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更新日付:2023年12月19日 地域交通・連携課

AOMORI LIFESHIFT人財インタビュー13 根本 あや子 さん

市民による障がい者支援が
人と街をつなぐ

吉田さん01 特定非営利活動法人SAN Net青森 理事長 青森市在住。大学卒業後、横浜市役所でケースワーカーとして働く。青森にUターン後、市民による精神障がい者支援としてオープンスペースを開設。2001年にはNPO法人SAN Net青森を立ち上げ、しんまち商店街の中で地域福祉活動を行っている。



公務員を退職し、地域に寄りそうケースワーカーに

地元青森の高校を卒業後、関東の大学に進学しました。その当時、女性が4年制大学に進学するのは少なかったんですよ。大学では社会学を学びましたが、就職がなかなか決まらなくて。卒業後は児童自立支援施設「国立武蔵野学院」で福祉の分野の勉強をしました。それが、わたしが福祉の仕事と関わるようになった始まりです。 

その後は、横浜市役所の福祉事務所で生活保護のケースワーカーとして働きました。でも公務員として福祉関係の仕事をやっていくというよりも、地域に寄り添った活動がしたい想いがずっとありました。41歳で公務員を退職して女性薬物依存者のハウス運営に関わって社会復帰や回復支援をしたり、夫とともに岡山で友人が立ち上げる事業の手伝いなどを経験しました。

岡山での活動に目途が付いた頃、これからどこで何をしたいのかを考えたときに、今までのいろいろなことを含めて青森で何かできたらやってみたいと思い、Uターンを決意。青森に帰ってきたのは48歳のときでした。

これまでの経験を活かしたいとUターン
市民による精神障がい者のための居場所づくり

  • yoshida07
なんのあてもなかったけれど、ケースワーカー、ソーシャルワーカーとしての経験も積んできたし、青森でもまだまだ役に立てると思い上がっていたんです。親も歳を取ってきたし、青森に行けば何とか食えるんじゃないかって。でも、履歴書をあちこちに送っても雇ってもらえるところがありませんでした。 

青森に帰ってきてしばらく経った頃、精神障がい者の家族会が運営している作業所にボランティアでお手伝いに来ていいよ、と言っていただきました。その作業所での出会いがきっかけとなり、自分たちで居場所づくりの活動をしてみようかと、夫婦2人で動き始めました。 

当時は精神科に関する施設や病院は、街なかから少し離れたところに作ることが多かったのですが、私たちは街のなかでやりたいなと思って。1999年7月に、しんまち商店街の空いている喫茶店を借りて精神科に通院している人が自由に立ち寄れるオープンスペースを開設しました。

商店街での困りごとを引き受け、
社会とのつながりを持つきっかけに

居場所づくりの立ち上げのノウハウは、これまでの経験からある程度は理解していました。ですが、なかなか思惑通りにはいきませんでした。その当時、家族以外の市民が関心を持って、市民として精神障がい者に関わっていくという視点がなかったんです。

ちょうどその頃、更生保護施設を新町地区に設置することに地域住民が賛成・反対で揺れていて、「反対」の旗や貼り紙がありました。この辺を前科者にウロウロされると困るとか、理解できない人を排除しようという考えがあったものですから、「精神障がい者支援」と大きく看板を出さずに、ひっそりと始めました。
  • yoshida07
    1999年12月、始まりの年の望年会(ぼうねんかい)
当事者の人たちのなかには、入院生活が長い人も多いんです。家にも居場所がなく、仕事に復帰することもできない。そういう人たちが集まって、この場では気楽にお喋りして、ときどきは飲み会をしたりして。そうして社会とつながることもできる居場所でありたいと思いました。居場所は私たちの生活のためでもあり、障がい者の皆さんのためでもあります。小さいながらも場づくりの活動の輪を広げていくことで、徐々に通院中の障がい者の方が集まり、談話するようになりました。 

