大分類環境事業県政・わたしの
提案
受付年月日2005/12/29
件 名北限のサルの駆除について
提言内容  猿の住処、食べ物を奪い、狂暴にさせたのは人間である。今、一部の猿を殺して、しばらくは落ち着くかも知れないが、人間が変わらない限り、必ずまた同じことが起きる。そうしたらまた殺すのか。そうなればいつか北限の猿は絶滅してしまう。何の為の天然記念物指定なのか。これが実行されれば他の天然記念物にも影響が及ぶ。
 人間は自然的な共存ではなく、人間に合わせた共存を動物達に押しつけていると思う。どうか何が一番いいのかもう一度考えてほしい。私の結論は「人間が変わるしかない」であり、もっと人への対策に力を入れてほしいと思う。猿を駆除する決定が取り消されることを願っている。
提案への
回答
 ニホンザルは北海道と沖縄県を除く45都府県に生息し北限は青森県(下北半島及び津軽半島)で南限は鹿児島県(屋久島)となっています。
 この中で、青森県の下北半島に生息するニホンザルは、昭和45年に世界の北限に生息するサルとして国により、下北半島のサル及びサルの生息地として(種としてむつ市及び下北郡全域、生息地としてむつ市及び佐井村の一部1,170ha)天然記念物の指定を受けたものです。
 指定当時は北西部及び南西部の一部の地域に7群で推定190頭が生息するのみであったことから、むつ市は絶滅回避対策とともに、住民の生活域まで拡大しつつあったサルの生息域を山間部に戻す取組み等として南西部の1つの群れを対象として学識経験者のアドバイスを受けながら餌付けを実施しましたが、試みが成果を発揮しなかったことから昭和56年度をもって餌付けをやめています。
 餌付けをやめた当時の生息状況は8群で推定約380頭でした。
その後、追い上げ・追い払いや電気柵整備等の取り組み強化にも係わらずサルの生息頭数増大による生息域の拡大は続き、平成13年は25群で推定約1,020頭、平成16年では下北半島の北部地域全域と西部の津軽海峡部(佐井村及び旧脇野沢村−現むつ市)に28群で推定1,500頭以上が生息するまでになりました。 生息頭数の増大は餌付けを実施しなかった北西部の群れも顕著であり、餌付け実施の有無を問いません。
 28の群れの内、半数以上の16の群れが住民に生活被害や農作物被害を与えていますがこの中で、むつ市・佐井村・大間町に生息する6つの群れは住民の生活域とサルの生息域が重なっていることから、地域住民に危害を加える度合いや農作物に対する加害が著しく、住民の安全確保及び財産の保全を図る立場と北限のサルの保護を図る立場の両面で大きな社会問題となっています。
 このような状況を背景として県は天然記念物行政を所管する県教育委員会と連携し、人とサルとの共生を進めることを目的として平成16年3月に「鳥獣の保護及び狩猟の適正化に関する法律第7条」の規定に基づく特定鳥獣保護管理計画を策定しました。
 同条は、「都道府県の区域内においてその数が著しく増加又は減少している鳥獣がある場合において、当該鳥獣の生息の状況その他の事情を勘案して長期的な観点から当該鳥獣の保護を図るため特に必要があると認めるときは、当該鳥獣の保護のための管理に関する計画(特定鳥獣保護管理計画)を定めることができる。」と規定しています。
 本県の計画は、人とサルとの共生を進めるための目標として次の3項目を掲げています。
1 地域個体群としての永続的な保全、交雑の防止及び生息地の保全
2 農作物被害の軽減及び人家侵入被害など生活被害の根絶
3 共存のための社会合意形成
 平成16年度に、下北半島地域で処分方法を殺処分(薬殺)とする内容でむつ市(13頭の捕獲実績)及び佐井村(1頭の捕獲実績)が初めて取り組んだサルの加害個体の捕獲は、本計画及び本計画の策定過程で学識経験者、行政機関、各種団体、一般県民等で構成される協議会が定めた「ニホンザルの問題個体管理指針」に基づき申請がなされ、県及び県教育委員会が許可したものです。
 この指針では、追い上げなどの被害防除対策を行っても被害を防ぎきれない部分について、群の年間増加率を超えない範囲で、下記に該当するサルの捕獲を許可の対象としています。
 ・農地や集落に定着し、追い払いによって容易に逃走しない。
 ・家屋の上に登る。
 ・人が携帯する食物を奪おうとする。
 ・人に対し攻撃的な行動を複数回とる。
 むつ市及び佐井村は、捕獲するサルについて、動物園等の公的施設への収容を検討しましたが受け入れる施設がないことから、できる限り苦痛を与えない薬殺により処分しています。
薬殺処分によらず去勢・避妊・不妊を施すべきでないかという指摘もありますが、ペット動物とは異なり、野生動物は自然生態系への配慮、去勢等の処置を施す事は全国的に例がないこと等から本県の計画ではこのような方法はとらないことにしました。
 県は今後とも、県教育委員会及び下北地域の市町村等と連携し、学識経験者のアドバイスをいただきながら、特定鳥獣保護管理計画の適正な進行管理を図ることを通して、下北半島に生息する天然記念物である北限のサルの保護管理を進めていきます。

※ 参考までにニホンザルの有害捕獲の状況については、環境省がホームページ上で公表している鳥獣統計によると、近年、生息頭数の増加により農業被害等が増加したことから平成14年度は青森県(県西部の津軽地域での捕獲36頭)を含む40都府県で実施され10,689頭が捕獲されています。
17年度の
担当部局
環境生活部
17年度の
担当課
自然保護課