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更新日付:2012年9月27日 世界文化遺産登録推進室

連載企画『縄文遊々学』

第63回 一粒の種
 私が埋蔵文化財調査センター(略して埋文センター)に勤務し、県内各地で遺跡の調査にあたっていたころの話です。弘前市内で発掘調査をしていたある日、職場の上司から現場事務所に電話がかかってきました。それは埋蔵文化財調査センターが県内各地の遺跡で採取した土壌サンプルを水洗してほしいとのことでした。
 発掘調査では必要に応じて、竪穴住居の炉跡やかまど跡から土壌サンプルを採取します。状況によって採る量もまちまちですが、このサンプルには微細な炭化物などのいろいろな情報が含まれている可能性があります。特にその当時は炭化した植物種子の分析が北海道大学の吉崎昌一、椿坂恭代の両先生によって進められていましたので、本県でも遺跡の年代に関わらず、 縄文時代でも奈良・平安時代でも結構採られていました。
 炭化していることは限りなく、その時代のものであることを示しています。長い間地面に埋まっていても自然に炭化することはほとんど考えられませんので、理由はともかく炭化したからこそ残っているわけです。もし、炭化していない場合には、その種子は後世紛れ込んだ可能性を常に持っているわけです。そうするといちいち年代測定し、年代を特定していかなければならず、経費や時間の点で現実的な話しではありません。一方で、炭化することによって種子そのものは変形することも多く、その同定は難しくなります。
 そのサンプルの処理が埋文センターでは追いつかなくなったとのことでした。処理には作業時間がかかるとともに大量の水を使用します。また、大量の残土も発生しますので、この処理にも困っているとのことでした。たまたま私が調査している遺跡が川のそばにあったことから、大量の水を得やすいことや残土の処分にも好都合で、また、私自身もこの炭化物の分析には興味関心を持っていましたので、適任と思ったらしいのです。やがてトラック1台分のサンプルが届きました。
 実際に水洗を行ってみると想像していた以上に大変でした。まず、サンプルを天日で乾燥させ、大きな土の塊は手でほぐし、それを水に入れて撹拌します。そうするとやがて炭化した種子は水に浮いてきます。それらをすくうように丁寧に回収し、乾燥させた後梱包し、埋文センターの室内作業に回します。室内ではそれを種子や木材などに選別し、種子やその可能性のあるものは専門家のところへ送られ、さらに詳しい分析が行われます。
 その後、処理したサンプルの中に炭化したヒエが含まれていたことを知りました。野生のイヌビエに近いものもありましたが大半は縄文ビエと呼ばれる現在の栽培種に近いものであり、量は多くはないものの縄文時代における農耕の有無やヒエの栽培化の過程を知る上で重要な資料が含まれていました。やはり、新しい成果を得るためには新しい方法を導入することが効果的であり、そして成果が見えるまで徹底して取り組むことが大事であることを実感しました。
  • 炭化したヒエが出土した竪穴住居(六ヶ所村富ノ沢(2)遺跡)
    炭化したヒエが出土した竪穴住居(六ヶ所村富ノ沢(2)遺跡)

  • 検出された縄文ビエ(六ヶ所村富ノ沢(2)遺跡)
    検出された縄文ビエ(六ヶ所村富ノ沢(2)遺跡)

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電話:017-734-9183  FAX:017-734-8128

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