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更新日付:2017年4月6日 青少年・男女共同参画課

青森県女性ロールモデル 佐藤イネ子さん

男性の後ろから横へ、そして一歩前へ進もう!

佐藤イネ子さん
合同会社イネ子の畑から 代表社員
佐藤 イネ子さん(中泊町)

【プロフィール】
 青森県中泊町(旧中里町)出身。
 中泊町でのトマト栽培の先駆者であり、水稲と野菜の複合経営に早くから取り組み、冬の農業としてのアスパラガス促成栽培を進めるなど、地域農業の活性化に貢献。
 また、地元農産物のおいしさや農業の魅力を子どもたちに伝える「給食おもいやり隊」や、県内外から訪れる観光客に津軽鉄道をPRするため、地元特産品を車内や駅舎で販売する「津鉄(つてつ)応援直売会」を立ち上げるなど、多種多様な取組を通じて、地域農業と中泊町の魅力を伝え続けている。
 その優れた取組が評価され、平成26年度青森県いきいき男女共同参画社会づくり表彰「女性のチャレンジ部門」、平成27年度内閣府「女性のチャレンジ賞」受賞。(※内閣府「女性のチャレンジ賞」受賞は本県初)

佐藤イネ子さんの主な分野 「起業」「まちづくり」「農林水産」

チャレンジのきっかけは?

「どうしたら女性は輝けるのか」について考える

 私が20代中頃、夫は実家の鉄工所に勤めるかたわら米作りをし、私もその手伝いをしていましたが、おいしい空気や豊かな自然に触れられる農業に強い魅力を感じ、私達2人は本格的に農業を始めることになりました。

 それから数年後、先輩の勧めで「生活改善グループ」へ加入し、いろいろな講演に参加して、農業について勉強しました。「女性は男性の後ろに下がっているべき」と、現在よりも強く考えられていた当時、「輝く農村女性」をテーマとする講演を多数受講し、ものすごく印象に残り、「どうしたら農村女性も輝けるのか」、「男女はともに協力して支えあっていくべきなのではないか」と考えるきっかけになり、今までの様々な活動の基礎になりました。

これまでのみちのり

水稲の単作経営から、トマトをはじめとする野菜栽培の複合経営へ挑戦

 当初は夫と2人、米の単作経営から始め、今ではアスパラガスやメロン等色々な作物を栽培しています。収入拡大のため、いろんな野菜作りにチャレンジしました。その中で自信を持って育てられたのが「トマト」です。お米を作りながら、夏場はハウスでのトマト栽培を始めました。

 トマト栽培が軌道に乗ると、他の農家の経営の手助けをしたいと思い、トマト栽培を周囲に勧め、徐々にトマト栽培に取り組む農家が増えてきました。とはいえ、私自身もトマト栽培を始めて忙しくなったのを実感しましたし、周りの農家からも「大変」という声が聞こえてきました。このままではみんな辞めてしまうと思い、私と夫は農協など多方面に働きかけ、収穫したトマトの「共同選果場」を作りました。パートさんを雇って一箇所で選果することが可能になったことで、個々の農家の作業効率を上げることができました。

 こうして、地域としてのトマト栽培が安定し、中泊町はトマトの産地として知られるようになりました。現在も様々な作業手順が多い農業は、少しでも労力を減らす工夫がすごく必要です。トマト栽培以外のことでも、もっと楽にできる方法やアイデアを思いついたらみんなに伝える等、地域の農家と協力して農業経営をしています。

農作業する佐藤イネ子さん

男女共同参画は、ずっと意識してきたこと

 こうして私達はトマト栽培を始めたわけですが、当時は子育てをしながらの複合経営で、みなさんの想像を超えるような忙しさでした。トマトに水をやって、田植えをして、草取りをして……本当に忙しかったです。まだまだ農村では、女性は男性の後ろで、細かくて大変な仕事をするという考えが強いですが、それではいけないと思いながら、私は農業に取り組んできました。「男も女も平等のはず」、「何でもやってみたい、やらなければ」という思いで、トラクターに乗るため、大型免許も取得しました。女性がトラクターに乗るというのはとても珍しく、噂にもなるほどです。私がトラクターで作業している間は、夫は別の作業をしたりして、自然体で各々役割を柔軟にシェアして仕事に取り組んできました。

 一般的に農村女性は、遠慮しすぎだと私は思います。私は男性と同じくらいに、何でもできるようになったので、子育てをしながら夫婦協力して仕事を続け、今のように経営を大きくすることができたと思っています。現在は息子にも子どもが生まれ、「おむつ交換でもご飯の準備でも男性も全部できるようにならないとだめ」と息子に言っています。仕事も家庭も、男女の協力は本当に大切だとつくづく思います。