あるとき、大学の先生からのご紹介で、しんまち商店街の障がい者に対する接遇マニュアルのパンフット制作をわたしたちサンネットに任せていただきました。商店街に障がい者の人が来たらどう対応するか、車いすの場合はどうするかなど、商店街のお店に顔を出してお話を伺ったりしました。商店街の方々は、一度知り合ってしまえばサンネット青森の活動をスムーズに受け入れてくれました。
  • yoshida07
    しんまち商店街にある花は、サンネットの水やり作業できれいに咲いている
それ以来、しんまち商店街との関係は20年以上続いています。現在はお買い物宅配事業、しんまち商店街の花の水やり管理、チラシのポスティング作業やポスター貼りなどをサンネット青森としてお手伝いしています。宅配サービスはお年寄りなどの利用者に喜ばれていて、サンネットのスタッフは社会の役に立っている実感を得られますし、自信につながります。商店街の活性化にもちょっとですが一役買っています。

法律は変わっても、「居場所づくり」の意義は変わらない
小さなことから理解の輪を広げたい

  • yoshida07
    2014年頃に開催した学生との交流会
2007年に障がい者福祉の法律が大きく変わり、今まで社会福祉法人でなければできなかった事業がNPO法人でもやりやすくなりました。これを機に、サンネット青森ではグループホームと障がい者就労継続支援B型事業所の2本柱で事業を行っていくことになりました。 

法律が変わったことで、障がい者の社会参加と自立は「就労」に重きが置かれ、自分たちが抱えている病気や障がいについて語る機会や、お互いのさまざまな経験や思いを共有する緩やかな居場所が減ってしまいました。

ですが、障がい者が自分たちの言葉で語れるようになることで、周囲の人たちの理解も進み、自分たちの力で暮らしていけるようになるとわたしは考えています。 

誰もがいろんな経験をしながら人生を歩んでいる。それは健常者も障がい者も一緒で、いろんなことを乗り越えて生きていることは同じです。鬱や自傷行為、拒食症、アルコール依存などの精神障がいは、いつ誰がなってもおかしくない身近な存在です。支援する、支援される、誰もがどちらの要素も持って生きています。

障がい者自身が生活する力を付け、それを受け入れて支援する人が増えていってほしいというのが今のわたしの願いで、私たちが目指しているのはそういった活動です。
  • yoshida08
    「プラスえん」は、八甲通り沿いの古本屋の2階にある
2017年にオープンした地域コミュニティスペース「プラスえん」は、会員さんが仕事したり、お喋りしたりできる交流スペースですが、今後はこの場所を地域に開かれた場所としてさまざまなことに活用したいと考えています。現在は青森ペンクラブの方に集会の場として活用していただいたり、古本の交換市をする話もあります。地域の方にこの場所を知っていただき、たくさんの方が交流するスペースとして活用していただくことで、地域とのつながり、人とのつながりを大切に作っていける場所でありたいと思っています。
  • yoshida08
    2018年、「プラスえん」で交流会を開催

自分らしく地域活動をするポイント

目の前で出会った人がたくさんの課題を抱えていると、「わたしはなにもできないわ」と一歩退いてしまいますよね。でもそうではなくて、自分が持っている力のほんの少しでもいいから、少しだけ手を差し伸べてあげてほしい。どんな重い障がいを持っている人でも、生きている限り、その人が持っているパワーがあります。それを活かせるように、お互いにつながり合い、力を共有し合えば生き延びていけると思うんです。個人個人が持っている力を少しだけでもシェアすることが大切です。

定年後の人生を考えたとき、出来ることはたくさんあると思います。自分のなかの何かを増やしたいとか、獲得したいということだけではなく、自分が持っている知識や、財産、時間、労力を、今生きることに苦しんでいる人に分かち合うことにも目を向けてほしいと思います。

この記事についてのお問い合わせ

若者定着還流促進課人づくりグループ
電話:017-734-9133  FAX:017-734-8027

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