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更新日付:2014年12月11日 県民活躍推進課

青森県女性ロールモデル 石村真弓さん

何かを始めたいと思ったとき、その入り口はどこにでもあります。
大事なのは、一歩を踏み出す前、踏み出した後、自分に規制をかけないことです。

石村真弓さん
薪ストーブと木の雑貨Woodrack
石村 真弓さん(青森市)

【プロフィール】
 木の家を新築する際、初めてチェンソーで木を伐り倒したことをきっかけに、林業に関心を持つようになる。2009年から薪ストーブ店Woodrackに勤務し、県産材を使うことの素晴らしさや薪ストーブの魅力について発信している。2013年には、県産材の住宅に暮らすユーザーの代表として、『県産材住宅魅力発信フォーラム』でパネリストを務める。

石村真弓さんの主な分野 「農林水産」

チャレンジのきっかけは?

生まれて初めて木を伐り倒す

 結婚してから10年間ほど、専業主婦をしていました。パートで働くということもなかったので、正直なところ、自分は専業主婦で一生過ごすんだろうなと思っていたんです。

 そんな私が森と関わるようになったきっかけは、ずばり、木の家を新築したことです。9年前、県産材を使用して家を建てるというコンセプトの工務店に依頼して家を新築してもらうことになりました。その工務店では、青森県の林業に関する座学を受けてから、自分たちの家の柱に使う木を施主自身が実際に森に入って伐り倒すという体験会を行っていたので、家族でそれに参加したんです。そのときに、生まれて初めてチェンソーを持ちました。

 初めて持ったチェンソーの重さは約5キロ。ぎざぎざの刃が並んだチェンソーに対して、「怖い」とか「重い」とかは感じませんでした。むしろ、そのチェンソーで木という生き物を倒してしまうことの方が怖かったです。牧場で羊の赤ちゃんを見て「かわいい」と言っていた後で、ジンギスカンを食べるのと一緒です。伐り倒すとき、木に対して申し訳ない気持ちでいっぱいになったんです。

 チェンソーを持つのも木を伐り倒すのも初めてでどきどきしましたが、「楽しい」というどきどき感ではありません。「伐り倒したら、全部使い切りますから、どうか許してください」という緊張と懺悔が詰まったどきどき感です。木が大きな音を立てて倒れ込んだとき、「これは殺生と同じなんだ」と深く実感しましたね。

これまでのみちのり

「全部使い切る」という誓いを果たすため、薪ストーブを設置

 木を伐り倒す前と伐り倒した後では、一本一本の木の見方がまるっきり変わりました。今まではただの「物」だったものが、「生き物」として見えてくるんです。木のスプーンであれ、テーブルであれ、 それがその形であり続ける間は「生き続けているんだ」と感じるようになりました。

 また、木を伐り倒すとき、私は「伐り倒したら全部使い切る」という誓いを立てています。伐り倒されたまま使われない木もたくさんある中で、どうすれば一本の木を全て使い切ることができるのか。答えは、「薪にして燃料にすればいい」です。燃料であれば、製材されずにはじかれた木材も使うことができます。これなら全部使い切るという誓いが果たせると思い、体験会の翌年に建てられた自宅に薪ストーブを設置しました。

 自宅ができあがり、たくさんの方が遊びに来るたびに、体験会で聞いた話や薪ストーブの素晴らしさをそのまま伝えるわけです。あまりに熱く語るものだから、遊びに来た人たちが「一回木を伐り倒しただけで、人はここまで変わるのか」と驚いたぐらいです。私自身、知ったばかりのことについて、自分がこれほど熱くなって話せることに驚き、このときから森に関わっていきたいと考えるようになりました。

