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更新日付:2014年4月8日 青少年・男女共同参画課

青森県女性ロールモデル 村上美栄子さん

「やってやれないことはない!やらずにできるわけはない!」
何か迷っていることがあっても、とにかく一歩踏み出してみてください。

村上美栄子さん
農業生産法人 有限会社ANEKKO(あねっこ) 代表取締役
村上 美栄子さん(弘前市)

【プロフィール】
 平成17年、農家を支援したいという女性たちを中心として、農業生産法人有限会社ANEKKOを設立し、代表取締役に就任。平成19年、農産物直売所「野市里(のいちご)」、レストラン「こざくら」、市民農園「向日葵」を併設した総合交流拠点施設をオープンさせた。地域住民の方に農業体験や収穫体験を企画する一方で、嶽きみスイーツなどの商品開発にも取り組んでいる。現在では、全国各地に嶽きみオーナーがいる。

村上美栄子さんの主な分野 「起業」

チャレンジのきっかけは?

農家の悩みや意見を身近で聞いて

 会社を立ち上げる前は、夫の実家の小売店を手伝いながら専業主婦業をしていました。店では肥料や農薬、食品などを販売していたので、農家さんと接することが多かったのです。毎日、農家の皆さんがお店に集まって生産や販売についての悩みを言っているのをよく聞いていました。

 農家さんは一生懸命作って美味しい野菜を出荷しているのに、それに見合うような収入を得ることができていないという事情があります。良品の野菜であっても多く収穫された日に出荷すると安値で取り引きされてしまって、本当にもったいないのです。農家さんの話を聞いているうちに、「自分で値段を決めて自分で収入を得る」という流れを作って直接、農家さんに入るお金が増えればいいな、と思うようになりました。こういう「農家さんの助けになりたい」という気持ちが直売所設置の背景になっています。

農業生産法人 有限会社ANEKKO(あねっこ)

 ちょうど岩木山がきれいに見える場所に土地を持っていましたし、平成12年にバイパスも開通して交通量が増えるだろうということで、野菜を作ったり、プレハブを利用して趣味の手芸品を販売したりする施設を始めました。ミニ産直施設を訪れたお客さんたちから、「ここはロケーションが素晴らしいね。ここでお茶を飲んだり、ランチをしたりする場所があればいいよね」という声をよくいただきました。そこで、女性農家の仲間や私の想いに賛同してくれる人に声を掛け、農業生産法人有限会社ANEKKOという会社を設立することになりました。

 このANEKKOという会社は、出資者13名のうち12名が女性です。「農家の支援をしたい、観光客向けのサービスをしたい」という想いを同じくした女性たちが集まって設立したので、津軽弁で「お嬢さん、お姉さん」という意味の「あねっこ」を会社名にしました。

ANEKKOから見える岩木山

これまでのみちのり

知名度

 会社を立ち上げてから最初にしたことは、「ANEKKO」という名前を知ってもらうことでした。立ち上げたばかりで知名度もなく、来店客の多くは近くの温泉や岩木山を訪れたついでに直売所に立ち寄ったという方ばかりでした。近隣の人たちでさえ「え、そんな建物いつできたの?」という感じでした。とにかくANEKKOという名前を知ってもらわなければいけませんでした。様々なイベントやメディアを使ってANEKKOを発信していった結果、今ではANEKKOという名前を出すと、「聞いたことがある名前だ」と言ってもらえるようになりました。

 商品については、県外の方からも取材を受けるようになりました。特に、「嶽きみという美味しいとうもろこしがある」とTVで放映されたことで、去年は関東からの注文がものすごく多く、初めて嶽きみが品切れになってしまったのです。どんどん生産できる商品であればよいのですが、嶽きみは嶽地区という場所でしか収穫されないため、収穫量も限られています。ブランド化されて広く認知されるのを嬉しく思う一方で、そこがブランドの悩みかも知れませんね。

