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更新日付:2019年12月27日 青森県衛生研究所

青池はなぜ青い?

  • 2017年5月2日の青池

ここでは、青森県環境保健センターが「十二湖青池の呈色機構に関する研究」と題して、平成28年度から30年度にかけて「センター内ベンチャー研究」として行った研究の成果を紹介します。

Q1)青池は、「青いインクを流したようだ」といわれることがあるようですが、何かが水に溶けて青いのですか?

A1)青池の水の光吸収測定や分析結果から、何かが水に溶けて青いのではなく、高い透明度と水以外の着色性溶質および懸濁物が極めて低濃度であるために、青い液体という水の本来の性質が際立っているためと考えています。

Q2)水は本来無色ではなく青色なのですか?

A2)文献1には、青色を呈する海域や湖沼について言及があります。その中で、「純粋な水は、日常扱う量においては無色に見えるが、実際は青い液体である」(”Pure water, although it appears colourless in the quantity we handle in everyday life, is in fact a blue liquid" )とあります。これは水が赤い色の光を吸収し、青く見える性質があるためです。

Q3)青池が青く見えるのは、どのようなメカニズムによるものですか?

A3)青池の呈色モデルとして、旧モデル(研究成果4)では、湖底からの強い乱反射(Irregular reflection)に、透明度の高い湖水による赤色光の吸収が組み合わさることが主要な機構(メカニズム)と考えました。
その後、研究を進めた結果、新モデル(研究成果5)では、水本来の性質である密度変動散乱(Density fluctuation scattering)と湖底乱反射が、水による赤色光の吸収と組み合わさって、青く見えると考えました。密度変動散乱は青い光を強く散乱する性質があり、これにより、青色がより強調された光が湖内で散乱する効果を無視できないと考えています。

Q4)ネットで「青池」と検索した写真では、いろいろな色の青色の「青池」が出てきました。季節や時間で変化するのですか?

A4) A1) にあるように、青池の青は、水が青いためと考えていますが、それが見えるためには湖面に光が射し込む必要があります。以下に青池における太陽光の季節・時刻による違いの特徴を列挙してみます。
・春には強い日射が射し込みますが、初夏から秋にかけては木の枝葉が生い茂り、湖面に射し込む光が次第に弱くなります。
・夏至のころ(6月下旬)に、一番太陽高度が高くなります。
・朝夕は、太陽高度が低くなります。
・青池の展望台が青池の北西に位置しており、太陽の方位角も色調に関係する因子となると考えています。
・晴れの場合の影ができる日射(直達日射)と、曇りの場合の影ができない日射(散乱日射)で、違いが出ると考えられます。
A3) で述べましたように、青池の青色呈色は大きな二つの物理的機構(湖底乱反射および密度変動散乱)が関与していると推定しています。これらの機構は、それぞれ、太陽高度や方位角に対して、別々の依存性で関係すると考えました。よって、これらの二つの機構により、さまざまな青色を示すと考えられました。
青池の展望台の決まった場所から撮影したデジタルカメラの画像解析から得られた知見を基に理論計算を行うと、青色呈色は、湖面上で不均一な分布をすることが示されます。また、湖面の一点に注目し、そこを定点とすると、例えば晴天の条件下における、暦日の各時刻毎の呈色を示した「青池カラーチャート」を描画することができました。

  • あおいけからーちゃーと
    「青池カラーチャート」晴天時、湖底乱反射および密度変動散乱、最大水深8.8 m、展望台から見かけの湖面中央点
    (研究成果5の論文から引用)
  • 青池の画像(すべてデジタルカメラ撮影条件が異なる)
    • Aoike20160721
      2016年7月21日11:42 太陽高度 69.85°
    • Aoike20160829
      2016年8月29日11:43 太陽高度 58.67°
    • Aoike2016101201
      2016年10月12日14:41 太陽高度 23.75°
    • Aoike2016101202
      2016年10月12日15:35 太陽高度 16.35°
    • Aoike2016101301
      2016年10月13日9:19 太陽高度 34.69°
    • Aoike201611302
      2016年10月13日11:53 太陽高度 40.94°

    Q5)青池の近くには、他に青く見える池はないのですか。青池のある十二湖にはたくさんの池があるようですが、青池だけが青く見えるのですか。

    A5)青池がある十二湖には、実際には30以上の池が存在します。青池のように青い池として、 青緑色から青色を示す沸壷ノ池(わきつぼのいけ)がありますが、それ以外は青い池はないようです。
    例えば、青池の北隣に鶏頭場ノ池(けとばのいけ)という大きな池がありますが、この池は緑色で、青色ではありません。この湖水を分析したところ、着色した懸濁物が検出されました。この池では湖水が濁っていることから、水の青さが際立たないと考えています。

    • わきつぼのいけ
      沸壺ノ池 2019年7月7日
    • Ketoba20161013
      鶏頭場ノ池 2016年10月13日

    Q6) 「青い」といえば、北海道美瑛町の「青い池」も有名ですが、「青い池」と「青池」で違いはあるのですか?