薪ストーブと木の雑貨ウッドラックの店内

内職の林業者からキャリアアップ

 これまで専業主婦だった私が、娘たちを保育園に入れ、薪ストーブの燃料となる薪づくりをする「内職」の林業者として、自分のキャリアをスタートさせることができました。

 そもそも木の家を建てたいと思ったのも、娘のアトピーがひどく、それを少しでも楽にしてやりたいと思ったことがきっかけでした。化学物質を使わない、体に優しい自然素材の家を建てましたが、それだけでなく、娘たちにはできるだけ無農薬・無添加な食べ物で育って欲しいと思っていたので、穀物菜食を給食メニューにしている自然育児の保育園にお願いすることができました。

 内職の林業者になったからには、チェンソーをきちんと扱えるようになりたい、森に生えている木のことをもっと知りたいと思うようになりました。そこで、薪ストーブを使っている人たちが集まる、「薪ストーブユーザーの会」という場所にチェンソーを持っていき、「私にチェンソーを教えてください」と直接頼み込んだんです。先輩ユーザーたちからチェンソーやいろいろなことを学んでいるちょうどその頃に、現在のWoodrackの相馬代表が、当時所属していた工務店から独立して新しく薪ストーブ店を始めるという話を聞きました。

 自然素材の家のおかげで子どものアトピーの悩みがなくなったという経験があるからこそ、とにかく木を使った家の素晴らしさや薪ストーブの良さを他の人にもっと知ってもらいたいと感じていたので、私は相馬代表に一緒に働かせて欲しいと訴えかけました。「私は自分の家に遊びにきた人たちに、林業の素晴らしさや県産材を使うことの意味、薪ストーブの良さをたくさん伝えてきた。だから、最高の営業マンになれますよ」とアピールした結果、その熱意を買われ、2009年からWoodrackの従業員として働くことになったんです。

薪ストーブと木の雑貨ウッドラックの看板

現在の活動状況や今後の目標など

最初は反対されていたけれど

 それまでは家の中にいてずっと子どもの世話や家事をしていた母親が、突然仕事をしに家から出ていくわけです。しかも、その仕事というのが、森に入ってチェンソーを操る危険なものだということで、最初は夫からも子どもからも反対されました。ですが、チェンソーで木を倒したり、枝を落としたり、丸太を運んだり、薪ストーブのメンテナンスをしたりしているうちに、面白がって私に声をかけてくれる人たちが少しずつ現れてきました。それを見た家族が、「汚れて帰ってきて大変そうにしているけど、どうやら人気者のようだ」と、徐々に認めてくれるようになったんです。今では、「動き回っているお母さんの方がいきいきしている」と子どもたちが言ってくれるようになりましたね。

チェーンソーを担ぐ石村真弓さん

原動力は「みんなに教えてあげたい」という気持ち

 8年前に県産材を使用した木の家を建てたことがきっかけで、今では他県からも講演依頼がくるようになりました。去年は、「建物探訪」というテレビ番組でおなじみの渡辺篤史さんと同じ壇上に上がり、パネリストとして県産材の家や県内の林業などを話しました。

 おかしな話ですよね、「石村真弓」という垂れ札を下げて壇上で話をするなんて、10年間の専業主婦をやっていたときには全く思いもしなかったことです。ここまでこられたのは、「自分が見て、聞いて、体験したものを、みんなに教えてあげたい」という強い気持ちがあったからです。その気持ちで動いているうちに、自分が歩いていく方向がなんとなく定まってきて、気づいたら仕事になっていったんです。ですが、やっていることはWoodrackの従業員として働き始めた5年前から変わっていません。それだけ、私と同じくらい青森県の林業について関心を持ってくれる人ができてきたということなんだと思います。

自伐林業が日本の森を救う

 現在、きちんと管理されずに生え放題の森が日本中にたくさんあります。そういった放置林では日光があまり入らないため、細くて弱い木しか生えません。整備されていないので大きな運搬車は入っていけませんし、その木を伐り倒して出荷したとしても、木の質が悪いのでほとんど収入になりません。そうなると、ますます業者が入りづらくなり、放置林が広がるという悪循環に陥ります。その悪循環を絶つのが、自伐林業なんです。