試行錯誤の「嶽きみオーナー制度」

 平成17年に会社を設立したのですが、ちょうどその頃旧岩木町、相馬村と弘前市の合併がありました。合併により、それまで旧岩木町で10年以上行ってきた「嶽きみオーナー制度」を引き継ぐところがなくなってしまうということでした。農業生産法人ということもあり「私たちがやりたい」と手を挙げ、平成18年から嶽きみオーナー制度をANEKKOが引き継ぐことになりました。それが会社の最初の事業になりました。

 「価格もやり方も変えずにそのままやってください」という引き継ぎでしたが、3年目になって資材や人件費などの面で「これでは無理だ」と判断し、やむを得ず嶽きみオーナー制度の価格を少しだけ引き上げることになりました。お客さんの減少は予想よりも少なかったのですが、それ以降も大量の虫食いや天候不良などが原因で収穫が思うようにいかない年もありました。

 農家の方たちも一生懸命努力してくれるのですが、不作の年は、やはりお客さんから「これだったら買った方が安くつく」という声もいただきました。心苦しい部分ももちろんありましたが、オーナー制度は収穫を体験していただくことが醍醐味です。自然の天候や害虫は農家にとってはどうしようもないことで、分かってもらうしかないのです。それでも、遠方からの家族が収穫時期に集まって作業をしながら楽しいひと時を過ごし、「楽しかった!美味しかった!また来年も頼みます!」と帰り際に言ってくれるのを聞くと、「やってよかった。また頑張ろう!」と思います。

 また、「収穫体験したいけど遠くて行けない」という方もたくさんいたので、「お任せ!嶽きみオーナー制度」という制度を新しく始めることにしました。「自分では収穫に来れないけど、自分の畑のとうもろこしを食べたい」という方のために、収穫をスタッフが行い、オーナー様のもとへ旬のとうもろこしを発送する制度です。試行錯誤を重ねた結果、おまかせオーナー制度を利用する方も年々増加しています。

地域の人たちが喜んで来てくれるような場所にしよう

 平成19年には、近隣の直売所と差別化を図るために、農産物直売所「野市里(のいちご)」、レストラン「こざくら」、市民農園「向日葵」を併設した総合交流拠点施設をオープンさせました。施設の中に様々な講座や教室を開催できる交流スペースも設けているので、週末だけでなく平日も地元の方々が集まってにぎやかにパッチワークをしたり工芸品を作ったりしています。市民農園では5月頃から農業体験ができます。一般市民だけでなく、地元の保育所に無償でお貸しして食育の体験をしてもらったりしています。また、グリーン・ツーリズムなどを通して小中学生の農業体験も受け入れているので、春から夏、収穫期の秋にかけては本当ににぎわいます。

 しかし、冬場はどうしても野菜の収穫が少なく、寒くなったり雪が降ったりするので農作業体験も難しくなってしまいます。夏場だけでなく、一年を通してこの地域にもっと人を呼んでにぎやかにしたいという気持ちがあります。そこで最近、あまり家庭で作らなくなってしまった干し餅という伝統的な冬のおやつを存続するために、我が家「干し餅自慢」大会をオープン当初から開催しています。また郷土の絵馬や歴史的文化財を守るため、ANEKKOが事務局となって『絵馬研究会』を立ち上げ、「絵馬ツアー」「我(わ)の絵馬コンテスト」といったイベントも企画しています。こういったイベントは、ただ人を呼ぶためのものではなくて、文化財や伝統を守るお手伝いができたらという気持ちで取り組んでいます。

 お店は観光客のみならず地元の方々が多く足を運んで来てくれてこそ繁盛するものだと思います。まずは地域の人たちが楽しく集まれる癒しの場所にしよう、という想いで現在も活動しています。

  • 野市里(のいちご)の店内 工芸品など
  • 野市里(のいちご)の店内 野菜や果物

現在の活動状況や今後の目標など

地元企業とつながる

 社外の人たちからは「加工場を持ったら」ということなどをよく提案されるのですが、自分たちの能力以上に業務の幅を広げても収拾がつかなくなってしまいますし、加工などの過程は得意な人に任せたほうがいいと考えています。

