2・3・1 京都議定書と我が国の対応

(1)IPCCの設置
 1980年代から科学者によって地球温暖化問題についての知見が整理されてきたことにより、世界の人々にその危険性が認識されはじめました。各国政府においても今後の対応について共同の取組を進める機運が高まり、1988年には、国連環境計画(UNEP)と世界気象機関(WMO)の共催による、地球温暖化をテーマにした科学的研究を進めるための「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」が設置されました。IPCCでは、地球温暖化の科学的知見や環境への影響等を検討した報告書を公表しています。

(2)気候変動枠組条約の締結
 IPCCによる科学的調査と併せて開催された1989年の「大気汚染と気候変動に関する環境大臣会議」では、温室効果ガスの排出量を安定化させる必要性が初めて認識されました。
 その後1992年に、気候に影響を及ぼさない水準での温室効果ガス濃度の安定化を目標とした「気候変動に関する国際連合枠組条約(気候変動枠組条約)」が採択され、同年の地球サミット(リオデジャネイロ−ブラジル)において日本を含めた155カ国が署名を行いました。この条約では、先進工業国に対して二酸化炭素排出量を1990年の水準に戻すことを目指した政策措置をとり、その効果の予測等を締約国会議に通報し、審査を受けることが求められています。
 我が国では1993年に同条約を批准し、1994年に条約が発効しました。

(3)締約国会議の開催
 気候変動枠組条約の採択を受けて、1995年に第1回締約国会議(COP1)がドイツのベルリンで開催されました。翌1996年に行われた第2回締約国会議(COP2)では、「温室効果ガスの排出及び吸収に関し2005年,2010年,2020年という特定された期限の中で、排出抑制及び相当の削減のための数量化された法的拘束力のある目的」を定めることが盛り込まれました。

(4)京都議定書の採択
 1997年12月には京都で第3回締約国会議(COP3)が開催され京都議定書が採択されました。この中で、先進工業国については6種類の温室効果ガスを対象に2008年から2012年までの期間において、1990年の排出量に対して少なくとも5%の排出量削減が目標とされており、日本に対しても6%の削減が割り当てられました。
 また、森林を二酸化炭素の吸収源としてカウントできることや、共同実施や排出権取引などの国際的な柔軟性措置が認められ、以後の締約国会議で協議していくことが決められました。

表2・3・1 京都議定書の概要
対象ガス 二酸化炭素、メタン、一酸化二窒素、HFC、PFC、SF6
基準年 1990年(HFC、PFC、SF6については、1995年でも可)
最初の目標期間 2008年から2012年(5年間の合計排出量を1990年の5倍量と比較)
削減目標 1.先進工業国全体の対象ガスの総排出量を、最初の目標期間中に基準年に比べて、少なくとも5%削減
2.国別の削減量は、日本△6%、米国△7%、EU△8%等
吸収源の扱い 1990年以降の新規の植林、再植林及び森林減少により増減した温室効果ガス吸収量は排出量から差し引く。
柔軟性措置

(京都メカニズム)

国際的な協力・協調によって削減目標の達成に利用できる手段として以下のような仕組みを設ける。
1.排出権取引
 関係国において各国の数値目標の一部を「排出権」として取り引きができる仕組み。
 自国のみで目標達成が困難な場合、目標に余裕のある国から排出権を購入できる。
2.共同実施
 関係国において相互のプロジェクトで得られた排出削減量を配分できる仕組み。
3.クリーン開発メカニズム
 関係国とそれ以外の国(開発途上国)との間のプロジェクトによる削減量を一定の認証手続きを経て配分  する仕組み。

5)京都議定書発効にむけて
 1998年11月には第4回締約国会議(COP4)が開催され、「ブエノスアイレス行動計画」が採択されました。これは京都議定書の発効準備等(*1)具体的作業計画を定め、2000年に開催の第6回締約国会議(COP6)までにこれらの作業を完了することが目標とされました。
 1999年10月に行われた第5回締約国会議(COP5)では、「京都議定書の早期発効をめざす」とした「ブエノスアイレス行動計画の実施」が採択されました。
 第6回締約国会議(COP6)は、2000年11月にオランダのハーグで開催されましたが、森林吸収量の取扱い等で合意に至らず、中断されました。