今までの取組を語る佐藤イネ子さん

農業経営士として活動するも、大きな壁に遭遇

 平成5年、私達の農業経営が認められて、夫婦で「青森県農業経営士」の認定を受けました。こうして私は県内初の「女性農業経営士」として、県の会議などに出席する等、活動が拡大したのですが、ここで思ってもいない大きな課題に直面することとなりました。

 会議へ行き、自己紹介をする時に「中里から来ました」と話しても、誰も中里がどんな地域なのかを知らないんです。私自身も、中里をどうやって説明するべきか思い浮かびませんでした。「太宰治で有名な金木町の隣」、こう言えば通じますが、自分が生まれた町なのに、これってすごく寂しいことだと私は感じましたね。これが心にどうしても引っかかり、自分たちでできることを少しでもして、この町をもっと盛り上げて、みんなに知って欲しいという思いが生まれ、幅を広げて地域活動にも取り組むようになりました。

現在の活動状況や今後の目標など

地域の宝物を守るため、「津鉄応援直売会」を結成

 「では地域のために私は何ができるか」ということを考え始めた頃のことです。終着駅が中里となっている「津軽鉄道」は当時経営不振という話がありました。そこで平成18年に、約20名の仲間が「津軽鉄道がなくなってしまってはもったいない、できる支援をしたい」という思いで集まり、「津鉄応援直売会」を立ち上げました。

 「津鉄応援直売会」ではメンバーが当番制で津軽鉄道のストーブ列車に乗車し、収穫したアスパラガスを焼いて乗客に食べてもらったりし、駅舎で様々な農産物を売ったり、現在でもその活動を続けています。首都圏から来た大学生が「もう1本!」って言いながらみんな喜んでアスパラガスを食べてくれます。今となっては地域の宝物である津軽鉄道で、このように活動していることを誇りに思います。

「給食」で地域の子供達とつながる貴重な取組も

 農産物の生産・販売だけではなく、地域の子どもたちと交流を図るため「給食おもいやり隊」を作って、隊長として活動しています。私達の冬場のハウス内の暖房は学校の給食センターからいただいている「廃油」を利用していますが、それと交換に、アスパラガスや小松菜といった野菜を給食センターに提供し、町の子ども達に食べてもらっています。給食の時間には、「佐藤イネ子さんが作った中泊産の野菜が使われています」と校内放送までしてくれています。他ではなかなかない取組だと思います。

 また、子ども達を年1回「アスパラガス収穫体験」に招待して、給食センターからいただいた廃油の利用について説明したり、実際に目で見て土に触れて町の農業について知ってもらうといった取組をしています。こうやって食べる人の顔が直接見られるというのはすごくありがたいことで、農業をやっている私達の幸せにもなっています。

 このように、「中泊町を何とかしたい」という気持ちから始まった地域活動を通じて、素晴らしい仲間達や子ども達をはじめ、数多くの出逢いがありました。今ではたくさんのメディアが取材にも来てくれるようになって、以前よりも中泊町を大きくPRできるようになったので、これからも続けていきます!

子どもたちに説明する佐藤イネ子さん

目標はトマト畑をもっと大きくしていくこと

 今後の目標は、私達の作り上げたトマトの「共同選果場」を若い農家の皆さんにも積極的に活用してもらって、地域全体でトマト栽培をもっと進めていくことです。中泊町でお米以外にもトマトを栽培できることが周りの農家の皆さんに理解され、何とか共同選果場ができて、地域ぐるみでトマトを作ることができるようになりました。ですから、若い農家の皆さんにも「トマトを育ててきてよかった」と言ってもらえるように、これからも地域のトマト作りに積極的に関わって、中泊町のトマトの産地化に貢献していきたいと思っています。

これからチャレンジする女性へのメッセージ

男性の後ろから横へ、そして一歩前へ進みましょう

 同じ人間なのに、どうして女性だけがつらい思いをしなければいけないのか、ということにずっと疑問を抱いてきましたし、農村女性は特に母親の姿を通して、同じように考えている人が多いのではないでしょうか。女性だけが悲しい思いをすることに対して、私は間違っていると思ってきたので、自分から後ろに下がることはしないで、「男性には負けない」という強い気持ちを持って農業に取り組んできました。一般的に、農業ではまだまだ「男性が優位」といった意識が強いですが、だからこそ農村女性は特に、「男性の後ろから横へ、そして一歩前へ」、このことを意識してください。

「男性の後ろから横へ、そして一歩前へ進みましょう」と語る佐藤イネ子さん

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この記事についてのお問い合わせ

青少年・男女共同参画課 男女共同参画グループ
電話:017-734-9228  FAX:017-734-8050

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