    A6) 北海道美瑛町の「青い池」は、湖水に懸濁している火山性のケイ酸アルミニウム粒子が光を散乱させて青い色を呈色すると言われています。
    これに対して、青森県の青池は、着色性の溶質や懸濁物の濃度が極めて低いので、水本来の性質が表れていると考えています。

    研究成果

    • <2016年度>
      研究成果1 「十二湖青池の呈色機構に関する研究(第一報)」,青森県環境保健センター年報, 27, 2016, 36-52.
      「青森県西部白神山地山麓に位置する十二湖青池の呈色機構について研究した。赤・緑・青色の3 色カラーセンサーを湖内に沈めて測光を行い、また水質の化学分析を行った。光測定結果を、センサーの分光感度特性と水そのものの可視領域の吸収スペクトルから解釈したところ、赤色光の減衰比として、実測値と理論値が一致した。化学分析結果としては、溶存酸素の過飽和はなく、また可視領域に光吸収を与えうる遷移金属元素や陰イオンは認められなかった。よって青池の青色は、溶質や懸濁物が原因ではなく、水そのものの赤色光の吸収が主な原因と考えられた。さらに光の挙動に関して若干の仮定を行い、色彩工学の立場で、水の吸収スペクトルから青池の色を再現する試みも行った。」
    • <2017年度>
      研究成果2 「十二湖青池の呈色機構に関する研究(第二報):自作した吸収スペクトル測定装置のハードおよびソフトウェア」,青森県環境保健センター年報, 28, 2017, 51-55.
      要旨「十二湖青池の呈色機構の研究に当たり、青池湖内の実地での吸収スペクトルを測定するために自作した測定装置について報告する。装置は、水面下となる受光部から光ファイバで「ミニ分光器」に光を導入し、「ミニ分光器」とマイコンボードをLANケーブルで結び、水面下の光吸収スペクトルデータをPCで観測することを可能とした。そのハードおよびソフトウェアについて述べ、実際の応用例を報告する。」
    • 研究成果3 「十二湖青池の呈色機構に関する研究(第三報):光測定結果の解析について」,青森県環境保健センター年報, 28, 2017, 56-62.
      要旨「十二湖青池の青色呈色機構についての続報で、光測定結果に関する報告である。青池湖内の実地と実験室に持ち帰った湖水および超純水について、可視領域の吸光係数のスペクトルが構造・強度ともにほぼ一致し、赤色光領域で吸光係数が高い結果が得られた。また、この水の吸光係数により透過光の青色色調を再現できた。次いで3色カラーセンサーを水深2.5 m まで沈め、赤色光強度比が深さとともに減衰する結果が得られた。その結果を水の吸光係数をもとに解析したところ、得られた赤色素子の分光感度特性のパラメータにより光路長10~20 mでは赤色光がほとんど消失し、透過光は青色およびその半分程度の強度の緑色光となることが示された。以上から、青池における湖底での光の反射を条件とすれば、湖面に入射し透過・湖底での反射・透過・射出を経て観測される光は青色を呈すると推定され、青色呈色の原因は水による赤色光吸収という仮説を支持する結果が得られた。」
    • <2018年度>
      研究成果4 「十二湖青池の呈色機構に関する研究(第四報):青色呈色のシミュレーション」, 青森県環境保健センター年報, 29, 2018, 26-52.
      .要旨「十二湖青池の青色呈色のシミュレーションの方法およびその結果について報告する。水以外に呈色要因がなく、湖内における散乱光と湖底からの乱反射光が存在すると仮定して計算したところ、散乱光の寄与は乱反射光のそれに比べて無視でき、シミュレーションは、直達および散乱日射条件で、湖面の青色呈色を色調・明暗の不均一性とともに良好に再現した。さらに、湖面の定点での年間の暦日・時刻に関して呈色を示す「青池カラーチャート」を提案し、観測方位や最大水深の仮定の違いが青色呈色に与える影響を検討した。最後に、直達日射条件で湖面輝度は午前中に極大となることを示した。」
    • <2019年度>
      研究成果5 「青森県・青池の呈色に関する研究:画像解析とモデリング」, 陸水物理学会誌, 1, 2019, 3-23.
      要旨「青森県・十二湖の一つ青池の青色呈色について,画像解析とモデル計算を行った。モデリングでは,池の青色呈色は,湖底乱反射前後の水による光吸収と波長依存性を持つ湖内光散乱前後の水による光吸収,という2つの要因で生じると考えた。画像解析結果とモデル計算結果との比較から,湖底乱反射および水の密度変動散乱(分子散乱)が呈色に寄与していることがわかった。湖面の色調については,前者の呈色は緑色を帯びた青色で,後者は濃い青色であり,それらの寄与を分離できた。「青池カラーチャート」を含めたモデル計算により,青池の最大水深 (8.8 m) はこれら二者が同オーダーの大きさで寄与する条件であることが明らかになった。」

    参考文献

    • 参考文献1 Kirk JTO (2010) Light and Photosynthesis in Aquatic Ecosystems, 3rd ed., Cambridge University Press, Cambridge, UK, 649pp.
    ここまで読んでいただいて、"青池に行ってみよう!"と思われた方は、こちらへどうぞ
    青森県観光情報サイトアプティネット(津軽国定公園「十二湖」)

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