(6)我が国の地球温暖化対策推進
 京都会議で我が国に割り当てられた6%の削減目標を達成するため、政府の地球温暖化対策推進本部は1998年6月に「地球温暖化対策推進大綱」を策定し、緊急に取り組むべき対策として、あらゆる革新的技術の駆使等による省エネや新エネの導入推進、国民のライフスタイルの見直し・支援、政府による率先実行などを掲げました。
 また、同年10月には、国内における今後の温暖化対策の法的枠組みとなる「地球温暖化対策の推進に関する法律(地球温暖化対策推進法)」が制定されました。この法律は、「温室効果ガスの排出の抑制等には、全ての主体が参加した幅広い取組が不可欠である」との考えのもと、国、地方公共団体、事業者及び国民それぞれの責務を明らかにするとともに、各主体の取組を促進する法的枠組を与えるものです。具体的には、国、地方公共団体に温室効果ガスの排出抑制のための実行計画の策定を義務づけているほか、事業者には自主的な取組と公表を求めています。また、国民についても、日常生活での排出抑制の努力と、国や地方公共団体の施策の実施に協力することが明記されています。

地球温暖化対策推進法のポイント
1. 専ら地球温暖化防止を目的とする我が国初の法制度で、国、地方公共団体、事業者、国民の全ての主体における責務を明記している。
2. 京都会議で定められた6種類の温室効果ガスのすべてを対象とした取組みを促進する。
3. 国、地方公共団体はもちろん、相当量を排出する事業者についても計画策定やその実施状況の公表を促し、計画的な取組みを広く普及する。
4. 地方においては、地域の実状に応じたきめ細やかな対策を推進することとし、地方公共団体に対しても地球的問題に関して責任の範囲内で可能な役割を求める。
5. 国民が行う地球温暖化防止のための行動を促進し、かつ効果をあげる仕組みを設ける。
 (地球温暖化防止活動推進センターの設置や地球温暖化防止活動推進員の選任等)

国内外における取組みの経緯を整理すると表2・3・2以下のようになります。

  世界の動き 日本の動き
1985 ・フィラハ/ベラジオの会議
科学者が知見を整理し、温暖化の危険と対策の必要性を訴えた。
 
1988 ・トロント会議
 2005年までに1988年比でCO2を20%削減することを宣言
・気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の設置
 
1989 ・ ハーグ環境首脳会議
 ノルトヴェイク宣言(国際条約の必要性を指摘)
・環境庁長官の地球環境問題担当大臣としての任命開始
1990 ・ IPCCが第1次レポートを公表
 温暖化対策の必要性を明記
・政府が地球温暖化防止行動計画を決定
 2000年に、CO2などの排出量を1990年レベルに
 戻すとの目標を設定。
1992 ・気候変動枠組条約の採択
・地球サミットにて同条約の署名開始
 
1993   ・気候変動枠組み条約への加入
・環境基本法の制定
 地球環境保全に法制的基礎を与える。
1994 ・気候変動枠組条約の発効 ・環境基本法に基づき、環境基本計画を閣議決定
 地球温暖化対策についての長期、中期及び当面の方針を
 定める。
1995 ・気候変動枠組条約第1回締約国会議(COP1)の 開催
・ IPCCが第2次レポートを公表
 既に地球の温暖化が始まっていることを警告し、対策の
 強化を訴えた。
 
1996 ・気候変動枠組条約第2回締約国会議(COP2)の開催  
1997 ・気候変動枠組条約第3回締約国会議(COP3)の開催
 京都議定書を採択
 2008〜2012年までの排出量について、法的拘束量のある目標を設定
 
1998 ・気候変動枠組条約第4回締約国会議(COP4)の開催
 ブエノスアイレス行動計画の採択
・地球温暖化対策推進大綱決定
・「地球温暖化対策の推進に関する法律」が国会で成立
1999 ・気候変動枠組条約第5回締約国会議(COP5)の開催  
2000 ・気候変動枠組条約第6回締約国会議(COP6)の開催
 (継続協議中)
・「循環型社会形成推進基本法」及び循環関連法が成立
・新環境基本計画閣議決定

 
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