 また、嶽きみロールケーキもそうですが、ANEKKOの商品はできるだけ地元企業に製造を委託するように心がけています。ANEKKOのオリジナル商品を製造委託している企業は、売り上げがかなり伸びたそうです。地元の企業に委託すると、商品の相談もすぐにやり取りできますし、地元企業の活性化にもつながります。「社長さん、こういう商品作れませんか」「いやぁ、難しいな」「そこをなんとか」「じゃあ作ってみるか」というふうに、すぐに動けるのも利点ですね。地産地消みたいな感じで、ANEKKOはできるだけ地元にある企業とつながるようにしているのです。

会社や家庭にイライラを持ち込まない

 5周年を迎えた頃から、個々のスタッフが動けるようになってきたので、私自身負担に思うことも少なくなってきました。しかし、会社を立ち上げた当初は大変でした。それまでは夫のお店を少しだけ手伝いながら家事・育児をしていたので、まったく朝から会社で働くということをしたことがありませんでした。

 子育てをしながら、仕事もして家事もこなす。正直、バランスのとり方が本当に難しかったです。少しでもバランスを間違えば、家の中も大変になりますし、子どものこともいい加減になってしまいます。会社でも家庭でもイライラしてしまっては、自分だけでなく周囲の人たちにも嫌な思いをさせてしまいます。

 難しいことですが、できるだけそのイライラを会社や家庭に持ち込まないよう心がけています。

「何がいいのか、何ができるのか」を考えながら

 子どもの頃は、大きくなったらお店のお嫁さんになりたいと思っていました。お店で商品を売ったり、人とかかわり合ったりすることが好きだったので、もしかしたらそれが今につながっているのかもしれないですね。今はANEKKOという会社を立ち上げて農産物や商品を販売しているので、お店をやるという夢を叶えられているのかもしれませんが、その一方で、「もっと何かできないかな」とも感じています。

 確かに今までに生み出してきた商品はそれなりにありますが、同じものを同じように売り出していたら、いつかは必ずお客さんに飽きられてしまいます。地域密着型にするためにはどうしたらよいのか、自分たちに何ができるのかを常に考えています。

これからチャレンジする女性へのメッセージ

自分の悩みを打ち明けられる場所

 ANEKKOは女性で立ち上げた会社ですが、「何でも女性だけでやる」というのはやはり限界があります。会社の問題を解決するには時には男性の力も必要です。私の場合、代表取締役という立場上、悩みなどをあまり周囲に言えないので、よく夫に相談しています。夫も会社を立ち上げるときのメンバーの一員ですし、また、別の会社の代表者という立場から、苦労や悩みなどについて共感できるのだと思います。

 悩みや問題を自分だけで抱えるのは、とても辛くて大変なことです。受け入れてくれる場所がなければ、最終的には自分自身が追い込まれてしまいます。悩みを漏らしたとき、「大変だよね、でももうちょっと頑張ってみよう」と言われたら、どんなに大変でも「もう少し頑張ろうかな」と思えてきます。ですから、自分の悩みを打ち明けられる場所・人を見つけてみてください。

野市里(のいちご)の店内 談笑する人々

仲間を増やし、とにかくやってみよう

 会社は一人でも立ち上げられますが、事業に関しては、多くのスタッフをはじめ、地域の方々との交流や情報発信を共有しながら作り上げていくものだと思います。私も、「とにかくみんなと仲良く交流する」ということを心がけているので、まずは素敵な仲間を増やすことから始めてみてください。

 また、私は「やってやれないことはない!やらずにできるわけはない!」という言葉が好きです。失敗してもいいや、という軽い気持ちも時には必要だと思うので、何か迷っていることがあっても、とにかく一歩踏み出してみてください。

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この記事についてのお問い合わせ

青少年・男女共同参画課 男女共同参画グループ
電話:017-734-9228  FAX:017-734-8050

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