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更新日付:2012年1月18日 三内丸山遺跡センター

連載企画『縄文遊々学』

第53回 小さな土器

縄文時代には一見して日常生活に使用する実用品とは思えない小型土器があります。つまり、容器としての形をしているもののあまりに小さいために、実際は容器としての機能を持ちそうもない土器です。それらはその大きさから「袖珍(しゅうちん)土器」とも呼ばれています。ちなみに袖に入るくらいの大きさという意味だそうです。

 本県では縄文時代前期から見られ、その後も一般的に見られますが、特に後期や晩期には多く見られるようです。用途は土器の大きさから見て、実用品とは考えにくく、子供のおもちゃ説やまつりの道具説などが考えられています。

 三内丸山遺跡からは盛り土を中心に2500点を越える小型土器が出土しており、集落が大規模になる中期には多くなるものと考えられています。小型といっても、大きさ(高さ)が5cm前後のものが大半ですし、容器としては使われていないと思われることから、ミニチュア土器と呼ぶのがふさわしいのかもしれません。しかし、本当に容器として使用されていないかどうかは詳細に観察する必要があります。中には煮炊きと思われる痕跡が見られるものもあります。出土する場所が盛り土に多いことは、土偶や装身具類と同じ傾向ですので、用途や目的がそれらと同じか似ていることは十分に推測されます。

 この小型土器ですが、基本的には当時の日常的な容器である土器と同じ形や模様なのですが、中には土器以外の木製の容器や石皿などをモデルとして作った可能性があることを三内丸山遺跡保存活用推進室の岩田安之さんは指摘しています。多少、省略したとしても身の回りにある日常的な生活道具を忠実に小型化したと言えるのかもしれません。

 縄文人はなぜこのような小型土器をたくさん作ったのでしょうか。時代は違いますが、古墳時代や古代においても見ることができます。特に西日本では縄文時代の小型土器はほとんど見ることがないため、以前遺跡展示室でこの小型土器を見た関西在住の研究者から「本当に縄文時代ですか?」との質問が寄せられたほどでした。これらの小型土器はもっぱら祭祀に使われたと考えられています。

 縄文時代においても実際の土器や道具類とそっくりな小型土器を作り、使用していたことから、何か生活と密着した、あるいは生活の一場面を再現するようなまつりや儀式が想像できるのではないでしょうか。それとも祖先への供養や自然の豊穣を祈るような場面で使われたのでしょうか。小さな土器でも謎は大きいと言えます。

 現在、三内丸山遺跡縄文時遊館内の「さんまるミュージアム」では企画展『ミニチュア土器コレクション展』が開かれています。これだけ多くの小型土器が展示されることはほとんどありませんので、是非とも小さな土器が語る縄文世界に触れてみてはいかがでしょうか。入場は無料です。
  • ミニチュア土器
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電話:017-782-9463  FAX:017-781-6103

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