 林業と聞くと、業者が大きな車両を動かして長い木を何本も運び出すようなイメージがあるかもしれませんが、自伐林業とは、少ない道具、少ない予算、少ない人数で少しずつ木を運び出していく、とても小規模な林業です。たとえ、放置林の木が製材には適さないものだとしても、薪としては十分に価値があるので、自伐林業ではその木を薪などにして販売します。業者が入れないような森で細く弱った木を伐り倒すことにより、森が徐々に整備されて日光が入り込むようになり、一本一本の木の質が良くなるんです。そうすると、業者も森の中で伐り出しができ、それが立派な収入となります。

 今の日本は、木を売って得る収入よりも木を伐り出す方に経費がかかるので、もっと伐り出しやすい森を作っていくためには、私たちのような、本業ではないけれど、木が好きで、木を使いたい人たちが森に入っていくことが重要なんです。

主婦が活躍できる場は森にある

 10年間の主婦生活をしてきたからこそ言えることですが、専業主婦は夫と子どもと家の中しか見るものがありません。専業主婦の頃は、子どもには未来があるけれど、自分には未来がないような気もしましたし、家以外に行き先がない、何かをやるにしてもタイミングが分からない、もしかしたら社会の重荷になっているんじゃないかと思ってしまうときもありました。子どもを産んで育てるという大変なことを一生懸命頑張ってきたはずなのに、世の中のお荷物みたいな目で見られてとても悔しいんです。

 私たちのような専業主婦が本当に社会のお荷物なのかと言ったら、絶対に違うんです。細くて弱った木が製材には適さなくても、立派な薪になるのと同じで、私たちを最大限に活かす道があるんです。林業で言うと、自伐林業がそうです。現在の森は林業者の主収入になるほど、質の良い木が育っているわけではなりませんが、そこに主婦が自分の作業できる時間に森に入って薪を持ってきて売れば立派な副収入になります。最初はお手伝いからかもしれないですが、経験が積み重なれば、薪の売り先がどんどん増えて副収入も増えますし、林業者も森に入りやすくなります。つまり、今、森が必要としているのは、まさに主婦層の女性たちなんです。

 森の中で作業している女性たちは、とても輝いて見えます。なぜなら、まだそういう分野で活躍している女性は少ないからです。手つかずの森をきれいにすることで山主から感謝されますし、何よりも、自分の行動が森をきれいにしていくという満足感が、森に入る女性たちを輝かせているんです。

これからチャレンジする女性へのメッセージ

好きなものはあとから見つかる

 自分の好きなものがどこにあるかなんて、誰にも分からないじゃないですか。好きだったものだから打ち込めるのではなくて、ある日突然好きになったものが結果として自分の将来の目標や理想になってくるんだと思います。好きなものはあとからでも見つかるんですよ。

 なにげなく暮らしている中で、急に好きなことができたらそれはものすごいチャンスです。しかも、今まで見たことがない世界が見えたなら、きっとそこが自分にとってのスペシャルな分野なんです。そこに先人がいなければ、より楽しいですよ。だって、自由なので自分が何をやってもいいんですから。

大事なのは自分に規制をかけないこと

 正直、10年間のブランクがあったため、自分がこうなりたいという理想像は全く見えませんでした。子育て中の人だけでなく、転勤などでキャリアが途切れる人たちの中にも、そういう人はたくさんいると思うんです。子育てのブランクから復帰する人や転勤で新しい場所に来た人たちは、新しく自分に何ができるのだろうかという不安を常に持っています。さらに言えば、ブランクが長ければ長いほど、自分を売り込んでいくのには相当の経験が必要だと思いがちです。

 ですが、私には経験なんてありませんでした。とにかく、好きだという気持ちだけで一歩を踏み出したんです。踏み出した一歩がどこに向かっているのかなんて、誰にも分かりません。それは、みんな同じです。しかし、何かを始めたいと思ったとき、入り口はどこにでもあるんです。大事なのは、一歩を踏み出す前、そして踏み出した後に、自分に規制をかけないことなんです。

「好きなものはあとから見つかる」と語る石村真弓さん

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