリズムで修学旅行生を受け入れたのなら、産直もありますから、修学旅行生の親御さんあてに、実はこの地域の野菜を定期的に取り寄せることができるんですよというようにつなげたら、あちらも美味しい野菜が食べられますし、農家さんも現金収入になります。つなげたり切ったり貼ったりして、これまでにあったものを活かすというリノベーションをできたらいいんじゃないかとずっと思っていました。とにかくもったいないものが大嫌いなので、そういうシステム屋さんになりたいのです。卸売りや小売業だけで終わるつもりではなくて、地域にシステムをつくる、リノベーションをする会社になりたいなと思っています。物も人も、もったいないものがいっぱいありすぎるので、これまでゼロ円だったものや休眠させていたものが、地域のお金になれるような仕組みを考えていきたいです。

観光客も、地元民も、農家をも幸せにする農園キッチン

 「もったいない」をリノベーションするということは、地元の人たちがやる気になってくれないと始まらないことなので、かなり難しいことでもあります。人の気持ちをどれだけ動かせるかというところも肝心な部分です。それを踏まえながら、今年の7月にオープンさせたのが農園キッチンでした。

 これまで私たちが農家さんの野菜を卸していた先は東京都内なので、いくら有名なレストランでメニューにも名前が使用されていますよって農家さんに言ったとしても、それはそれで嬉しいのですが、農家さんたちは実際に食べに行くことも難しいですし、「美味しいね」ってお客さんが言っている姿も見ることもできないじゃないですか。でも、奥入瀬にある農園キッチンなら観光客も来ますし、県内の人も来ます。県内外の人が農園キッチンに集まって、「このトマト美味しいね」っていう顔を農家さんたちも見ることができる、そして、お客さんがその美味しさに惹かれて農園キッチンで売っている野菜を帰りに買っていく、という自然な流れを作りたかったのです。

 今後は農家さんの野菜を使った加工品を広めるなどして、これまで種まいてきたものをどんどん広めていこうと思います。

これからチャレンジする女性へのメッセージ

優先順位を切り替えてみてください

 会社を立ち上げるまでは、私も女性なので、結婚や出産、育児があると、どうしてもそれらを優先させていました。優先順位としては、家庭があって、仕事があって、親や周囲のことがあって、最後の最後に優先できるものが自分になっていました。

 そのときに思ったのです。なんでも自分が我慢して他のことを優先するために生まれてきたのか、って。両親が私を高校や大学に行かせたりしてくれたのは、私が将来活躍したり幸せになるためなのに、大学を卒業して何年か働いて結婚したらなぜか自分が最後になっていました。「それっておかしいんじゃないの」とずっと思っていたので、できる範囲で自分のしたいことをやってみたいと思ったのです。

 今、自分が優先させないと絶対にまずいというものがあると思います。私はそのときどきで優先順位を切り替えています。家族や会社など、自分の周囲にあるもの全てが大事ですけど、全てが同じタイミングで同じ重要度で自分を必要としているとは限りません。今、自分を必要としているものをどう組み合わせていくかを一度、考えてみてください。

農園キッチンノースビレッジの前に立つ栗谷川柳子さん

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